【嶋田智之の目】日産 サクラと三菱 eKクロスEVに乗って感じた、日本に必要なシティコミューターの姿

クルマを選ぶ テーマ別特集

満を持して登場した実質100万円台で購入できる軽EV、日産 サクラと三菱 eKクロスEVに嶋田智之氏が試乗。EVというと一充電でどれだけ走れるかに注目が集まりますが、それとは違う日本で求められるEVのあり方を考察しました。

EVシティコミューターに大切なのは、割り切り?

しばらく前に、シトロエン アミという小さな電気自動車にまつわるコラムを書かせていただきました。全長2.5m足らず、横幅1.5m足らずの、フランス製の妙ちくりんなカタチをした2人乗りのシティコミューターです。

そのコラムの中で、僕は「見るからに楽しげなクルマを街中でたくさん見かけるようになったら、きっと歩いている人も気持ちが自然と上がるはず」とデザインを賞賛し、さらに「クイッと気持ちをつかんでくれる小さな電気自動車がかなり少ないことがちょっと残念」とも記しているのですが、それと同じくらい伝えたかったのは、一緒に紹介したホンダのHonda eやフィアット500eを引き合いに出した「日常的に、1日200kmも走りますか?」「日常的に、1日250kmも走りますか?」ということ。

シトロエン アミ

アミにいたっては、満充電でも最大70kmの距離しか走れません。ただし、現地の標準的な220Vのソケットを使って約3時間で満充電になるそうです。パリなど都市部の充電環境がかなり整っているということもあるのですが、現地の人たちはその航続可能距離と充電時間をうまくやりくりして、生活の中に取り込んでいます。

普通の自動車とは異なる“クワドリシクル”というカテゴリーの超小型車両ではありますが、大手の自動車メーカーが設計・開発・製造までを行うアヴァンギャルドなデザインが施されたクルマが、6,000ユーロ(約80万円)というバーゲンプライスで買えるわけです。

ルノー トゥイジ―

クワドリシクルは昔から存在していたカテゴリーで、近年ではルノー トゥイジーがそうであるようにデザインコンシャスなモデルが増えたこと、原動機にバッテリーとモーターを使う超小型EVといえるモデルは都市部での乗り入れ規制の対象外であるため利便性が高いことなどから、近年では以前より大きな注目を集めています。

アミが人気者となり、50台限定で発売された特別仕様がたった18分で売り切れたというのも、不思議じゃありません。

話が少し横道にそれちゃいましたが、何が言いたいのか。要はその“割り切り”こそが大切なんじゃないか?ということなのです。

EVも基本、バッテリーを大きくすればするほど航続可能距離は伸びますし、高性能になっていきます。走らせてみると、とても楽しかったりします。けれど、その分だけ車体も大きくせざるを得ないし、価格だって跳ね上がります。それに、日本が外出先で思い立ったときにすぐ急速充電できるような環境になるのは、まだまだ先のことでしょう。ICE(内燃エンジン)で走るクルマとバッテリー+モーターで走るクルマは、できることがものすごく共通しているけれど別モノだと考えるべきなのです。

そう考えると、シティコミューターとしての存在意義や楽しさをバッテリーとモーターでさらに高いところに押し上げたアミのようなクルマは、EVとしてのひとつの正解であるように思えてなりません。

サクラとeKクロスEVは、現在考えられる最も意義深いEVだ

日産 サクラ

三菱 eKクロスEV

と、ここまでが異様に長いイントロで、ようやく今回の主役が登場します。5月に発表された日産 サクラ、三菱 eKクロスEVという軽自動車のEVです。

このメーカー違いの姉妹車は、実にすっきりと、それはもう爽やかなくらいに気持ちいい割り切りで作られたEVなのです。個人的には「現在考えられる最も意義深いEVなんじゃないか?」と思えるくらい。

サクラとeKクロスEVは、どちらも古くからEVを本格的に研究し、カタチにしてきた、日産と三菱の協業から生まれたモデルです。簡単に言うなら、これまで築いてきた知見や技術、コンポーネントやパーツなど、互いが持っているいいモノを出し合って作り上げた、ということですね。

日産 サクラ

三菱 eKクロスEV

日産はデイズ、三菱はeKクロスをベースにしていることもあって、基本の骨格は一緒ながら、スタイリングやインテリアなどのデザイン、クルマに込めたコンセプトなどは違っています。様々なメディアで細かな相違点などが紹介されているのでここでは述べませんが、街なか試乗と短距離の高速道路試乗をしてみた限りでは乗り味にはっきりとした違いは感じられなかったので、そのあたりはお好みで、とだけお伝えしておきましょう。

乗ってみて大きな違いが感じられなかったということからも察していただけるかと思いますが、パワートレーンは共通です。総電力量20kWhのリチウムイオンバッテリーパックを床下に敷き、フロントに備わるモーターで動力を路面に伝達。

最高出力は軽自動車の自主規制で47kW(64ps)、最大トルクは195Nm(19.9kgm)。トルクは軽自動車カテゴリー最強どころか、ガソリンエンジンの自然吸気1.8〜2リッター級に相当する数値をマークしています。これはバッテリーとモーターで走るクルマの大きなアドバンテージですね。

日産 サクラ

航続可能距離180kmでも、大半の人は十分

三菱 eKクロスEV

一方でEVのディスアドバンテージと見られがちな航続可能距離と充電時間ですが、ここが割り切りどころです。

航続可能距離はWLTCモードで最大180kmとされていますから、乗り方にもよりますが、実質的には130〜140kmといったところでしょう。充電時間は200Vの普通充電で100%までおよそ8時間、急速充電で80%までおよそ40分とされています。

日産自動車のデータによれば、自動車ユーザーの53%が1日あたりの走行距離は30km以内、それも含めた84%が100km以内ということですが、さて、あなたの日常的なライフスタイルから考えてみて、いかがでしょうか?

もちろんたまには遠出をすることもあるでしょうからそうしたときには工夫が必要ですけれど、サクラとeKクロスEVの航続可能距離、意外とあなたの日々の暮らしにマッチしていたりはしませんか?

自宅に200Vの電源さえあれば、仮に1日30km程度の走行なら3〜4日に1回、ひと晩かけて充電すればいいだけです。もちろんガソリンスタンドに寄る必要もありません。雑多な日常生活のパートナーとして、充分に役立ってくれるとは思いませんか?

居住空間は普通の軽自動車と変わらない

日産 サクラ

実はこの割り切り、軽自動車であるがゆえ、という部分もなきにしもあらずだと思うのです。軽自動車のユーザーの多くは買い物や送り迎え、通勤などがメインで、長距離を走ることが少ないという特性のようなものもあるのですが、何よりも軽自動車規定で定められた車体のサイズ。全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0mという限られたサイズに大量のバッテリーを積むこと自体が、物理的に困難なのです。

バッテリーを積むことで室内の居住空間を犠牲にするのは本末転倒ですから、サクラとeKクロスEVはフロアの下のセンタートンネルにあたる部分に高さを自由に変えられるスタック(=小さな電池をまとめたもの)を可能な限り詰め込んだ、細長いバッテリーパックを搭載しています。その結果として、WLTCモード最大180kmという数値が確保できたわけですね。

この独自設計のバッテリーパックのおかげで、ベースとなったICE搭載軽自動車と変わらない居住空間をキープできています。乗り込んでみても、床が高くて足が窮屈なんてことはまったくありません。大人4人が楽に座れるスペースがあるあたり、日本の軽自動車のスペース効率はものすごいのだな、なんてあらためて感心させられます。

軽自動車の概念を覆す走りの良さ

三菱 eKクロスEV

もうひとつは、走りのバランスのよさです。重いモノが車体のセンターに低くマウントされ、サスペンションなどの味つけもそれにアジャストしているため、ベースとなったICE搭載モデルよりも素直に気持ちよく曲がるし、走行時の安定感も段違いによくなっている印象です。さらには重量増の唯一のメリットと言える、足元がバタつかない乗り心地のよさ。それにモーター駆動の滑らかさと力強さが綺麗に融合しているのです。

加速力は、軽自動車という枠を軽々と越えた強力さ。最終的な速度の伸びこそガソリンエンジンの660ccターボに譲りますが、交差点からのゼロスタートではスポーツ系の軽自動車は言うに及ばず、ちょっとした普通乗用車ですら置き去りにできるレベルです。高速道路の巡航でも、なにひとつストレスもありません。

しかもアクセルペダルの踏み加減だけでスタートから停止直前までをまかなえてしまう、便利なワンペダルドライブだって可能です。走っている限りは自分が乗っているクルマが軽自動車枠にあることを、少しばかりも意識させられることがありません。

日産 サクラ

三菱 eKクロスEV

室内の静粛性もそう。インテリアの仕立てのクオリティの高さもそう。ADAS(=運転支援システム)の充実ぶりもそう。“軽だから”というような作り手のある種の諦めみたいなものも、“軽だから”と誰かに見下されるような筋合いも、何ひとつないのです。ありとあらゆるところが好印象。サクラとeKクロスEVは、一般的な軽自動車の概念を軽々越えちゃっているのです。満足度、途方もなく高いのですよ。

今、地方の町に必要なのは “マイホームタウン”コミューター

ふと考えました。このクルマは都市部のシティコミューターとしてもものすごく優秀といえるけれど、田舎でもものすごく威力を発揮してくれる存在なんじゃないかな、と。日本には──どこの国もそうなんでしょうけれど──過疎とまではいかなくても暮らしが便利とはいえない田舎町、村、集落というのがたくさんあります。

そうしたエリアではガソリンスタンドがどんどん減っていて、燃料を入れるために10km先まで走るなんてケースだってあるわけです。でも、ガソリンスタンドがなくたって家に電気は来ているでしょ?

僕の実家のある埼玉の田舎の町もそうなのですが、お年寄りが「小さくて楽だし、そんなに遠くまではいかないから」という理由で軽自動車に乗り換えるケースが多く、日々の営みのためにチョイ乗りに次ぐチョイ乗りをしつつ、たまに少し離れた市で暮らしている孫に会いに行く、という乗り方をしていたりもします。

サクラとeKクロスEVは、日本各地あちこちにあるそうした暮らしを支えるのにも、ドンピシャでマッチすると思うのです。まさに“シティ”コミューターならぬ、“マイホームタウン”コミューターとして。

このクルマがすべてのドライバーのニーズを満たすとは思っていません。趣味性の高いクルマであるとも思っていません。でも、“必要だから”クルマを購入して暮らしの中で使っている人たちの大半のニーズを、かなりいいカタチで満たしてくれるんじゃないかな? という確信めいた気持ちは持っています。僕のおふくろが今もクルマを運転しているのだとしたら買って贈りたい、とすら思った試乗でした。だって、補助金を考えたら実質200万円以下という、ICE搭載軽自動車とそれほど変わらない金額で買えるんですから……。

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この記事は2022年8月現在の情報に基づいています。

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