2022年7月、9年ぶりのフルモデルチェンジを果たした、日産のミドルクラスSUV「エクストレイル」の公道試乗会に参加してきました。
新型エクストレイルは全車が新開発“夢のエンジン”「VCターボ」を組み合わせ、第2世代となったシリーズハイブリッド「e-POWER(イーパワー)」のみのラインナップになりました。今回の試乗車は、電動駆動4輪制御システム「e-4ORCE(イーフォース)」を搭載したモデルです。
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量産型世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」とは?
先に言っておきましょう。このエンジンはヤバいです。マニアックすぎます。要点だけ至極かんたんにいえば、圧縮比を連続的に可変させることができるエンジンです。
「圧縮比を変える」とは?排気量が変わっちゃう?
圧縮比とは、エンジンのシリンダーの中で混合気(燃料と空気)を圧縮する比率のことをいいます。ピストンの中に送り込まれた混合気は上昇するシリンダーによって圧縮されて、点火プラグによって火花を散らして燃焼し、シリンダーを押し下げてパワーを得るのがエンジンの仕組みです。
圧縮比を高めると、エンジンのパワーは上昇しますが、高くしすぎると高負荷時はノッキング(異常燃焼)が発生してパワーを失ってしまいます(エンジンが止まります)。
圧縮比は、エンジンのパワーと燃費を決める最も大事な数値となります。巡航時と加速時ではエンジンの負荷が変わるので、できれば、その負荷に合わせて圧縮比を変えたいところですが、ピストンとクランクシャフトがコンロッドでつながっているため変えることができません。これまでのエンジンは、圧縮比が固定されています(ミラーサイクルのように擬似的なものはありますが)。
そこで日産は、圧縮比を連続的に可変させることができたら、めちゃくちゃ効率がいいエンジンができるのではないか!と考えたのです。そのために何をしたかというと、コンロッドの長さを変えてしまえ、という荒ワザに出たのでした。
VCターボは、コンロッドをUリンクとLリンクの2つに割って、自在に長さを変えられるようにしました。さらにCリンクとAリンクおよびその2つのリンクを制御するシャフトを入れて、Aリンクにアクチュエーターを接続して、連続してピストンの上死点から下死点までの動きの範囲が変えられるようにしたのです。
こうすることにより、走行中に連続的に可変する必要なパワーに応じて、圧縮比も連続的に可変させることが実現できたのです。
試乗会の開発者との懇談の席で、VCターボのクランクシャフト部分のパーツをぐるぐると手で回しながら歩く方がいました。ちょっと声をかけて見るととてもうれしそうにそのパーツを見せ、筆者に触らせてくれました。重たかったですが、くねくねとなめらかに動いていました。開発担当者に「ピストンの下死点位置を可変させるということですよね?つまり、排気量が連続的に変わるということか?」と尋ねると、さらにうれしそうに「そうです!」と答えていただきました。
ちなみにVCターボは1998年から開発が始まったそうです。当時は量産化不可能ともいわれた「夢のエンジン」でした。
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しかし、e-POWERではVCターボエンジンは黒子に……
エンジン開発担当者には悲報だったようです。米国仕様(車名はローグ)では、e-POWERではないVCターボエンジン車がラインナップしているのですが、日本仕様はe-POWERのみです。そして、e-POWERでは「エンジン音は出すな」との開発司令が下ったそうです。
日産ノートシリーズに搭載される第2世代e-POWERは、エンジンは黒子に徹し、いつエンジンがかかったかどうかがわからないことが多い、実に優れたパワートレインです。エクストレイルでも、その良さに磨きをかけなければならない、ということは、苦労して開発したVCターボエンジンも黒子に徹しなければなりません。
試乗してわかったのですが、VCターボエンジンは高回転でとてもいい音を出します(アクセルをベタ踏みにしないと聞こえない音なので、普段の走行では聞こえない音です)。その音は、6気筒エンジンのようで、1.5L・3気筒エンジンとは思えません。
そんないいエンジンなのに、エクストレイルでは音を出すなといわれた開発者の悶絶が想像できました。
e-4ORCEは最高のハンドリングと抜群の操縦安定性を披露
e-4ORCEは、前後2つのモーターとブレーキを統合制御し、1輪ずつ個別に駆動力を制御する電動駆動4輪制御システムです。
ノートシリーズに採用されている、e-POWER 4WDも前後2つのモーターとブレーキを使って、4輪の駆動力を制御していますが、こちらは統合制御ではなく、モーター系統とブレーキ系統のそれぞれの系統が連携していない制御方式となります。これはこれで十分、いや十二分にいいものです。筆者は、日産が主催した氷上試乗会で、ノートe-POWER 4WDは、つるんつるんに凍った女神湖の氷上をスムーズに走行するのを体験しています。
e-4ORCEの仕組みを例えるなら、畳1枚を4人が四隅を持って運ぶのと似ています。角を曲がるとき、内側の人が歩幅を狭くするなど速度を緩めるか、外側の人が歩く速度を速めるかなどして調整します。また、畳の前と後ろの人でも異なる動きをとり、4人が協力して進みます。
実際にエクストレイルでワインディングを走ってみると、最高のハンドリングと抜群の操縦安定性を体感できました。これは、本当にめちゃくちゃよかったですね。
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エクストレイルの総合評価は◯◯点!
総合評価の前に、筆者の試乗の模様を収録した動画をご覧いただくと、よりわかりやすいでしょう。
筆者が試乗したクルマを10項目×5段階で評価、★1つを2点として100点満点の総合評価として採点します。各項目、評価の理由をお伝えしますが、あくまで筆者のインプレッションによるものですので、ご参考としてご覧ください。
1 | 内外装デザイン | ★★★★ | 迫力あってかっこいいですね。ライト類へのこだわりも◎。両タイヤの外側めいっぱいまでボディ幅を広げたスタンスは存在感あり。 |
---|---|---|---|
2 | パワートレイン | ★★★★★ | VCターボエンジンのe-POWERの良さといったら!静かで速く、運転しやすい。開発担当者への敬意もこめて星5つ。 |
3 | 足回り | ★★★★★ | これも文句なし。e-4ORCEが本当にいい仕事をする。操縦安定性の高さは乗り心地の良さにも直結。ただ、タイヤのロードノイズがちょっと気になった。 |
4 | 燃費・電費 | ★★★★★ | 走りの良さと燃費を両立とはまさにこのこと。 |
5 | 居住性 | ★★★★ | 2列シート車でも後席がスライド&リクライニングするのは◎。室内は広く快適。 |
6 | 装備・使い勝手 | ★★★★ | 十分な装備で不足は感じなかった。長時間乗ったら何かでてくるかも。ドアの開閉角度が90°と大きいのは使いやすい。 |
7 | 安全装備・運転支援 | ★★★★★ | プロパイロット2.0は採用されていないが、熟成された運転支援システムで長時間ドライブは楽だろう。先進運転支援技術は電動車と相性が元々良い。 |
8 | 価格 | ★★★★★ | VCターボエンジンのe-POWERで、e-4ORCEをつけて、450万円は安い! |
9 | 乗りやすさ | ★★★★★ | 運転しやすいが、「乗りやすさ」の視点では突出したものがなかった。が、悪い意味ではない。 |
10 | クルマの愉しさ | ★★★★★ | メカニズムだけで飯5杯くらいおかわりができる時点で、もうそのクルマは愉しい。実際乗っても楽しかった。 |
総合評価は94点!
高得点です。長距離を走っていない、試乗会の限られた時間での評価ですが、日常生活からクルマでの旅行まで、新型エクストレイルなら幸せなカーライフが送れると思います。おすすめします。
日産 エクストレイル試乗車のスペック・価格
グレード:G e-4ORCE
車両価格:449万9,000円
全長:4,660mm
全幅:1,840mm
全高:1,720mm
ホイールベース:2,705mm
車両重量:1,880kg
発電用エンジン:直列3気筒1.5L VCターボ
∟最高出力:106kW(144PS)/4,400-5,000rpm
∟最大トルク:250N・m/2,400-4,000rpm
フロントモーター
∟最高出力:150kW(204PS)/4,501-7,422rpm
∟最大トルク:330N・m/0-3,505rpm
リアモーター
∟最高出力:100kW(136PS)/4,897-9,504rpm
∟最大トルク:195N・m//0-4,897rpm
WLTCモード燃費:18.3km/L
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(文・撮影:宇野 智)
※この記事は2022年9月現在の情報に基づいています。