【シトロエン C5 X 新型試乗】このクルマは何かのクルマと比較しちゃいけない

クルマを選ぶ 試乗記

2022年8月29日に国内発売されたシトロエン「C5 X(シー・ファイブ・エックス)」。本国フランスで発表されたときから、注目していたシトロエンファンが無数にいたと聞きます。今回の試乗は、C5 Xの始祖となる「CX」を2台乗り継いだという元オーナーで、足回りのプロにも乗っていただき、感想を聞いてみました。

「シトロエン C5 X」というクルマについて

シトロエンは、数あるクルマのメーカーの中で最も個性的」と書いて異論を唱える方は少ないのではないでしょうか。

シトロエンとはどういうブランドなのか、について書き始めると1記事では収まりきらないので、一言で筆者なりに表現してみるなら「独創的で先進的」となりましょう。

シトロエン CX

シトロエン C5 X

シトロエンの歴史の始まりは、1919年。丸っと100年の歴史があります。創業者は、アンドレ・シトロエン。1914年から始まった第一次世界大戦の最中に、現在に続くブランドロゴのモチーフとなっているダブルヘリカルギア(やまば歯車)と砲弾の生産で財をなしたアンドレ・シトロエンが、終戦時に砲弾生産の替わりに大衆向けの量産車を製造することにし、誕生したのがシトロエン車の初号機「10HP タイプA」でした。こういう歴史の始まりからしてワクワクしますよね。

その後、量産車世界初のFF(フロントエンジン・フロントドライブ=前輪駆動)を採用、また、クラシック・シトロエンから近年まで採用され続けたエア・スプリングと油圧制御を組み合わせ、油圧は車高調整やパワステ、クラッチ・ギアチェンジなど様々な操作にも及んだハイドロニューマチック、通称ハイドロを採用したりと、先進的で独創的な技術を無数に開発し、世界中の自動車メーカーをも驚かせたのがシトロエンです。

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シトロエン CX

シトロエン C5 X

C5 Xのデザイン的な源流はCX。宇宙船のようなスタイルとハイドロニューマチックで一世を風靡したDSの後継車として1974年にデビューした、シトロエンのフラッグシップとなる、全長4.63mのファストバックタイプの4ドア車でした。生産は1991年までの17年と長く続き、総生産台数は約117万台と商業的にも大成功を収めたクルマでした。

日本へは西武自動車が正規輸入。当時はメルセデス・ベンツ Eクラス、BMW 5シリーズなどと同じような価格帯であったことから、シトロエンに高級車のイメージをもつ人が少なくありませんでしたが、そうではありません。欧州では大衆車メーカーで、かつてはフランスで最もシェアを握っていたこともありました。

ほかにもC5 Xを語る上でお伝えしたいことがありますが、ここまでにしますね。

このクルマは何かのクルマと比較しちゃいけない

C5 Xで都内を走り、高速道路に乗り、山道を走り……と様々なシチュエーションで走ってみました。

どこを走っても、かつての“魔法の絨毯”と形容されたハイドロの現代解釈版とされる「PHC=プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」がしなやかな足と、細かい衝撃を皆無といっても過言ではないほど吸収してくれるおかげで、快適そのもの。ただ、シトロエンが「アドバンストコンフォート アクティブサスペンション」と名付けた最新の電制サスが、往年のハイドロの乗り味を再現しているかどうかは別。

リアサスペンション。いかにもストロークが長そうなコイルスプリング。実際に足は長い。スプリングの左側のショックアブソーバーがPHC。

C5 Xは、フラッグシップモデルらしからぬトーションビームのリアサスというのもシトロエンらしい。トーションビームはコストが安い半独立懸架。普通はマルチリンクでしょ、となるところ、シトロエンはトーションビームです。ヒエラルキーでいえば、格下となるトーションビームですが、C5 Xはそんなことを感じさせません。

CXのシートはフカフカだったが、C5 Xはしっかりとした座面。シトロエン車にしてはやや硬め。現行モデルでは、C5 エアクロスSUVのほうがシートがやわらかいと感じた。

後席。前後・左右方向は広い。頭上空間がやや狭く感じたのは、ボディデザインを優先させたためと解釈した。

試乗する距離が伸びて、一通りのインプレッションを動画に収めた後で気が付いたのは、「C5 Xって、ほかのクルマと比べて語るもんじゃない」ということ。

車両価格やボディサイズからしても、適切なライバル車が見当たりません。セグメントでいえば、Dセグになり、メルセデス・ベンツ Cクラス、BMW 3シリーズ、アウディ A4あたりとなりますが、車両価格帯は、C5 Xのほうが下になります。C5 Xで最も高いのが、PHEVの636万円、ガソリン車では484万円、530万円の合計3グレード構成。Cクラスで最も安いfグレードで596万円。

エンジンは、プジョー 508やDS 7、DS 9、シトロエン C5 エアクロスSUVなど、旧PSAのDセグガソリン車に搭載されるダウンサイジングターボの、1.6L Pure Techと、これとモーターを組み合わせたPHEVというラインナップ。

シトロエン車共通のデザイン。豪華さよりデザイン性を重視。

試乗したガソリン車の最高出力は180PS、最大トルクは250N・mと平凡なスペックで、トランスミッションはアイシン製の8速AT。特段に速いパワートレインではありません。旧PSAの同じエンジンを積んだほかのモデルもそうですが、必要にして十分なパワーで、いざというときにアクセルを床まで踏み込めば、そこそこ速い。合理主義的なフランス人らしいパワートレイン。

シトロエンの歴史を振り返ってみても、特にいいエンジンはなかったような気がします。エンジンではなく、デザインや足回りを中心とした技術が突出したブランドのシトロエン。

言えるのは、C5 Xというクルマは、デザインだけに惚れて買ってよし、ということ。アバンギャルドな最新のシトロエンのフラッグシップに乗れるという自己満足だけでも幸せではありませんか。

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足回りのプロも2台乗り継いシトロエンCXと比べると

軽バン・軽トラのリフトアップの効果と注意点とは?実際に“チョイ上げ”してみた【編集長が車柱!自腹散財記 vol.3】」で紹介した、リフトアップスプリングを開発・販売するフォレストオートの代表、戸森さんは、無数のクルマ、特に輸入車を乗り継いでこられたとのこと。その中で、最も乗り心地の点で印象に残ったクルマは何かと尋ねたら、シトロエン CXで2台も乗り継いだそう。これまでに乗った無数のクルマで体感した足回りの良し悪しが、リフトアップスプリングの開発の元となっていたと語っていました。

CXは、全長4,630mmに対して2,845mmというロングホイールベースでハイドロと相まった極上の乗り心地が特長。また、モノコック構造ではなく、フレームにハイドロを組み合わせている点も、独特の乗り心地を強調しているともいえるクルマです。そんなCXと比べるとC5 Xは同じようにソフトな乗り心地ですが、揺れの収束感などは異なります。操縦安定性などとのバランスという点ではC5 Xに軍配が上がりますが、CXのハイドロ独特の乗り心地はこれはこれで今も魅力的です。

【総合評価】筆者独断と偏見によるC5 Xの評価は●点!

筆者が試乗したクルマを、10項目×5段階で評価、★1個を2点として100点満点の総合評価として採点します。各項目、評価の理由をお伝えしますが、あくまで筆者のインプレッションによるものですので、ご参考としてご覧ください。

No. 項目 評価ポイント
1 内外装デザイン デザインの良さ、ボディカラーやインテリアカラーのバリエーションなどを評価
2 エンジン・トランスミッション パワートレインの良し悪しを評価
3 足回り 乗り心地の良さ、操縦安定性などを評価
4 燃費・電費 燃費、電費を評価
5 居住性 室内空間の広さ、静粛性などの快適性を評価
6 装備・使い勝手 装備の充実度、使い勝手の良さを評価
7 安全装備・運転支援 予防安全技術、運転支援システムなどの先進技術装備を評価
8 価格 コストパフォーマンスの良さ、お買い得感を評価
9 乗りやすさ 小回りが効くなどの取り回し性の良さ、普段使いでの運転のしやすさなどを評価。
10 クルマの愉しさ スペックを考慮しないで、純粋にクルマを所有するよろこびや、ドライビング・プレジャー(走る愉しさ)を筆者の独断と偏見で評価

筆者の評価は80点!

好みが分かれるクルマ、万人受けするクルマではないことを念頭においてご覧ください。この記事を読んでお気付きになられた方がいらっしゃるかと思いますが、筆者はシトロエンが好きです。バイアスかかった評価ですが、正直にいきたいので。

試乗車のスペック

シトロエン C5 X
グレード:SHINE PACK
全長・全幅・全高:4,805・1,865・1,490(mm)
エンジン:直列4気筒1.6L“Pure Tech”ガソリンターボ
∟最高出力 180PS/5,500rpm
∟最大トルク 250N・m/1,650rpm
トランスミッション:8速AT
燃料:プレミアムガソリン

 1 内外装デザイン ★★★★★ 堂々とのびのびとしたシトロエンのフラッグシップたるデザイン。フロントマスクのデザインは好みが分かれるところ。筆者の独断と偏見での評価なので満点。
2 パワートレイン ★★★ 必要にして十分。試乗したガソリン車ではもうちょっとパワーがあってもいいかなとは思う。力不足が気になるなら、PHEVがおすすめ。
3 足回り ★★★★★ ハイドロの復刻版というより、最新のシトロエンの技術が詰まった足回りと解釈したい。乗り心地はとても良い。ただ、ソフトな乗り心地が苦手な方にはおすすめしない。
4 燃費・電費 ★★★ 高速5割・郊外3割・市街地2割のトータル約400kmの走行で15.6km/Lだった。ボディサイズと純ガソリン車であることを考えれば悪くはない。
5 居住性 ★★★★ ボディサイズが大きいだけあって広い。ただ頭上空間はもう少しあっても良かったと思ったが、デザインと居住性の最大公約数でこの室内空間になったと考えよう。
6 装備・使い勝手 ★★★ 一通りのものは備えているが、合理主義的なフランス人の設計。フラッグシップといえども豪華絢爛な装備はない。センターコンソールやディスプレイの操作性に優れるとは言い難いがすぐに慣れて不便はない。
7 安全装備・運転支援 ★★★★★ これはしっかりと付いています。旧PSAのハンドル操作支援は、車線の間のどの部分で走るかを任意で選べ、お行儀も良い。
8 価格 ★★★★ ライバル車と比較できないが、まあいい値付けでは?
9 乗りやすさ ★★★ 日本の道路事情ではやや大ぶりなボディサイズ。運転はしやすいが、狭い道・駐車場ではちょっと気を使う。
10 クルマの愉しさ ★★★★★ 走りの愉しさではなく、クルマとしての愉しさは十二分にある。

今回の撮影のため特別にスタジオを提供いただいたのは、撮影機材商社のアガイ商事さん。スタジオは「i-studio川越」。筆者の希望でbroncolorのパラ330をぜいたくに使用させてくれました。どうもありがとうございました。

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(撮影・文:宇野 智)
※この記事は、2022年11月時点での情報で執筆しています

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