「嶋田智之の目」日本でも人気上昇中のプジョーとは、どのようなブランドか?

クルマを選ぶ テーマ別特集

かつてはマニアックなクルマ好きから支持を集めるブランドでしたが、昨今はそこまで車に詳しくないけれど、オシャレな雰囲気のものに乗りたいという人からも支持を集めているプジョー。フランス車らしい小粋なクルマを数多く作っているプジョーとは、どのようなブランドなのでしょうか。

新しいプジョー308はゴルフ超え?

この4月に国内発表された新しいプジョー308。かなり評判がいいようですね。スタイリングは力強くシャープにしてエレガント、インテリアのクオリティも大きく向上し、フラットな乗り心地も望外にスポーティなハンドリングも磨かれて、それでいて価格の値上がりはごくわずか。それは気になる人も多いだろうと思います。

僕たち自動車メディア業界の間でも評価はだいぶ高くて、人によっては「このクラスの世界的なベンチマークであるフォルクスワーゲン ゴルフを超えたかも」と絶賛しているほどです。

僕は残念ながら巡り合わせが悪くて日本に上陸しているガソリンとディーゼルの308に乗ることはできていないのですが、少し遅れて日本に導入されることが決まっているプラグインハイブリッドのモデルにはフランス本国で試乗してきました。

このクルマについて語るとしたら、「まずコーヒーでも淹れてきてください」と長くなることをほのめかしてからスタートしなきゃならないほどで、その完成度の高さには軽く驚きを感じたほどでした。ゴルフ超えの評価があることにも素直にうなずけます。

……とここまで述べておきながらナニですが、「ゴルフはフォルクスワーゲンだから知ってるけど、プジョーって何さ?」なんて思う人も、まだまだいらっしゃるようです。確かにゴルフは輸入車の定番中の定番で、おそらく累計でいうなら日本最多の販売台数を誇るモデル。超メジャーどころです。日本車以外は考えられないという方や慣習のような流れでここまでずっと日本車で来た方でも、名前とカタチぐらいはご存じでしょう。

それと較べれば、プジョーはマイナーな存在だといえなくもありません。でも最近、プジョーってはっきりと人気が高まってきていますし、販売そのものもかなり好調なのです。

世界の自動車メーカーの中でも最古の部類に属するプジョー

そもそも、プジョーとはどんなブランドか。

歴史はめちゃめちゃ古いです。1810年、フランス東部のスイスとの国境に近いヴァランティニィという街で、女性のポンパドゥールスカートに使う金属や時計の歯車のような小さな部品などを作る、家族経営のような小規模金属製造業者としてスタートしています。料理をすることや食べることが大好きな人の間では、その技術を活かしたプジョー製のペッパーミルがよく知られていますね。

また自転車が好きな人ならツール・ド・フランスなどで活躍したプジョー・シクルのことを、オートバイが好きな人ならスタイリッシュなスクーターなどが人気のプジョー・モトシクルのことを、それぞれご存じでしょう。

現在ではミルやカトラリーなどのキッチン/テーブルサービス用品を創業家であるプジョー家が所有する会社が、自転車とオートバイはそれぞれ商標を手に入れた別の会社が展開しているのですが、ルーツは一緒です。

クルマに関しては、現在は世界4位の自動車グループ『ステランティス』の一員となっていますが、やはりクルマに関しても長い歴史を持っていて、蒸気エンジンを積んだ3輪の自動車を1889年に製造しています。世界の自動車メーカーの中でも最古の部類に属します。

長い歴史を持つ自動車メーカーのほとんどすべてがそうであるように、このブランドにもちょっとばかり紆余曲折の時期がありました。けれどその10年ほどの時代を除けば、プジョーのクルマ作りはほぼ一貫しているといっていいでしょう。

その特徴を並べると、奇をてらったところのないエレガントなスタイリングデザイン、無理のない穏当な設計、“猫足”と呼ばれてきた優れたロードホールディングと独特のフラットな乗り心地、スポーツモデルじゃなくても気持ちよく曲がっていけるハンドリング……といった感じになるでしょうか。

特に昨今のラインナップは、そうした伝統的なプジョーならではのテイストの純度を高めているかのようで、そのジワリと効いてくるような特有の魅力が広まって人気につながっているような印象です。

フランス車は小さなクルマでも手を抜かない

よく「フランス車はコンパクトカーが抜群にいい」といわれますが、確かに──大柄なモデルは大柄なモデルで魅力的だったりするのですが──正解だと思います。

フランスの自動車メーカーは、比較的安価で小さいクルマに手を抜くことはありません。多少は様変わりしてきているところもあるにはありますが、フランス人は昔から無駄なモノやコトにお金を払うのを嫌うので、価値がないと思うモノやコトにはまず財布を開きませんし、それだからしてクルマも身の丈+αぐらいの範囲で選ぶケースがほとんどです。

しかも、幹線道路こそそれなりの道幅はありますが、ひとつ裏に入れば日本と同じかそれ以上に狭い道がたくさん。旧市街なんぞに入ってしまうと「これって中世の頃の馬車のための道幅でしょ」なんて考えちゃうほどの、恐ろしくか細い路地が当たり前にあったりもします。しかも路駐天国……。

小さいクルマの必要性というのは日本以上にリアルだし、小さいクルマがちゃんと売れないとまずいことになるというのは日本の自動車メーカー以上にシリアスな問題。だからデザインも実用性も乗り味も、手を抜けないのです。

今や自動車メーカーはおしなべてグローバルな展開がなされていますが、足元である自国でそっぽを向かれるわけにはいきませんから、抱えている事情に変わりはありません。それはプジョーにしても同じこと。だからコンパクトなプジョーも、もちろん出来映え良好です。

日本では一番小さなモデルでも、居心地は抜群!

今、日本に導入されているモデルの最もコンパクトなプジョーは、本国では2番目に小さなハッチバックである208シリーズと、最も小さなSUVとなる2008シリーズです。

208シリーズは、現在のプジョーの人気を牽引してきたモデル。2019年に導入された現行モデルは2代目にあたるのですが、全長4,095mm、全幅1,745mmのコンパクトな車体に、これまた奇をてらったところのないほどほどにエレガントでほどほどにスポーティな印象の、ワイド&ローなデザインが施されています。

昨今のプジョーのアイコンのようになっている牙のようなフロントのポジションランプやヘッドランプとテールランプのところの3本の鉤爪がアクセントになってはいますが、何よりも全体的なフォルムのまとまりのよさ、バランスのよさが素晴らしい。素直に目が惹き付けられる、とてもスタイリッシュな5ドアハッチバックだと思います。

インテリアでは『iコクピット』と名づけられた、小径ステアリングの上からメーター類を視ることになるプジョー独自のレイアウトが目を惹きます。これは好き嫌いが分かれるところですが、視線の移動が少なくてすむので、僕は嫌いじゃありません。なにより、ひとつ前のモデルよりも内装の質感が目に見えて高くなっていて、昔のフランスのコンパクトカーを賞賛する「チープであることを恥じていないのが偉い」っていう言葉とは、隔世の感どころじゃない雰囲気です。

シートの座り心地のよさと疲れの少なさは、フランス車の基本的な公式どおり。ものすごくルーミーというわけじゃないのですが、なにせ居心地がいいのです。

コーナリングこそプジョーの真骨頂

でもやっぱり素晴らしいのは走りっぷり。基本的には直列3気筒の1.2リッターターボで、数値上はたった100ps/5,500rpm、205Nm/1,750rpmと見るべきものはありません。

でも、走らせてみると一発でおわかりになると思うのですが、このエンジン、実は侮れない実力の持ち主。発進時のエンジンの回転が上がってない段階から思いもよらない力強さでスルスルと加速していき、街中では不満のフの字も思い浮かばないほどなのです。

高速道路でも、そりゃ爆発的な加速とか圧倒的なスピードを期待するなら話は別ですが、本線への合流の加速も難なく気持ちよくこなしてくれるし、巡航に入っても流れをスイスイとリードしていけちゃうくらいの速さは見せてくれます。高回転までぶん回してみると、回転に沿ってパワーが次第に上積みされていく感じがあって、それなりに楽しめちゃったりもします。

数値から想像すると意外に思えるのですが、僕たちフツーの人がフツーのクルマに求めるくらいの走りっぷりはいとも簡単に味わわせてもらえちゃうのです。

そして何より素晴らしいのはコーナーでの振る舞い。前輪駆動ですから、フツーなら後輪は路面の上で転がったりタイヤのグリップ力どおりに踏ん張ったりするのが仕事なんですが、プジョーの場合は違うのです。

ステアリングを切り込んでクルマが曲がる姿勢に入ると、車体は慣性の法則に従って傾きはじめます。その傾き具合に急な素振りがなくて穏やかに滑らかに推移していくのが安心感に満ちていてまた素晴らしいのですが、傾きはじめると電子制御の4輪操舵機構がついているわけでも何でもないのに、設計の妙というか長年の経験が活きているというか、あるいはこれぞ思想というべきなのか、後輪の追従の仕方がクルマを曲げる方向に微妙に作用して、まるで後輪から適切なラインにクルマをのせるようにして曲がっていくのです。

そういうセッティングになっているから、路面を掴む、腰がしっかり粘る、クルンと気持ちよく曲がる。スポーツモデルでもないのに、ヤケに心躍るフィーリング。そういう足腰ですから、どこかが張ったような感じもまったくなく、4つの足で路面の凹凸を柔軟にやり過ごしていきます。だから滑らかで快適。乗り心地もこのクラスにあるまじき素晴らしさです。これぞプジョーの真骨頂、といったところでしょう。

SUVも走って楽しいハッチバックと同じ方向を向いている

2008は、基本的には208のSUV版だと考えていただいていいでしょう。基本骨格が違っていてサイズもホイールベースも半周りくらい大きいので、室内や荷室はこちらの方がだいぶ広いです。また大きく重くなった分をカバーするために、1.2リッターターボのエンジンは30psと10Nm引き上げられています。

けれど、走りのテイストは感心しちゃうくらい同じ方向を向いています。目をつぶって走らせてみたら区別がつかないとまでは言いませんし──それ以前にそんなことしたらクラッシュしちゃいますね──大きく重くなっていたり背が高くなっていることの作用はそれなりにあるのですが、クルマが感じさせてくれるフィーリングはハッチバックの208にかなり近くて、同じように楽しいし同じように気持ちいいのです。これには軽い驚きを誰もが感じるはず。

実は208にも2008にもBEV(電気自動車)版がラインナップされているのですが、それらの走りのテイストも見事に同じベクトル上にあるのです。それはプジョーが一貫性を持って自分たちのフィロソフィを各モデルに注ぎ込んでいる証し。『プジョーらしさ』という点において、一点の曇りもありません。そうした真摯なクルマ作りは、理屈じゃないところでユーザーに伝わるものなのです。

気が向いたらでも構いません。ぜひ一度試乗してほしい

だいぶオタクっぽくあれこれ述べちゃったので「めんどくさいヤツだなぁ……」なんて思われているかもしれませんが、年に数えられないくらいのクルマに試乗して、それを繰り返すこともう何十年? という僕のような人間を軽々と魅了してしまうくらいのクルマだ、ということだけ覚えておいていただければ御の字です。

そしてさらに「あのめんどくさいヤツが言っていたことはどこまで本当なんだ?」とばかりに、どこかのタイミングでディーラーまで試乗に出掛けてみていただけたりすると、さらに御の字です。

僕がこの仕事をするうえで心掛けているのは、クルマの素晴らしさを伝えることで小さくてもいいから幸福感を抱ける人をひとりでも増やしていこうということ。もしかしてその幸福感を抱くことになるのは、次はあなたの番かもしれません。

▼カープレミアなら月々の支払額でクルマを探せる▼
カープレミアで「プジョー」を探す

「カープレミア」で愛車を探そう!

「カープレミア」は提携している全国の中古車販売店から自分に合ったクルマを見つけることができるサイトです。車種やメーカーだけでなく、月々の予算からも探すことができます。

「カープレミアディーラー」は厳選された優良販売店

カープレミアに掲載の中古車販売店は、東証プライム上場のプレミアグループが提携している全国の厳選された優良な販売店です。

オートローンやカーリースのファイナンスサービスの提供を始め、買った後も安心できるアフター保証も取り揃えています。支払いや維持費が心配でも、柔軟に対応してくれるので安心して車を購入できます。

「カープレミアクレジット」なら自分に合った支払いプランが選べる

「カープレミア」のオートクレジットは、新車・中古車問わず、分割払い、ボーナス併用払いや一部繰上返済などの豊富な支払いプランを用意しています。さらに故障保証に加入すれば無料で修理対応が可能です。

「カープレミア故障保証」など充実したアフターサービスで安心のカーライフを

「カープレミア」は購入後のカーライフを支えるサービスも多数提供しています。例えば「カープレミア故障保証」では最長10年間、最大437ヵ所の自然故障を修理費0円で対応可能です。様々なプランの中から自分好みにカスタマイズできるため、余分な保証費用がかからず、必要最低限の支出で万が一に備えることができます。

また、365日24時間対応のロードサービスも利用可能で、全国9,500ヵ所の拠点からすぐに駆けつけることができます。そのほか、困ったときの相談役になるコンシェルジュサービスを整えており、安心のカーライフをお過ごしいただけます。

カープレミアなら月々の支払額でクルマを探せる

関連記事

カテゴリ週間ランキング

中古車検索は月額比較のカープレミアがおすすめ!

中古車検索は月額比較のカープレミアがおすすめ!