試乗レポート「トヨタ クラウンクロスオーバー」クーペルックなSUVに変貌したクラウン。でも上質な乗り味は変わらない(嶋田智之)

クルマを選ぶ 試乗記

2022年7月に世界初公開された新型クラウンは、セダンではなくクーペのような美しさをまとったSUVでした。これには多くの人が驚いたと思います。自動車ライターの嶋田智之さんもその一人。スタイルはもちろん、走りはどのように変わったのか、レポートします。

えっ?これがクラウン?

「えっ?これがクラウン?」と椅子から転がり落ちそうになったのは、7月15日のことでした。16代目となるトヨタ クラウンのワールドプレミアをオンラインで見ていて、パッと目に飛び込んできたクルマのスタイリング。それが僕の頭の中にあったクラウン像とまるっきり結びつかなかったのです。

クラウンといえば、クルマにまったく興味がない人でも名前くらいは知っているし、昔から『ニッポンのコーキューシャ』の代名詞のような存在だということもそこはかとなく認識しているはず。そしておそらく頭の中にポンと浮かんでくるのは、わりと角張った感じのフォーマルな4ドアセダン、だと思うのです。

ところが、ですよ。前面に押し出していたからメインに据えているモデルだと思うのですが、その姿はちっとも角張ってもいなければセダンらしいセダンでもない、4ドアクーペとSUVを掛け合わせたようなクロスオーバー。

しかも、ですよ。クラウンにはこれまでも複数のボディが並行してラインナップされたことはありましたが、今回はそれを含む4つのモデルが同じクラウンの名のもとに誕生するそうなのです。

中にはセダンも用意されているのですが、それはファストバック風のシルエットを持っていて、やっぱり角張った感じなんかどこにもありません。どのデザインも「わりとカッコいいじゃん」なんて感じたりはしましたけれど、それなのに……いや、それだからこそなのかもしれませんが、やっぱり「えっ?これがクラウン?」なままで、これは事件だな、なんて思ったのでした。

エクステリアもインテリアも先代より若々しい

そして夏が過ぎて秋が来て、いよいよ新型クラウンに試乗できる日がやってきました。目の前にあるのは、その名も『クラウンクロスオーバー』。衝撃的ともいえるファーストインプレッションを与えてくれた、当のモデルです。最初にこのクルマをメディアに触れさせるということは、ここにトヨタの新型クラウンに対する想いが最もはっきり込められていると見ていいでしょう。

ボンネットからフロントウィンドウ、そしてルーフからテールエンドへとなだらかに流れていくラインはなかなか綺麗だし、フロントのドアからリアのドアへとキックアップしていくえぐり込みも表情が豊かで、カッコいいかカッコ悪いかでいうなら明らかに「カッコいい」と感じます。

インテリアに関しても同様。重厚さというか堅苦しさというかオッサンくささというか……は軒並み影を潜めました。といってカジュアルだと感じちゃうところまでは踏み込んではいませんが、水平基調でシンプルな印象の、スタイリッシュといっていいデザインです。

エクステリアもインテリアも、先代までと較べると全体的にだいぶ若々しい印象。今時の時流にも合っていると思います。そこが狙いなのは明らかです。

詳細なデータは公表されていないからあくまでも推測の域を出ない話ですが、これまでどおりのクラウンの売れ行きが好調で同じ路線をキープしても伸びていく可能性が高ければ、もっとコンサーヴァティヴなモデルチェンジでよかったはず。ひと頃のメルセデス・ベンツがそうだったように、クラウンを求める層の高齢化が進んで先細りになっていくという予測があって、だからこそ考え方をドラスティックに変える必要があったのでしょう。そういう意味では、いい具合に成功しているように見受けられます。

少なくとも、黒塗りのハイヤーだとか公用車だとか会社の役員の車だとか、そうした使われ方がされることはまったく想像できません。

スタンダードとハイパフォーマンス、2つのパワートレインを用意

なるほど、それならドライバーズカーなのだな、と思いつつ乗り込んでみると、「おっ?」と思わされました。腰をかがめて潜り込む感じもつま先立って這い上がる感じもなく、シートにスッと腰を下ろしやすいのです。ヒップポイントは630mm。このスタイルにしたことで全高や地上高を低く採る必要がなくなり、乗り降りがしやすいのです。

それは後席もまったく同じで、しかも後席の足元の広さもこれまでのどのクラウンよりも広々としているのです。加えて後席のドアには半ドアの状態まで閉めればそこから先は自動で閉まるクローザー機能が備わっています。もしやショファードリブンなクルマであるというのも捨ててないってこと……?

ともあれ、走りだしてみることにしましょう。

クラウンクロスオーバーには、2つのパワートレインが用意されています。ひとつは2.5リッター直列4気筒エンジンのハイブリッドで、リアにもモーターを持たせた4WDの『E-Four』。こちらはエンジンが最高出力186psで最大トルクが221Nm、フロントモーターが119.6psに202Nm、リアモーターが54.5psに121Nmで、システム最高出力が234psです。

もうひとつは2.4リッター直列4気筒ターボにモーターを組み合わせ、リアにはモーターやインバーターなどを一体化したeAxleを備える同じく4WDの『E-Four Advanced』。デュアルブーストハイブリッドと呼ばれるこちらは、エンジンが272psに460Nm、フロントモーターが82.9psに292Nm、リアモーターが80.2psに169Nmで、システム最高出力は349ps。2.5リッターのハイブリッドがスタンダードな仕様、2.4リッターのデュアルブーストハイブリッドがハイパフォーマンスな仕様、と考えていただいていいでしょう。

走りに不満はないが、踏んだ時のエンジン音の大きさは疑問

今回走らせることができたのは、2.5リッターハイブリッドの方でした。このシステムはこれまでのものを熟成させてきただけあって、さすがに手慣れているというか、文句のつけどころがありません。

ゼロスタートの段階から滑らかで力強く静かで、街なかでは緩慢さを感じることはありません。フル加速を試みたりすると飛ばし屋さんには物足りないかもしれないけれど、高速道路のクルージングや追い越し、ワインディングロードでのコーナーからの立ち上がりでも、不満を覚えることはありませんでした。

ただひとつ、それは不満というより疑問のようなものですが、エンジンを高回転まで回すとサウンドが結構はっきりと高まります。音質がそう悪くはないので耳障りではないのですが、それまでが静かな空間だっただけに賑やかに感じられます。それは「ドライバーズカーだから」ということなんでしょうか……?

乗り心地は上質な部類です。路面の変化でサスペンションが少しだけ動くときも、うねりだとかコーナリングだとかで大きめに動くときも、一貫して心地のいい乗り味を味わえます。基本、癒やしのクルマといっていいでしょう。21インチという大径ホイールとハイトの薄いタイヤを履いているというのに、それが快適性にさほど悪影響を与えていない感じです。

もちろん高速道路で段差を踏み越えた瞬間などにはっきりしたインパクトを感じることはありますが、不快な突き上げというほどのものではなく、車格や価格から考えても満足のいく乗り味を提供してくれるレベルにあると感じました。

それに、意外やよく曲がるのです。走ったコースの途中にあったワインディングロードは生活道路といえる一般道でしたから、もちろんタイヤがきしむような速度で攻めた走りをすることなんてできませんでしたが、さほど道幅が広いとはいえず、ときにきついカーブが現れるようなその道で、まったく難儀することがないどころか思いのほか気持ちよく走らせてくれたのです。

ステアリングの操作に対して遅れはなく、クルマは正確に動いてくれます。タイトターンではスイッと軽々ノーズの向きを変え、ロングコーナーではシャキッと安定し、狙ったラインを綺麗にトレースしていけるのです。これにはE-Fourが必要なときに後輪の駆動をコントロールしてくれることも効いているのでしょうが、前輪だけじゃなく後輪も操舵に加担する『ダイナミックリアステアリング』と呼ばれる4WS機構が備わっていることが大きく作用しています。

クルマの傾きが少なめで安心感を持ってコーナーを駆け抜けられるのも、そのおかげ。効き方も乗り始めの交差点などでは存在を意識したことはありましたが、すぐに慣れてしまうので、自然といっていいレベルでしょう。

カッコいいモノはカッコいい。それでいいじゃないか

新型クラウンクロスオーバー、その出来映えはかなりいいのです。まだ街をたくさん走っているクルマではないこともあるのでしょうが、対向車線からの視線も痛いほどでした。一台のクルマとしての満足度は結構高いと思うのです。

が、脳ミソのコリ固まった昭和ドップリのオヤジである僕は、試乗が終わって好感を抱いているというのに、まだ「えっ?これがクラウン?」な気持ちがどこかに引っ掛かっていて、モヤモヤした気分でいたのは事実です。新しく素晴らしいモノの登場に素直に喜べず、「だいたい昔はなぁ……」なんて古い何かに捕らわれてしまう。ああ、老害まっしぐら……。

とはいえ、そんなふうに感じていた試乗から日が経ってキーボードに向かっている今は、実はもう「えっ?これがクラウン?」な気持ちはほとんどなくて、問われればわりとフツーに「新しいクラウン、結構よかったよ」なんて答えている自分がいます。時間が解決してくれたのかもしれません。

何より、新型クラウン、受注が好調なようなのです。発売約1ヵ月後の段階で、およそ25,000台。それは世の中が受け入れている、ということの証です。いいモノはいい、カッコいいモノはカッコいい。それでいいじゃないか、なのでしょうね。

おそらく僕と同じように、このクルマがクラウンを名乗ることに違和感があった人も、それなりの数、いらっしゃると思います。クラウンというのはそれほどのビッグネームですからね。

でもそういう人にこそ、ショールームにこのクルマが配備されるようになったら、ぜひ試乗にいってみてほしいな、と思うのです。もしそれで「イマイチ合わないなぁ……」と感じたら、同じクラウンのシリーズに後から追加されるハッチバック風SUV、エステート風SUV、それにセダンを待つというのも手かもしれません。

16代目クラウンのストーリーはまだスタートしたばかり。急いで結論を語る必要はない……と、自分のことを思い切り棚に上げつつ、お伝えしておきます。

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※この記事は2022年9月現在の情報に基づいています。

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