EVシフトしないメーカーも?!自動車メーカーの最新動向【カープレミア編集長のEV談義Vol.7】

クルマを選ぶ テーマ別特集

前回は、充電インフラと電力の不足についてお話しました。今回は、自動車メーカーのEVシフトに向けての最新動向についてお話します。

前回のEV談議は

EVシフトの潮流に逆らう動きも?

EUを皮切りに内燃機関車(ICE:ガソリンエンジン車・ディーゼルエンジン車)の販売禁止。日本政府も2035年に新車販売はすべて電動車とし、内燃機関車の販売禁止を打ち出しています。

この方針が打ち出されたため、各自動車メーカーは全車EVシフトが進むものと思うのは当たり前です。しかしながら、全車EVへシフトしない自動車メーカーの動きも見られます。

「EVシフトの潮流に逆らう動き」と書くと語弊があるかと思いますが、いくつかの自動車メーカーの動向は、筆者はEVシフトへのアンチテーゼに見えて仕方ありません。

トヨタ「EVもフルラインナップ」と言ういっぽうで水素エンジン車を開発

2021年12月14日に開催されたトヨタの「バッテリーEVに関する説明会」。新型EV16台を披露する豊田章男社長。(画像:トヨタ)

以前のTVCMで豊田章男社長は「EVもフルラインナップ」と言い切っていました。2021年12月14日にトヨタはBEV(バッテリーEV)の新戦略を発表、全16車種におよぶ新型BEVを並べて披露しました。

それまでのトヨタは、EVシフトに積極的な姿勢を示していませんでした。その背景には、EVシフトへの課題(筆者がこれまでの記事で伝えてきた電力やインフラの問題など)と、長年内燃機関車の生産を支えてきたサプライヤーの仕事を奪う(EVは内燃機関車に比べて部品点数が圧倒的に少ない。諸説あるが、EVは2万点、ガソリン車は3万点、見方によっては10万点とも)雇用問題にも抵触しかねないことがあったと推測されます。

この発表は各方面で反響がありました。筆者も、ついに巨人トヨタが動いたかと驚きながらこの発表を見ていたものでした。

しかし、この発表会の豊田章男社長のスピーチでは、電動車は使うエネルギーによって、CO2を減らす「カーボン リデュース ビークル」とクリーンなエネルギーを使ってCO2排出をゼロにする「カーボン ニュートラル ビークル」の2種類があることが伝えられ、電動車でもクリーンなエネルギーでなければ、CO2排出がゼロにならないことが強調されていました。

水素エンジンでモータースポーツに進出

2021年「スーパー耐久シリーズ」では、水素エンジンを搭載したカローラスポーツで参戦し、注目を集めていました。

トヨタで水素車といえば、MIRAIがありますが、これは水素を燃料として電力をつくり、モーターで駆動する燃料電池車「FCV」ですが、水素エンジンカローラスポーツは、水素をガソリンと同じように内燃機関で燃やして走るクルマです。

ガソリンの代わりに水素が燃料となるエンジンなら、排気ガスは水しか出てこないCO2排出ゼロのクリーンなクルマとなります(燃料の水素は、石油から作らず、海水などクリーンなものから作らないといけませんが)。

これについてトヨタは、カーボンゼロへの選択肢を増やすことの一貫としています。逆にいえば、BEVだけがカーボンゼロへの選択肢ではない、という考え方を示しているといえます。

トヨタは「EVも本気」「水素も本気」ですが、この先ほかの何かのカーボンゼロへの選択肢を提案してくるかもしれません。

マツダはEVシフトへは後ろ向き??

マツダ初となる量産EV「MX-30」を2019年10月に開催された東京モーターショーで世界初公開しました。しかし、日本市場で最初に販売されたのは、2.0Lガソリンエンジンのマイルドハイブリッドを搭載したモデルでした。このとき、リーク情報はまったくなく(たいてい、どこかの媒体が新型発売のリーク情報を流すのですが……)、MX-30にガソリン車があることも寝耳に水でした。

日本市場でMX-30をEVより先にガソリン・マイルドハイブリッドを発売した理由についてマツダは、日本の発電は石油・石炭の比率が高く、CO2排出量削減の効果が少ないことを伝えていました。

その後、マツダは新しい「ラージ商品群」を発表、2023年までに4車種をグローバルで導入することが伝えられました。このラージ商品群にはPHEVも含まれますが、EVシフトに逆行するかのような、新開発の直列6気筒エンジンを搭載した後輪駆動車です。

日本市場では、新世代ラージ商品群第1弾「CX-60」が、2022年9月15日に発売されました。マツダはなぜ今このEVシフトのタイミングで新しい内燃機関車を出したかについて、バイオ燃料でカーボンゼロを達成する選択肢もあることを伝えていました。

マツダは自動車メーカーの中では小さい企業になります。BEVのマーケットでは、BYDを筆頭に中国の新興EVメーカーが急進中です。2022年6月にBYDは、自動車メーカー時価総額ランキング第3位となっています。

テスラもそうですが、BEVは後発メーカーでも十分に市場で勝てる見込みがあります。しかし、長年内燃機関車を作りつづけたメーカーが、EVシフトして市場で勝つには、資金面の体力などさまざまな課題があります。

そういった意味では、マツダが全車BEV化に進まず、バイオ燃料や合成燃料を使った内燃機関車でカーボンゼロを達成するというストーリーは、市場で勝ち残っていくものとなりそうです。筆者としては、マツダがその方向性に舵を切ったことを高く評価し、期待しています。

プレミアムブランドはEVシフトへ舵を切りやすい

ボルボは2030年までに、BEVだけのブランドになることが2021年3月に発表されました。この発表は、口先だけでなく実現可能なロードマップがありました。

ジャガー・ランドローバーは、2025年に全車EV化、メルセデス・ベンツも2030年までなどとプレミアムブランドは続々と全車EV専門ブランド化を発表しています。ヨーロッパのほとんどの自動車メーカーは、全車EV化を決めています。

そもそも、プレミアムブランドのクルマは、顧客がEVに移行しやすい土壌があります。

プレミアムブランドのクルマを買う人はたいてい自宅に充電設備を備えることができます。また、内燃機関車に比べて車両価格が高くなるEVでも、富裕層には購入を差し控える理由にならない金額増にとどまります。

例えば、200万円のガソリン車をEVにすると、ざっと300万円、約1.5倍になるといわれています。金額だけ見ると100万円の差ですが、これでは買える人が少なくなります。

いっぽう、700万円のガソリン車が900万円のEVになったとしても、買える人が少なくなるのは200万円の比ではありません。

富裕層が主要顧客となるプレミアムブランドは、全車EV化したところで、顧客が離れていかないという強みがあります。

EVシフトに積極的だったフォルクスワーゲン、CEO交代で減速するか?

2022年9月、フォルクスワーゲングループのCEO、ヘルベルト・ディース氏が退任、新しいCEOに、オリバー・ブルーメ氏が就任しました。

フォルクスワーゲンは、なぜEVシフト?源流をたどってみた【カープレミア編集長のEV談義vol.1】の記事でお伝えしていますが、EVシフトへのターニングポイント「ディーゼルゲート」を作ったといえる自動車メーカーです。

ディース氏は、ディーゼル不正事件で失墜した信用を回復すべく、EVシフトを積極的に進め、EVのソフトウェア開発の大部分を自社内で制作させるための子会社CARIADを設立しましたが、うまくいかなかった経緯があり、従業員のマネジメントにも悪い評価が目立ったということもあり、退任に追い込まれたようです。

いっぽう、ブルーメ氏は合成燃料を推してしているといわれています。それまで、EVシフト一辺倒だったフォルクスワーゲンが、トヨタのように選択肢を増やし、合成燃料内燃機関車を作る可能性が少しばかり見えてきました。

ホンダは2040年までに全車EVとFCVに。日産は明言せず。

2021年4月に、ホンダは2040年までに新車販売のすべてをBEVとFCVにする方針を打ち出しました。しかし、ジャーナリストやアナリストの中では、本当に実現可能なのか、疑問を呈する意見が散見されました。

いっぽう日産は、2021年11月に発表した長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」では、全固体電池の実用化など、EVのリーディングカンパニーらしい方針を打ち出しながらも「電動化を戦略の中核」とし、新車販売のすべてをEV化することを明らかにしていません。

スズキも全車EVの方針を打ち出しておらず、ダイハツは2021年12月に、新車販売の100%を電動化すると発表していますが、その中には内燃機関を搭載するハイブリッド車が含まれています。三菱、スバルも新車販売全車EVとする方向性を打ち出していません。

こういった状況は、日本の自動車産業EVシフトに後れをとっている、といわしめる背景となっています。しかし、充電インフラ問題、電力不足問題、電力供給のカーボンゼロ達成の課題などを考えると、筆者はEVシフトが遅れているというより、EVシフトが困難な状況だと考えています。

仮に、日本の新車販売のすべてがBEVになったとしても、EVを走らせるための電力が石油と石炭を燃やすことによって得ていては、トータルでのカーボンゼロから遠のいてしまいます。

EVシフトだけが正解ではない

自動車メーカーのEVシフトへの動向を見てみると、EVシフトだけがカーボンゼロを達成する選択肢ではないことがおわかりいただけたかと思います。

そもそも、CO2排出をなくさないと本当にダメなのか、地球温暖化になっているのか、という根本的な議論は置いておいて、人類がモビリティのあり方を考えなおして、サスティナブルなモビリティ社会をつくって後世に残さないといけない、という側面においては、カーボンゼロを達成させる意義、意味は十分にあると筆者は考えています。

その意義、意味では、EVシフトだけによらず、水素やバイオ燃料、合成燃料などさまざまな選択肢を歓迎したいですね。

次のEV談義は、「日産サクラ、ゲームチェンジャーになるか?軽EVは本当に必要なのか?」についての考察をお届けします。

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※この記事は2022年9月現在の情報に基づいて執筆しています。

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