試乗レポート「日産 ノート(3代目・2020年〜) & ノートオーラ(初代・2021年〜)」氷上試乗でわかった、e-POWERの底力(嶋田智之)

クルマを選ぶ 試乗記

日産が毎年長野県にある女神湖で開催している氷上試乗会。ツルツルの氷の上という超低μの場所でクルマを走らせることで、街中などを走るだけでは気付かないクルマの性能を感じてもらおうというこのイベントに、嶋田智之氏が参加。先日日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したノートシリーズの性能をレポートします。

【イントロダクション】極めて緻密かつ正確にモーターを制御できるEV

知ってる人は身をもってよーく知ってるけれど、知らない人は想像すらできない、というモノやコトが世の中にはいくつも存在します。クルマの世界でいうなら、EVのように駆動のための動力源にモーターを使っているクルマは滑りやすい路面に対してめちゃめちゃ強い、という事実もそのうちのひとつでしょう。

ご存じのとおり、モーターは電気が供給されることで作動するわけですが、EVの場合はバッテリーから電気を送ることでモーターを作動させ、駆動力を生み出す仕組みです。そしてバッテリーからモーターへと送る電気の供給を調節することで駆動力の強弱を変化させます。

例えば自宅でスイッチを入れると、瞬時に照明が灯ります。明るさを無段階で調整できる調光機能が備わっているものでは、ダイヤルを回すとそれにピタリとシンクロして薄暗くなったり明るさを増したりできます。その反応は、瞬間的であり正確なのです。

EVの場合はそのコントロールを電子制御で行います。現在の制御技術は僕たち一般人の想像を遥かに超えるほど優れています。極めて緻密かつ正確にモーターを動かすのです。つまりタイヤの駆動力を、緻密かつ正確に調整できる、というわけなのです。……ざっくりすぎる説明ではありますが。

【e-POWERとは?】モーターの力のみで走行する日産のハイブリッドシステム

今回、改めてその威力を体験することができました。日産自動車が凍った湖の上を走行する氷上試乗会を開催し、僕も参加させていただいたのです。

和製スーパースポーツカーというべきGT-Rやスポーツセダンのスカイライン400Rのようなクルマも用意されていましたが、僕が最も強く関心を持っていたのは昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したノート/ノートオーラのシリーズ。歩き方をミスったり不用意にクルマから降りたりすると自分がコケてしまうほどツルツルの地面の上で、オンロードでは間違いなく優れた制御を見せてくれていた持ち前のe-POWERのシステムがどう働くのか、興味津々だったのです。

e-POWERは2016年、2代目ノートに実装されて市場に出た、日産のハイブリッドシステムです。

エンジンが生み出した力を直接的に駆動に活かすことはせずひたすら発電に徹し、作り出した電気をバッテリーに送って蓄え、その電気をモーターに送って駆動力にする、という『シリーズ方式』のハイブリッド。いわば必要なときに電気を自給自足しながら走る電気自動車のようなものだから、駆動はモーターのみによって行われます。そして走行にまつわる制御が、実はデビュー当初から素晴らしかったのでした。それが現在のノート/ノートオーラのシリーズではさらにヴァージョンアップを果たしている、というわけです。

【氷上での走行性能】“空転を止めよ”という指示を瞬間的かつ途切れることなく実行し続ける

最初に結論から申し上げちゃいますが、いや、すごかった。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載し、メカニカルな4WD機構を持ったクルマでももちろん走れることは走れるし、自分のドライビングでクルマの動きを御していくという楽しさは、むしろそっちのほうが勝っているというところもあるにはあるのですが、e-POWERの走らせやすさと安定感は段違い……というか別世界のようだったのです。

走行環境に対する常識的なドライブを心掛けてさえいれば、リラックスした気分で走行でき、スピンしたり雪の壁に突き刺さったりするようなことはない、といえるくらい。

僕は氷上はもちろん雪道に関してもシロート同然のドライバーですが、わざと無茶めな走らせ方をしても完全なスピンに陥ることはありませんでしたし、雪の壁にボディを掠らせるようなこともありませんでした。僕がうまいから、ではありません。残念ながら、間違いなくクルマが優れていたから、なのです。

例えば歩くのもおっかなビックリなくらいの、滑りやすいなんてもんじゃない路面の上で走ることを考えてください。もちろんタイヤはスタッドレスを履いています。それでもいつもと同じドライ路面のようにアクセルペダルを踏んだりしたら、タイヤは即座に空転をはじめ、前に進まないどころか横滑りをはじめたりすることだってあります。

エンジン搭載車にも空転を防止するトラクションコントロールシステムなどが備わっていることは多いのですが、“空転を止めよ”という指示をメカニカルな装置に伝えて実行させていく流れがある分だけ反応は遅れます。が、e-POWERでは電気がダイレクトにモーターを動かしていて、“空転を止めよ”という指示を瞬間的に、なおかつ途切れることなく実行し続けます。

ノート/ノートオーラのシリーズにはフロントにモーターを搭載するFFモデルと、前後にひとつずつモーターを持つe 4WDモデルが存在します。多少ラフにアクセルを踏み込んでみても、FFモデルではほんの一瞬、感覚的にはタイヤ1回転もしない間だけ空転したと思ったら当たり前のように前に進みはじめて加速を続けるし、e 4WDモデルに至っては空転の気配すらありません。

走行中にバンプを踏み越えたりして勢いでアクセルペダルを踏み込んじゃったとしても、空転を起こしてクルマが不安定になったりはせず、何事もなかったかのように前進を続けます。しかも違和感ゼロ。一連の流れがあまりにも自然すぎて、うっかりするとそれが実はとってもすごいことなんだっていうのを忘れてしまうほどです。

【氷上でのハンドリング性能】良識の範囲内で走る分にはまず何事も起こらない

カーブでも同じ。一般的なクルマだったら前輪が滑りはじめて外側に飛び出していこうとするような速度で曲がろうとしても、e-POWERは強力でした。FFモデルではわずかに外側に向かおうとする動きは顔を出すものの、すぐに体勢を整え直して曲がり、加速していこうとします。こうしたときにアクセルをわざと思い切り踏み込んでもタイヤが空転して変に挙動を乱すことはありません。

さらにステアリングを切る角度が大きくなってフルロックに近づいていくと、おそらくスピンモードに入っているとクルマが判断するのでしょう、モーターのパワーとトルクを絶妙に絞って姿勢を安定させる動きを見せてくれます。

あくまでも限界を超えたらどうなるのかを知りたくて無茶めな走らせ方も試してみたというだけで、普通はこんな滑って当然の路面で、そんな走らせ方をしようという気にはなれないものです。つまり良識の範囲内で走る分にはまず何事も起こらないし、仮に起こりはじめたとしても可能な限り姿勢を安定させていく働きを見せてくれる、というわけです。

そしてe 4WDモデルでは、そもそも駆動を受け持つタイヤが倍に増えるので、安定感がグッと増すのはもちろん、さらに後輪が押してくれるような動きも加わります。FFモデルと同じ速度で曲がろうとしたときも、難なくスルッと曲がれてしまいます。

あまり推奨できることではありませんが、VDCという横滑り防止装置をオフにして走ってみると、かなり後輪駆動に近づくような制御が入るのか、後輪を滑らせて自分でコントロールする楽しささえ味わえました。それもただ滑らせるのではなく、滑らせながら駆動をかけて前に進ませてくれるのです。これはもう驚きのレベル。

あらゆる場面でタイヤの空転をモニタリングしながら、その状況下で得られる最大限の駆動力を得られるよう制御しているのでしょう。1/10,000秒単位という恐ろしくキメの細かいコントロールが行われているというのは、さすがに伊達ではありません。人間が自分の手と足で実行するのは不可能なレベルです。

【氷上での制動性能】ワンペダルドライブがいい仕事をする!

そういえばe-POWERには、ワンペダルドライブという武器があることもお伝えしておくべきでしょう。

アクセルペダルを踏み込めばモーターは加速する方向に、アクセルペダルを戻せばモーターは減速する方向に働くよう作用します。つまり右足ひとつで発進もスピードコントロールも、クリープ状態くらいの微速域までの減速もこなせてしまう、というわけで。

実はこれ、滑りやすい路面では呆気に取られるくらい有効でした。特に減速時。一般的なクルマでは速度を落とすためにブレーキペダルを踏まなければなりません。こういう場面でブレーキペダルを踏むのは“滑っちゃって停まらないんじゃないか?”という恐怖感が邪魔をして正確な操作がしにくいものですし、ペダル操作にも相当にデリケートな神経を要します。ブレーキペダルを踏んだのに、ABSが作動し続けているのに、速度を削り取れずまっすぐ進んじゃう、ということが少なからずあるのです。

が、ワンペダルドライブの場合にはアクセルを戻すだけでOK。モーターには常に最適な駆動力を確保する制御が入っているので、タイヤを滑らせることなど一切なしに、自然に減速していくのです。もちろんABSを作動させることなんてありません。これが滑りやすい路面の上でどれほどアドバンテージのあることか! どれほどの安心感を得られるものか!

アクセルペダルを踏み込めば踏み込んだなりに路面状況の中で最適な加速をして、戻せば戻したなりに危なげなく望んだ領域まで最大限の減速をしてくれる。一度これに慣れてしまうと、元には戻れなくなってしまいます。

それだからしてノート/ノートオーラの各モデルは、氷上でも楽しく速く、しかも大きな安心感とともに走れます。FFモデルでもエンジン+4WDに近いぐらいの感覚で走れてしまいます。

e 4WDモデルに至っては、もし隣に誰かが乗っているなら「氷の上なのだからもっと慎重に走れよ」と恐がりはじめる速度域まで持っていったとしても、ドライバーはまったく不安感なし、クルマはいたって平穏無事。それくらいの実力を軽々と発揮してくれるのです。だから ストレスから解放されるドライブが可能になりますし、走った後の疲労感の少なさだって段違い。

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【まとめ】もし僕が雪国で暮らすことになったら、絶対にe-POWERが欲しくなる!

氷の上ですらそうなのですから、並の雪道など推して知るべし。もし何か起きるとするなら、それは自分が物理の法則を超えてしまうような走らせ方をクルマに強いてしまったり、どんなに優れたタイヤにだって限界はあるということを忘れて走っていたり、というドライバー自身に起因する問題によるものでしょう。

しかもノート/ノートオーラシリーズのe-POWERは、オンロードでは抜群に静かで滑らかで力強いモーター駆動。コンパクトカーにありがちなチープな感覚は、どこにもありません。

今回の試乗を通じて強く感じたのは、僕が雪国で暮らすことがこの先あるとしたらこのクルマが絶対に欲しくなる、ということでした。驚異的な異次元体験をしてしまった後では、他の選択肢をチョイスする気持ちにはなかなかなれないものですから……。

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