【嶋田智之の目】究極の「気持ちいい」を堪能できる唯一無二の存在。それがシトロエンだ

クルマを選ぶ テーマ別特集

「世の中のクルマは2種類しかない。シトロエンか、それ以外か」という言葉もあるほど、独創的なクルマを作り続けるシトロエン。芸術的なデザインはもちろん、乗り心地もほかのクルマとは一線を画します。シトロエンの素晴らしさはどこにあるのか、嶋田智之さんが考察します。

シトロエンにはフツーなクルマがない!?

2CV

シトロエン、と聞いて皆さんはどんなイメージが頭の中に浮かぶでしょうか?ここ日本において昔は超マニアックなブランドだったし、今も超メジャーとまではいえない存在なので、もしかしたらご存じない人もおられるでしょう。

が、クルマにちょっとでも詳しい人なら、「あっ、あの変わったデザインのクルマばっかり取り揃えているところだね」なんて思われるかもしれません。

そうなんです。それはシトロエンのひとつの大きな特徴。現在のシトロエンのラインナップを見ても、おもしろいくらいに「まぁわりとフツーだよね」なんて思えるクルマはありません。

皆さんが一度くらいはリアルにせよ映画にせよテレビCMにせよご覧になったことがあるだろうシトロエンの名車、2CVが発表されたのは1948年。同じく初代DSが発表されたのは1955年。

シトロエンそのものはフォードのような自動車の大衆化を目指して1919年にパリで設立されたメーカーなのですが、第2次世界大戦が終わって間もないころには一風変わった大衆的とはいえないカタチのクルマを送り出していたのですね。

以来、途中で「これじゃいかん!」と思ったのか1990年代から2000年代の初頭にかけて比較的アクの薄いモデルをラインナップしていた時期はありますが、その後は「やっぱりこれじゃいかん!」と考えたのか、次第に元のフツーじゃない路線に軌道を戻し、今に至る。ざっと、そんな感じです。

ナンバーワンよりオンリーワンであることが大事

C6(2006年〜2012年)

たとえていうなら前衛芸術のよう。シトロエンのスタイリングは、そんなふうに表現されることが少なくありません。

『アヴァンギャルド(=前衛)』というフランス語は古くから知られているし、前衛芸術の柱と思しき『シュルレアリズム』は第1次大戦の後にアンドレ・ブルトンというフランス人作家から広がった文学運動・芸術運動。もうひとつの抽象絵画の初期のころの先駆者的存在のひとりにロベール・ドローネーというフランス人画家がいたりもして、そんなところから知識層がイメージを重ね合わせたのかもしれません。

いずれにしても、ナンバーワンであることよりもオンリーワンであることを重んじるような風潮のあるフランスのことですから、こうした独創性が育ってくる土壌はあったのかもしれません。

ひとたびシトロエンのファンになった人がいつまでもファンとして見つめ続けるのは、そのほかにない個性が完全に刺さっちゃって離れないから、だと思うのです。

そして、そのスタイリングデザインと並ぶ大きな特徴が、乗り心地の良さ、なのです。シトロエンのクルマたちは同じクラスのライバルたちと較べ、乗り心地の良さに関しては常に高い評価を得てき続けてきているのです。それも10年だとか20年だとかじゃなくて、遥か昔から。

シトロエンの方向性を決定づけた2CVとDS

2CV(左から2番目)とDS(右)

実際のところ、いつからそうした評価が一般的になったのか、僕は知りません。戦前のシトロエンに乗った経験がないからです。けれど、ひとつのターニングポイントになったのは、先述の2CVだったんじゃないかと考えます。

時は1935年。その2年後にシトロエンの社長に就任することになるピエール・ブーランジュが、南仏の農民たちの輸送手段が手押し車や牛車といった前世紀と変わらない実態を目の当たりにして農民向けの小型自動車を提案。その開発条件の中に『籠いっぱいの生玉子を載せて荒れた農道を走ってひとつも割れないくらい乗り心地がいいこと』というものがあったのです。

そのプロジェクトは第2次大戦で中断した時期もありましたが、結果、機械式ながらアイデア賞ものの構造から驚くほどたっぷり伸び縮みするサスペンションと簡素だけれどハンモックみたいに優しく身体になじむシートで、目を見開いちゃうほどの快適な乗り心地を実現したのでした。

2CVは1990年まで長生きして生産を終えましたが、さらに驚くのは、現在の小型大衆車でもこのクルマの乗り心地を超えるクルマはそうそうないということですね。

もうひとつは、初代DSでしょう。このクルマはハイドロニューマティックという、窒素ガスと油圧シリンダー/ポンプを組み合わせたサスペンションを備えていました。実はこのサスペンションはDSがデビューする1年前、1954年に15CVシスというトラクションアヴァンと呼ばれたシリーズのリアサスペンションに初めて採用されたのですが、DSではそれが4輪に行き渡っていました。

スプリングは金属バネの代わりに密封容器に閉じ込めた窒素ガス。ショックアブソーバー、つまりダンパーの代わりは、高圧でも体積が変わらないオイルの通路を全身に張りめぐらせ、その通路の途中に絞り弁を設けることで抵抗を発生させて減衰力を得る仕組み。

よくもまぁそんな複雑怪奇な仕組みを考え出して実用化したものだ、とただただ感心するしかないようなサスペンションシステムです。けれどそれだけのことはあって、DSはふんわりひたひたした夢見心地な乗り味を現実のものにしていたのです。

いうまでもなくハイドロニューマティックはその後のモデルたちにも受け継がれ、さらには電子制御が組み合わせられてハイドラクティブという名称に変更され進化を繰り返し、2017年まで採用され続けました。

『バネのシトロエン』も秀逸な乗り心地

C3

その一方でこの液体と気体のサスペンションの搭載には大きなコストとある程度以上の車体の大きさを必要としたため、ラインナップの中級から上級のモデルにしか採用されませんでした。安価で小さなモデルたちは、金属バネと筒状のダンパーです。

僕たちはそれらのクルマを総称して「バネのシトロエン」と呼んでいたのですが、実はそのバネのシトロエンも結構な乗り心地の良さを示してきていたのです。

シトロエンのエンジニアたちは代々、たとえば金属バネの硬さ、バネの伸び縮みを収束させるダンパーの減衰力、それらの組み付け方や作用のさせ方、バランスの置き方といった様々な要素を徹底的に研究してきて、そうした知見を活かしてきているのですね。

そのバネのシトロエンの乗り味に思い切り驚かされたのは、2016年に登場した3代目C3、つまり現行のC3に初めて試乗したときのことでした。

僕はそれまでにハイドロニューマティックのモデル2台を所有したことがあったのですが、その新しいほう──といっても1986年だったか87年だったかの個体ですが──のBXというクルマの乗り心地の良さに匹敵するか、もしかしたら越えたかも、と思えるほどだったのです。

またバネのシトロエンも1台所有したことがあって、そっちは1996年あたりのZXというモデルで「バネとは思えないくらい快適」と感じたものでしたが、いや、3代目C3はもう較べものにならないくらいでした。バネのシトロエンはバネのシトロエンでどんどん進化してきていて、それは今になっても歩みを止めていません。

新しいハイドロ『プログレッシブハイドローリッククッション』

C5エアクロスSUV

そして2017年、新たな『ハイドロ』が誕生します。C5エアクロスSUVから採用が始まった、プログレッシブハイドローリッククッションがそれです。

基本的には通常の金属バネと筒状ダンパーの組み合わせなのですが、そのダンパーの中にもうひとつのダンパーが仕込まれています。そのふたつのダンパーを油圧の働きを活用して2段構えで作用させることで、路面からの大きな入力にも微細な入力にもキッチリと対応して快適な乗り心地をキープしよう、という仕組みです。ハイドロニューマティックの働きをあらためて解釈しなおしたようなもの、といっていいでしょうね。油圧が重要な役割を果たすので『ハイドロ』であることには違いないし。

いや、このプログレッシブハイドローリッククッションを初体験したときには仰天しました。ふんわりひたひたのやわらかくてしなやかでどこまでもフラットな乗り味は、かなり強烈にハイドロニューマティックのそれを想起させるもの。それは凄まじく上質であり、乗り心地が「いい」ではなく、もはや乗り心地が「気持ちいい」レベルです。

といって、ドライバーがサスペンションの動きをちゃんと理解してステアリング操作をしないと揺り返しなどを起こしてしまうなどといった、ハイドロニューマティックの欠点はまったく見受けられません。しかも電子制御の助けをいっさい借りることなく、メカニカルな構造でそれらを実現していたのです。

さらにもうひとつ注目すべきは、シートでした。アドバンストコンフォートシートと名付けられたそれは、クッションの中心部に低反発効果のある高密度ウレタンを、表面にはパッド構造を持つ15mmの厚さの特別なフォームを使用した、凝った作りのもの。

ふわっやわらかな感触としっかり包み込まれるような心地良さはあるけれど、身体をしっかりとホールドしてもくれて、居心地がいいだけじゃなくて疲れ知らずだったのです。

実はC5エアクロスSUVの僕にとっての初試乗は、一発750kmほどのロングドライブだったのでした。走らせながら頭の中にあったのは、シトロエンのエンジニアたちってある種の究極的な『乗り心地オタク』なんだろうな、これほどまでに乗り心地にこだわるブランドはほかにないよな、と乗り心地の素晴らしさに端を発することばかり。完全に魅了されちゃったのです。

世界一の乗り心地はシトロエン。そう思わずにはいられない

C4(左)とë-C4(右)

今ではプログレッシブハイドローリッククッションもアドバンストコンフォートシートも、細かな改良の手が入ってさらに優れたものになっています。

先日もC5 Xで520kmほど、C4で560kmほど走る機会に恵まれたのですが、新しい分だけC5 Xの方がわずかに上だとはいえるものの、どちらも同じクラスのライバルたちとは較べたらいけないな、と感じたくらい快適でした。その程度の距離では、もちろんまったくの疲れ知らずでした。

しかも、日本へは導入待ちの段階ですが、C5 Xのプラグインハイブリッドのモデルにはプログレッシブハイドローリッククッションとアドバンストコンフォートアクティブサスペンションが組み合わせられていて、ただでさえ快適なC5 Xをさらに上回っているといえることを、僕は4月末にフランス本国で試乗してきて、体感しています。

おそらく1,000万円以下のクルマの中で、世界で最も乗り心地が素晴らしいのはシトロエン。2,000万円級のセダンであっても、たとえば636万円のC5 Xプラグインハイブリッドに匹敵するクルマは少ないんじゃないか?とすら感じています。シトロエンのボトムは276.7万円のC3ですが、500万円だとか600万円のクルマでこれに勝るモデルがいくつあることか。

とにかく快適なクルマが欲しい、身体に優しいクルマが欲しいという場合には、シトロエンを選べば間違いありません。こいつ冗談を飛ばしているだろ、とシトロエンを御存じない方の多くは思っているでしょう。

いやいや、とんでもありません。だまされたと思ってシトロエンのショールームを訪ね、自分のお目当てのクラスのクルマを試乗してみてください。その乗り心地の良さに、苦笑いさせられちゃうかもしれませんよ。

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※この記事は2022年10月現在の情報に基づいています。

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