【新型シトロエン E-C4 1200km試乗】フレンチEVで伊勢神宮エクストリーム参拝して

クルマを選ぶ 試乗記

2022年1月7日に日本上陸した、シトロエン『C4』と『E-C4 ELECTRIC』でロングドライブをしてきました。今回は、EVの『E-C4』のレポートです。

シトロエンは万人ウケしないよ。でも刺さる人には深く刺さる

新東名高速 駿河湾沼津SAで充電中の『E-C4』

シトロエン C4 & E-C4の日本国内発売のプレスリリースのタイトルは「独創性こそが原動力」となっていました。このタイトルで万人ウケするクルマではないことがおわかりいただけるでしょう。

シトロエンというブランドは、市販車でいち早くFF(前輪駆動)を採用したり、大衆車クラスのクルマに、油圧サスペンションを導入したりするなど、先進的かつ独創的な技術を積極的に取り入れてきています。また、デザインも独創的。異彩を放つシトロエンのデザインは、広大な駐車場でも容易に見つけることができるでしょう。

シトロエンは、フランス人気質そのままのクルマだと筆者は思っています。ファッション感度が高く(悪くいえば、ファッションにうるさい)、合理的、平等性。そしてせっかち。総じてフランス車は、おしゃれで合理的なクルマですが、ことにシトロエンにおいては、コンフォート性(快適性)と平等性(同乗者への)がとことん追求されています。

この突出したシトロエンのデザイン性とコンフォート性、平等性は日本のマーケットにおいて万人ウケしませんが、刺さる人には深く刺さっています。

「シトロエン?あの個性的なフランスのクルマ?」だなんて言っているそこのあなた、食わず嫌いのまま損をしてしまうかもしれませんよ。ぜひ、一度はディーラーでご試乗を。

『E-C4』とは、どんなクルマ?

バッジは小文字のキリル文字「ё」になっているが、公式Webサイトなどでは大文字の「Ё」のキリル文字で表示されている。

正式な車名表記は、『E-C4 ELECTRIC(イー・シーフォー・エレクトリック)』で、Eの文字は、上にチョンチョンがつくキリル文字。シトロエン(CITROEN)もキリル文字「Ё」が用いられていることからの表現方法なのでしょう。

E-C4は、同じタイミングでフルモデルチェンジ、発売された『C4』のEVモデルです。内外装デザインは、ロゴやバンパーの一部のカラーリングとバッジが異なる程度の違いで、基本的に同一のクルマの、パワートレイン違いとなります。

C4には、今回試乗したEVモデルのほか、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンと、合計3種類のパワートレインがラインナップしています。通常、EVは専用モデルとして開発、発売されることが多いのですが、シトロエンを傘下に収めていた、グループPSA(現在は、フィアットやクライスラーなどのブランドを有したFCAと合併し、ステランティスとなった)のパワートレイン構成の考え方「Power of Choice(パワー・オブ・チョイス)」に基づき、ひとつのモデルで、ライフスタイルに合わせた最適なパワートレインをユーザーに選択していただくというものです。

EVに特別感が欲しい人には、ちょっと物足りない、と感じられるかもしれませんが、逆ICE(内燃機関車)からEVに乗り換えたときの違和感に強い抵抗を感じる人も多いのは事実です。

また、クルマの開発においては、EV専用プラットフォームやボディの開発コストが浮くという合理的メリットがあります。

今回の試乗は、『E-C4』の次に『C4』のディーゼルモデルに連続して試乗しています。パワートレイン違いの同一モデルは、実際の場面ではどのように異なるかもお伝えしていきます。

CITROENの「Ё」もキリル文字

すっかり前置きが長くなってしまいましたが、お話しておかないと筆者が感じた試乗レポートが伝わりにくくなってしまうため、できるだけ贅肉を落として解説させていただきました。

あ、すみません。肝心な『E-C4』の説明がまだでしたね。

C4シリーズは、Cセグメントに属するミドルクラス(どちらかというとコンパクト寄り)の5ドア・ハッチバック(SUVにも見える)です。『C4』のCは、CセグメントのCではなく、シトロエンのラインナップはすべて「C」で始まる命名規則からきています。ボディサイズや車格を表すのは、2文字目の数字です。

C4シリーズのボディサイズは、全長4,375mm・全幅1,800mm・全高1,530mm・ホイールベース2,665mm。国産車と比較すると、プリウスより全長が短く(20cm)、全幅が少し広い(4cm)となります。ちなみに、C4のプラットフォームは、Bセグメント(コンパクトカー)のプジョー『208』と共通です。

E-C4のパワートレインは、フロントに最高出力100kW(136PS)、最大トルク260N・mを発生する電気モーターに、50kWhの容量のバッテリーを組み合わせ、405kmの航続距離(WLTCモード)というスペックです。電費換算では、8.1km/kWhとなります(電費はメーターにも表示され、EVドライブの上では重要となります)。

新東名 浜松SAで充電中のE-C4

『E-C4』で伊勢神宮エクストリーム参拝

筆者は試乗するとき、いつもクルマにあわせた走行ルートや目的地を考えています。今回は、自由気ままで優雅なフランス人にならって、単に高速道路で西に向かうということだけを決めました。伊勢神宮は予め決めた目的地ではありません。試乗したのは3月上旬、タイヤはサマータイヤですので、雪があるところには行けないということもありました。とりあえず東名・新東名高速を西に進みながらいきあたりばったりで決めた目的地が、伊勢神宮でした。

EVに乗るとき、最も気になるのが充電です。日常生活の範囲内で乗るなら、出先での充電を考える必要はありませんが、たまの長距離ドライブでも、実際の航続距離と充電状況はどうなのかは、ガソリン車と比較にならないチェックポイントとなります。この点は、一般のディーラーの試乗では体験できないことですので、筆者が身代わりになって長距離ドライブをすることにしました。

その走行距離、1,200km。東京からお伊勢参りの往復のほか、山道をドライブするなどの寄り道もたくさんしました。クルマを借りる前、当時のグループPSAジャパンの広報担当から「お遍路でも何でも走り倒してきちゃってください」と言われていたこともあります。お遍路と言われたのは、2021年の春に、プジョー e-208でお遍路を回るという、人柱的な試乗企画をしていたからです。

【動画】高速道路での充電検証と伊勢神宮エクストリーム参拝

最高の乗り心地はEVのおかげ

『アドバンストコンフォートシート』は、たっぷりとしたフォームでソファのような座り心地。フカフカですが、沈み込みしすぎず適度な沈み込みが身体をホールドし、長距離運転でもおしりが痛くならず疲れなかった。

試乗をはじめて数mの走行で、E-C4の乗り心地の良さに拍手喝采(心の中で)を送りました。2022年1月8日に開催された発表会では、運転はできませんでしたがシートに座ることができました。このとき「何ということでしょう!」と心の中で叫んだものです。そして、「195/65R18」という変態的なタイヤサイズに刮目したものでした。

C4シリーズには『PHC』と呼ばれる、シトロエンがWRC(世界ラリー選手権)のレースマシンで得たノウハウを活かして開発した独創的なサスペンションシステムが「ユルフワ」な乗り心地の基盤をつくっています(PHCについては続編となるC4ディーゼルの記事で紹介します)。

路面からの入力の吸収が得意な細くてエアボリュームの多いタイヤで乗り心地の下味をつくり、PHCが入力の大きさに応じて衝撃を緩和する調理を行い、たっぷりとした中綿のシートという皿に乗せて提供される、至高の乗り味のヴィアンド(フランス料理でいう肉料理のメインディッシュ)です。

E-C4は、重たいバッテリーを搭載するため、ディーゼルモデル、ガソリンモデルより車重が重たくなります。E-C4の車重は、ディーゼルモデルより250kg重く、最も軽量なガソリンモデル『FEEL』より310kg重くなります。

しかし、この重量増が、乗り心地においてはプラスに働き、より重厚感と落ち着き感のあるものになっていました。

難点は公共急速充電設備での充電効率

1200kmのロングドライブでは、公共の急速充電設備で8回(最後の1回は、首都高速大黒PAの90kW出力6連充電設備のテストで特に必要としなかったもの)と、宿泊したホテルで1晩、普通充電器で満充電にしました。

気になったのは、公共の急速充電設備での充電効率でした。高速道路のSA、PAにある急速充電設備の出力は、40ないしは50kWが主流です。1回30分の充電なので、E-C4の場合、ざっくりバッテリー容量の半分ほどが充電できる計算ですが、実際の効率は4割ほど落ちました(E-C4の最大受電は50kW)。

これは、E-C4に限らず、旧PSAグループ傘下のEVの充電効率もほぼ同じです。日本の急速充電規格『CHAdeMO(チャデモ)』にクルマ側の受電セッティングを合わせこまないといけないのですが、同じCHAdeMO設備でも、メーカーが異なるため、すべてに合わせ込むのは結構大変という背景があるからでしょう。

今後のEV普及を考えると、充電インフラの増強だけではなく、自動車メーカーやインポーター側の対応も強化していただきたいものです。この点、後日公開予定の「EV談義」シリーズ記事で、詳しくお伝えします。

総合評価

電費 ★★ ライバルが少ないのでなんとも言えない。プレミアム系・スポーツ系EVを除くタイプのEVをぜんぶ集めても電費に大差はない。
加速 「EVは鋭い加速で速い」を一般的な概念としたときにおいては★1つ。EVにしてはそこまで速くはないという意味で、力不足という評価ではない。十分だし、踏めばそこそこ速い。せっかちなフランス人らしいセッティング。
ハンドリング ★★★ コーナリング時のロールは大きめだが、一定のところでしっかりとこらえる絶妙な味付け。好みが分かれるところではあるが、ワインディングでの走りはとても楽しかった。
操縦安定性 ★★★ C4シリーズはフランスでは大衆車。スポーティではないが週末のバカンスで長距離走行しても疲れない操縦安定性はさすが。
乗り心地 ★★★ ★5つあげたい。ぜひ悪路でも走行を。2CVの面影がチラリ。
取り回し ★★ 車幅1,800mmで取り回しが良いというとどのクルマもお世辞。ただ、狭い道でのすれ違い以外は普通に乗り回せる。
NVH ★★★ 水を打ったような静けさはなく、適度に音が入ってくる。自然な静粛性でよろしい。
走りの愉しさ ★★★ ずっと乗っていたくなる。そんな愉しさ。
外装デザイン ★★ 個人的には好きだが、好みは確実に分かれるので★2つとした。
内装デザイン ★★ 同上
室内空間 ★★★ 身長180cmの筆者が後席に座っても、頭は天井に付かない(足が短いという指摘覚悟)。大人4人乗って長時間走れる。
ラゲッジ ★★ 必要にして十分。ゴルフバッグは辛い。
快適装備 ★★★ コンフォート性はシトロエンの命です。
安全装備 ★★★ 実は、PSAの先進安全装備は非常に優秀。
運転支援 ★★★ 車線内の任意のところでハンドル支援するのはPSAのお家芸。操作スイッチがやっとステアリングのところに配置されて使いやすくなった。
コスパ ★★ 日本ではプレミアム感がでる輸入車のEVとしてはコスパは良い。

続編の『C4 ディーゼル』では快適性と平等性を中心にレポート

『C4 SHINE BlueHDi』犬吠埼にて撮影。

続編のC4ディーゼル試乗レポートでは、C4シリーズに採用された『PHC』のあれこれとその快適性、乗員への平等性から“ちょっとヌケのあるシトロエン”までをお伝えしたいと思います。お楽しみに!

(撮影・取材・文:宇野 智)

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※この記事は、2022年2月時点での情報を元に執筆しています。

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