試乗レポート「フォルクスワーゲン ゴルフ(8代目・2021年〜)」ハッチバックの世界標準はどのグレードを選ぶのが正解?

クルマを選ぶ 試乗記

本国から遅れること約2年。2021年6月に最新モデルが日本導入されたフォルクスワーゲン ゴルフ。いつの時代もハッチバックのベンチマークとなってきたモデルだけに、多くの人がこのニューモデルに大きな期待を寄せているはず。そこで、嶋田智之さんにゴルフのベストな選択を教えていただきました。

SUV全盛の今だからこそ、ハッチバックがおもしろい

ふと道路を見渡してみると、目につくのはSUVの姿ばかり。そんな状況にもずいぶん慣れました。生活感を漂わすことなく、人も荷物もゆとりを持って詰み込めて、走りも決して悪くないSUV。いくつかのモデルには、僕も個人的に大きな魅力を感じています。

でも半面、僕の中のヘソマガリがときどき顔を出して、「SUVってリンス・イン・シャンプーみたいなものじゃん」なんてセリフを吐いてはペロッと舌を出したりもするのです。ひとつでシャンプーの働きもリンスの働きもするから便利ではあるけれど、シャンプーの要素もリンスの要素も生粋のシャンプーとリンスにはかなわない、というわけですね。SUVもセダンとステーションワゴンとハッチバックの要素を持っていて都合はいいのですが、実のところそれぞれの要素でそれぞれに優っているとは言い難いのです。

そんなところから僕は最近、SUVの台頭でずいぶん駆逐されつつあるハッチバックというカテゴリーのクルマたちに、あらためて魅力を見いだしていたりします。

これまで自分でも所有してきたし周りにも乗っている友人・知人がたくさんいて、そばにあるのも話題になるのも当たり前だったのですが、今になって見渡してみると昔ほどの勢いはまったくなく、ちょっと寂しい気持ちになります。新車の中にもちょっと魅力的なモデルは幾つかあるんですけどね。

ハッチバックは多くの場合、コンパクトで、2人なら楽々、4人でもそう不自由なく乗れて、荷物もほどほどに積めて、さらには車高が比較的低いから重心も低くて運動性能を確保しやすく、また若者もしくは気持ちの若い人が選ぶことの多いクルマだったため、エンジンやサスペンションなどがスポーティな仕立てになっているケースが多く……と、物理的にも精神的にもサイズのいいクルマたち。日々の暮らしの中でピタリと足に合ったスニーカーのような心地よさを味わわせてくれる存在なのです。昔の日本はこのカテゴリーが、今のSUVと同じように百花繚乱だったのでした。

8代目ゴルフのテーマは“デジタル化”と“電動化”

このカテゴリーをずっと牽引してきたのが、1974年にデビューしたフォルクスワーゲン ゴルフでした。インテリジェンスのあるパッケージをシンプルでスマートなスタイリングデザインで包み込んだゴルフは、たちまち世界的なベストセラーとなってフォロワーをたくさん生み出し、モデルチェンジを繰り返しながらも延々とこのカテゴリーのベンチマーク、メートル原器と呼ばれ続けてきたのでした。

そして2021年12月、8代目となったゴルフが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの“インポート・カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞しています。時代とともにボディサイズは望むと望まざるとにかかわらず大きくなってはきたものの、基本コンセプトも哲学も変えずにここまでやってきて、相も変わらず高い評価を獲得し続けるって、ものすごいことだと思うのです。

8代目ゴルフも基本的には正常進化に次ぐ正常進化の最新版といった感じなのですが、フルモデルチェンジにあたっては2つのテーマがあったようです。ひとつはデジタル化、そしてもうひとつは電動化、です。

デジタル化は、すべてのゴルフにデジタルコクピットが標準装備、もしくはオプションで選べるようになったこと。メータークラスターの中がフルデジタル化され、ダッシュボードの上方にヘッドアップディスプレイが映し出され、メーターパネルの真横に10インチのタッチスクリーンが並び、インパネのスイッチにも静電タッチセンサーが導入され、シフトセレクターはバイワイヤ式となり、ドア/トランクの開閉や駐車位置の確認などは専用アプリを経由してスマホから行えるようになり……と、見事なまでにデジタルづくし。空調やドライブモードの選択、様々な車載機能の設定などの操作はタッチスクリーンに統合されている。つまり視覚的にもインターフェイスの面でも、ほとんどがデジタル化されているのです。

試乗のあいだ中、いろいろ操作してみたのですが、これは好き嫌いが分かれるかもしれません。

デジタルガジェットの進化とともに育ってきたような世代はまったく抵抗なく使いこなせるかもしれませんし、僕も慣れてしまえさえすれば使いこなせるかもしれないとは思いました。が、スマホを使うのにも難儀するような人たちにとって、これは受け入れがたい変革でしょう。

僕も走りながらのブラインドタッチでエアコンの温度調整をしようとして何度かしくじり、軽くイラッとしたりもしました。グラフィックは綺麗で視認性もいいから嫌いなわけじゃないですし、止まって操作する分には何の問題もないですが、僕は今この段階では、まだ物理的なスイッチやダイヤルで操作するほうがいいな、と感じています。直感より触感。……慣れるかな?

1リッターモデルはよく走り、よく曲がる

電動化は、主力となるモデルが2種類のガソリンエンジンと48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた“eTSI”と呼ばれる仕様になったこと、です。ひとつは直列3気筒の1リッターに可変ジオメトリーターボを組み合わせたエンジンで、こちらは110ps/5500rpmと200Nm/2000-3000rpm。もうひとつは直列4気筒の1.5リッターターボで、150ps/5000-6000rpmと250Nm/1500-3500rpm。それぞれを13psと62Nmの48Vスタータージェネレーターがアシストする仕組みです。

まず1リッターモデルですが、実は力不足であることを予想していました。けれど、一般的な走行シーンにおいては、ちっとも心配する必要はありませんでした。

この排気量だと発進から微速の領域でじれったい思いをしても無理ないところなのですが、可変ジオメトリーターボと電動ブースターが効いて、「えっ?」と軽く驚いたほどの力強さを感じさせてくれるのです。

街なかや郊外の一般道ではとても滑らかに、軽快に、走ってくれます。高速道路に入っても、さすがにここ一発のパワーにこそ欠けるものの、流れを軽くリードできるくらいの実力は持っています。ワインディングロードの登りでも、さほど苦しそうなそぶりを見せることなく粛々と走ります。2リッターの自然吸気エンジン並みのトルクと電動アシストがあるのだから、当然といえば当然かもしれません。「速いな」と感じることはないけど、「遅いぞ」と落胆することもなく、実用上は十分な走りっぷりを味わわせてくれました。

特筆すべきは、よく曲がること。気筒数がひとつ少ないこともあって、こちらは1.5リッターよりおよそ50kg軽いのです。しかも、フロント側が30kgほど軽い。だから鼻先がスイスイとコーナーの内側に向かっていって、気持ちいいくらいの曲がりっぷりを味わわせてくれるのです。これはなかなか楽しい!

1.5リッターのほうはどうかといえば、1リッターと比べると明らかにスポーティです。40psと50Nmのアドバンテージがあるわけですから、それもしかり。発進や微速域のマイルドハイブリッドの恩恵は、エンジンのもともとのトルクが大きい分だけ1リッターより感じにくいところはありますが、それでもちゃんと体感はできます。

そして、そこから先のパワーの存在と気持ちよく伸びていくフィーリングが段違い。あらゆるシチュエーションで「結構速いじゃん」なんて思えたりしますし、思えるだけじゃなくて実際にスピードもしっかりついてくるから、高速巡航も完全な得意分野といえるでしょう。

高回転まで回したときの4気筒らしいメカニカルなサウンドもそれなりに心地いい部類だし、しっかりとした安定感を伴いながら軽やかに曲がっていけるから、ワインディングロードに飛び込んでも思いのほか楽しめちゃいます。スポーツグレードでもないのに、なかなかの実力者なのです。

先代ゴルフをサンドペーパーで磨いたような熟成度

そして両車に共通するのが、乗り心地のよさ。車体がしっかりしていてサスペンションがよく動く、ゆえにしなやかにして滑らか。言葉にするとそんな感じなのですが、実はそれって先代ゴルフも同様。そこを、例えていうならサンドペーパーで磨いてさらに洗練させたような、そんな印象なのです。

ドイツ車の乗り味を示す常套句の“しっかり感”は残っているけど、“固い”“引き締まっている”とはちょっと違う。この快適さは、同じセグメントのハッチバックの中では随一といってもいいかもしれません。

もうひとつは、走行中もよくエンジンが止まること。ちょっとアクセルペダルを戻せば止まる、負荷が減れば止まるといった感じで、かなり頻繁に惰性で走らせようとするのです。もちろんそれは燃費のため。WLTCモードでは1リッターが18.6km/L、1.5リッターが17.3km/Lと先代よりも大幅に向上しています。

実はこのeTSI以外にも、ゴルフにはふたつのエンジンが用意されているのですが、どちらも非電動化モデルです。ひとつは2リッターのターボディーゼルで、eTSIを楽々置き去りにできる実力の持ち主。フィーリングもかなり良好です。1台の乗用車として考えたら、このエンジンを積んだモデルの完成度はかなり高いです。

そしてもうひとつは、245psを発揮するガソリンの2リッターターボを積むスポーツモデルのGTI。これはエンジンのみならず全身がスポーツするために作られているようなモデルで、ゴルフでここまで速くなくてもいいんじゃない?と感じられるくらいの出来映え。ゴルフの中で、すでに別カテゴリーに存在しているかのような乗り味です。

僕のベストチョイスは1リッター。あなたのベストは?

現行ゴルフ、実は4車4様なのです。なので、「その中でベストはどれ?」と尋ねられるようなことがあったらちょっと困っちゃうのですが、僕なら悩んだ末に“1リッターのマイルドハイブリッド”と答えることでしょう。

理由は電動化の恩恵を最も強く感じられるモデルであり、動力性能的にも日常使いには十分で、フットワークも口元が緩んでくるくらいに良好で、ハッチバック本来のよさ──つまりは“ピタリと足に合ったスニーカー”感を最も強く感じさせてくれるモデルだと思うから。このカテゴリーでは、リラックスした気分で毎日心地よくつきあえるヤツがベスト。そんなふうに考えているのです。

もちろんここは人によって異なる部分。ショールームを尋ねて試乗をしてみて、あなたのベストを探してみてください。

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※この記事は2022年6月現在の情報に基づいています。

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