今、1980〜90年代にデビューした旧車が密かなブームになっています。ヤングタイマー、ネオクラシックとも呼ばれる30年ほど前のクルマには、ニューモデルにはない独特な魅力があります。ただ、一口に旧車と言っても種類はさまざま。そこで、今注目のカッコいい旧車を独自目線で選んでみました。
1980〜90年代のクルマの中古車相場が高騰!
今、50代の人たちが免許を取得した頃にデビューしたモデルの人気が高まっています。中には日本だけでなく海外でも人気が高まり、日本で中古車を探すのが難しくなっているものもあります。なぜ今になって30年も前のモデルが注目されているのでしょうか。
ひとつはデビューした時は高くて買えなかったという50代以上の人たちが、子育ても終わり趣味を楽しむために購入するケース。もうひとつのケースが当時を知らない若者が現代のクルマにはない雰囲気の旧車を見て「こっちのほうがカッコいい!」と選ぶケースです。
この時代の旧車はこれからも値落ちはほとんど見込めず、相場が上昇する可能性が高くなっています。乗りたい人は早めに検討することをおすすめします。
70年代、80年代、90年代……。それぞれの時代に魅力がある!
“旧車”と聞くと、あなたはどんなクルマを思い浮かべますか? なんとなくですが、自分が子供の頃に走っていたモデルを想像するかもしれませんね。
古いクルマ=旧車の定義は曖昧ですが、デビューから25年以上経過しているものが旧車と呼ばれることが多くなります。
というのも、アメリカでは初度登録から25年以上経過したクルマはクラシックカー扱いになり、海外から輸入する際に排ガス規制などの対象から外れるからです。そして現在、スポーツカーを中心に25年以上経過したものがどんどん海外に流出するという現状があります。そのため、25年以上経過したものを旧車として扱う流れがあるのです。
つまり今40〜50代の人だと運転免許を取得した頃にデビューしたクルマがすでに旧車扱いされていたりします。
クルマにはそれぞれの時代で違ったカッコよさがあります。
70年代は小さな島国である日本が世界に打って出るために技術を磨き、80年代はバブル景気によりゴージャスなクルマが多数登場。そして90年代は日本のクルマが成熟してゆく入り口となりました。
今、注目の旧車はアウトドア系、スポーツ系、80〜90年代のムーヴメント系
製造から25年以上経過したものを旧車と定義した場合、その数は膨大なものになります。1970年代前後のものになるとすでに生産から50年経っているので、もはやヴィンテージカーの域に達していると言ってもいいでしょう。
今、一般の人でも維持していくことを考えると80年代以降のものを選ぶのが安心です。
その中から“カッコいい”という視点で選ぶと、筆者は次の3つの軸があると考えます。
『アウトドア映え系』
今、アウトドアシーンでは、旧車のクロカン4WDが人気。それも普通に乗るのではなく、ボディをアースカラーにオールペンして、顔つきもあえてクラシカルな雰囲気にする人が増えています。使い込んだ道具感を演出するために、ピカピカにするのではなくあえてサビを残したりする人もいます。
『スポーツ系』
映画『ワイルドスピード』シリーズの影響もあり、アメリカでは日本の古いスポーツカーが人気です。もちろんこれらは日本でもいまだ絶大な支持を集めています。王道スポーツカーはもちろん、MTをラインナップしたスポーツセダンも要注目! ただ、中古車相場が高騰しているので、購入時はまとまった予算が必要になるでしょう。“価格応談”の中古車も多くなっています。
『80〜90年代のムーヴメント系』
日本がバブルに沸いたこの時代は、自動車メーカーも潤沢な開発予算を投じ、これまでにないさまざまなコンセプトのモデルを世に送り出しました。中には社会現象になったモデルもあります。
旧車のカッコいいは3通りある
ここからはみなさんにおすすめしたいカッコいい旧車を紹介! 上で取り上げた3つの切り口で、80〜90年代の名車たちをピックアップしました。
それぞれ独特な世界観があるのでどれを選ぶかは悩むところですが、現代のクルマにはないカッコよさを存分に楽しんでください。
ただ、古いモデルだけに中古車の流通量は少なめ。とくに“ムーヴメント系”の中古車は全国で数台しか流通していないケースもあります。
また、旧車は全般的に相場が上昇傾向にあるので、長く悩んでいるとどんどん探しづらくなる可能性があります。欲しいモデルを決めたら、購入の決断はお早めに!
旧車の最新トレンド『アウトドア映え系』 BEST3
旧車のボディカラーや顔つきを変え、自然の中に違和感なく溶け込むようにするカスタムが流行中。現代のSUVとは一味違う、無骨な雰囲気の旧車SUVだからこそ楽しめるカッコよさです。そんな旧車SUVの人気モデルをピックアップ!
第1位「トヨタ ランドクルーザー(80系)」アウトドア系カスタムブームの牽引役
●中古車相場:170〜560万円 ●全長4820〜4970mm / 全幅1830〜1930mm / 全高1850〜1860mm
ランクルは最新モデルとなる300系がデビューし、早くも長期の納車待ちが伝えられています。同じ系譜にあった80系は1989年から1997年まで製造されたモデルです。
快適性を高めたステーションワゴン系の流れにあり、足回りがリーフスプリングからコイルスプリングに変更されたことで、先代の60系やヘビーデューティーな70系より乗り心地は大幅に向上しています。
100系以降のランクルのエクステリアはきらびやかなイメージが盛り込まれているのに対し、80系は無骨な雰囲気。そこがカッコよさのポイントです。高価格帯には丸目にカスタムした中古車が多くなっています。ノーマルを探すか、カスタム系を探すかで予算も変わってくるので、じっくり検討してみてください。
第2位「スズキ ジムニー(JA12/22型)」現行型の登場で再注目された軽SUV
●中古車相場:30〜200万円 ●全長3295mm / 全幅1395mm / 全高1670〜1700mm
2018年にデビューして現在でも多くのバックオーダーを抱えている現行型ジムニーは直線的な箱形ボディと丸目のフロントフェイスが特徴的。このデザインが人気になったことで、ジムニーの旧車の注目度が高まっています。Instagramでは若い“ジムニー女子”がオシャレにデコレートしたジムニーの写真をアップしたり。見ているだけで微笑ましくなります。
1995年に登場したJA12/JA22型から足回りがコイルスプリングに変更されてオンロードでの快適性が向上(とはいえ現代のモデルと比べるとかなりガタガタしますが……)。
林道などでタフに使われた中古車も多く流通しているため、ものによってはボディ凹みなどがある可能性もあります。ただ、それさえ“味”として捉えられる不思議な魅力があります。ただ、購入時はボディ(とくに下まわり)の腐食を要確認!
第3位「日産 テラノ(初代)」タフな四角いボディの元祖クロカン4WD
●170〜300万円 ●全長4365mm / 全幅1690mm / 全高1680mm
トヨタ ハイラックスサーフや三菱 パジェロとともに、1980〜90年代のクロカン4WDブームを支えたテラノ。ダットサンピックアップトラックベースのSUVで、2ドアと4ドアが用意されました。
直線的なボディ、角目を採用した無骨な雰囲気は、流麗なデザインが多い現代のクロスオーバーSUVの対極にあるスタイル。
流通量はかなり少なくなりましたが、それでも状態のいいものを探して長く乗りたいと思える1台です。ボディカラーをアースカラーにオールペンしたテラノはかなりいい雰囲気ですよ!
旧車にしかないカッコよさを存分に味わえる『スポーツ系』 BEST3
今は数えるほどしかない国産スポーツモデルですが、1990年代までは若者の憧れであり、多くのメーカーが魅力的なスポーツモデルを開発していました。当時憧れたけれど高くて買えなかった。でも子供の手が離れた今だからこそ乗りたい。そう思えるカッコいいクーペ&オープンをチョイスしました。
第1位「日産 シルビア(S13型)」走りとスタイルを両立したエレガントクーペ
●160〜253.3万円 ●全長4470mm / 全幅1690mm / 全高1290mm
1980年代に一世を風靡した“デートカー”と呼ばれるジャンル。文字通り、女性からの人気が高いので、女の子をデートに誘いたい男子がこぞって手に入れたカテゴリーです。当時デートカーの絶対王者だったホンダ プレリュードに対抗するため登場したのがS13型シルビアです。
スタイルのよさはもちろん、ターボ+FRという組み合わせ、扱いやすいサイズなどが受けて走り好きの人からの注目も高まりました。このS13型から最終モデルとなるS15型まで、日本はもちろん海外での人気も高くなっています。
その分ハードに扱われた個体も多く、とくにドリフトで使われたものはボディがガタガタになっているケースも……。購入時は単純に価格の安さだけでなく、ボディや機関系の状態を入念にチェックしてください。
第2位「ホンダ ビート」高級スポーツカー顔負けの軽オープン
●40〜330万円 ●全長3295mm / 全幅1395mm / 全高1175mm
1991年に登場した軽2シーターオープンのビート。エンジンを運転席後方に配置したミッドシップレイアウトで、世界初となるフルオープンモノコックボディを採用するなど、バブル絶頂期だからこそ開発できたモデルです。
フロントが13インチ、リアが14インチという前後異径タイヤを装備し、ドア後方にエアインテークが取り付けられたスタイルは軽とは思えないカッコよさ! オープン時はもちろん、幌をかけた姿も目を引くものがあります。
都会的なスタイルはもちろん、街中での速度域で存分に楽しめるのもビートならでは!
第3位「トヨタ スープラ(80系)」マッチョなアメリカンスタイルが大迫力
●330〜1180万円 ●全長4520mm / 全幅1810mm / 全高1275mm
1993年に登場した80系スープラは、日産 スカイラインGT-R、ホンダ NSX、マツダ RX-7などとハイパワー競争を繰り広げたモデル。アメリカ市場を意識したボリューム感のあるデザインが特徴的で、BMWと共同開発された現行型にも80系の面影を感じることができます。
大柄のボディとは対照的に運転席はとてもタイトで、ドライバー側に向けられた各種操作系がやる気を奮い立たせてくれます。
ここ数年は相場が高騰していて、500万円以下で手に入れるのは難しくなっています。それでも欲しいという人は車両状態をしっかり確認した上で、購入後の維持費も含めて納得できるかよく考えて購入してください。
スタイル重視で買うなら、NAエンジンのSZのほうがいいかも!
時代を動かした『80〜90年代のムーヴメント系』 BEST3
1980年代に数多く登場した、エポックメイキングなモデルたち。当時はさまざまな理由で手に入れることができなかったモデルに乗っておきたいなら今がラストチャンスかもしれません。特に注目すべきカッコいい3台をピックアップしました!
第1位「マツダ ロードスター(NA型)」ライトウェイトオープンスポーツ復活の立役者
●60〜310万円 ●全長3970mm / 全幅1675mm / 全高1235mm
1989年に登場した初代ロードスターは、オワコンと言われていた2シーターのライトウェイトオープンで登場したモデル。ロードスターの世界的な大ヒットにより、多くのメーカーが同様のコンセプトのモデルを開発したのは有名な話です。
現行モデルとなるND型までコンセプトを変えずに作り続けられていることからも、初代ロードスターの完成度がいかに高かったかがわかるはず。そんなロードスターをリトラクタブルヘッドライトで乗れるのはNA型だけ!
写真のVスペシャルや黄色いボディのJリミテッドなど多くの限定車が登場したのも特徴で、それらに的を絞って探してみるのも楽しいですよ。
第2位「トヨタ ソアラ(2代目)」ハイソカーの代名詞的存在
●120〜440万円 ●全長4675mm / 全幅1725mm / 全高1335mm
1980年代に大ブームとなったハイソカー。その中でも特に人気が高かったのがソアラでした。バブル期は「ガイシャじゃないと助手席に乗らない」と真顔で答える女の子がいましたが、そんな子もソアラならOK。このことからもソアラがいかに人気のある高級モデルだったかがわかります。
電子制御式エアサスペンション、スペースビジョンメーター、マルチコントロールパネルなど、当時のトヨタが持つ最新技術が惜しみなく投入されたモデルで、シートを始めとするインテリアもゴージャスなものが備え付けられています。
購入時は機関系や電気系部位の作動状況を確認するのをお忘れなく!
第3位「ホンダ シティ」小さくても中は広い! 元祖トールボーイ
●70〜250万円 ●全長3380〜3420mm / 全幅1570〜1625mm / 全高1460〜1570mm
手頃な値段のコンパクトカーは車内が狭い。そんな既成概念を打ち壊したのが1981年に登場したシティでした。背の高いボディにより開放的な室内空間を実現。缶ジュースを冷やせるクールポケットやカセットをしまいやすい収納など、若者をターゲットにした装備を数多く搭載。ラゲッジにピッタリ収まるバイク“モトコンポ”が同時発売されたのも当時話題になりました。
普通のハッチバックのほか、カブリオレ、ターボ、ターボII(ブルドッグ)などの派生モデルも登場。どれも当時のホンダらしい元気さに溢れたデザインをしています。
流通台数はかなり少なくなっているので、欲しい人は時間をかけてじっくり探してください。
旧車を探す上で気をつけることは?
旧車は今どきの中古車のように「別に壊れる心配なんてしないで平気」というわけにはいきません。購入時は単純な価格の安さではなくクルマの状態をしっかり見て、高くても購入後の維持が楽なものを選んだほうがいいでしょう。
また、購入後にトラブルが発生した場合に、パーツが探しやすいかも確認しておきましょう。とくに流通台数が少ないものはパーツ入手が困難なケースもあります。その場合はどんな対処をしてもらえるのか、購入時にショップと話しておくのがおすすめです。
その意味ではクルマ選び以上に購入するショップ選びが重要になります。可能な限り、欲しい車種に強いショップから購入するようにしてください。
旧車でしか味わえない世界を堪能しよう
2000年代以降はクルマの生産技術が向上したこともあり、複雑な面構成をしたモデルが多くなりました。一方、ここで紹介したモデルはどれもシンプルなデザインなのが特徴です。
その分今のクルマにはない独特な空気感があり、それが旧車のカッコよさにつながっています。
相場が上がっていますが、どれもいつまで中古車で買えるかわからないモデルばかり。興味ある人は早めに購入を検討してください。