【嶋田智之の目】新型ルノー カングー登場で注目されるフレンチMPVの世界

クルマを選ぶ テーマ別特集

おしゃれにアウトドアを楽しむ人や、日々の暮らしに自分らしさを求める人などから人気があるルノー カングー。そのカングーが3代目にフルモデルチェンジしました。日本でも爆発的にヒットしていることから2019年にはプジョーとシトロエンもMPV(=マルチパーパスヴィークル)を日本に導入。それぞれが独自の世界観を提示しています。そんなフレンチMPVの世界に嶋田さんが切り込みます!

ヨーロッパでは、小型貨物をベースにしたMPVが大人気!

 

家族そろって楽しい日々を過ごすことのできるクルマ、あるいは人も荷物もフルに詰め込んで遊びに出掛けられるような便利なクルマ。となれば、人気のSUVか安定のミニバンか、ということになるでしょう。けれど、もうひとつ有力なカテゴリーのクルマたちが存在することを、忘れていたりはしませんか? そう、小型MPVです。

日本車でもトヨタ シエンタやホンダ フリードなどがなかなかの人気を見せているのですが、実は最近このカテゴリーの日本市場の中で、フレンチMPVが静かに熱い戦いを繰り広げているのをご存じでしょうか?

そもそもこのタイプのクルマはヨーロッパ発。ミニバンのような完全な商用貨物車をベースにするのではなく、乗用車の運転席あたりから後ろを大きな荷箱に置き換えた、『フルゴネット』と呼ばれたクルマたちがルーツです。

フルゴネットはフランス語の『Fourgonnette』で、そのまま小型貨物車という意味なのですが、あくまでも乗用車ベースなので運転感覚は乗用車そのもの。重心もキャブオーバー型の貨物車より低いため、操縦安定性なども乗用車に近い、機動力が高いなどのメリットがあって、彼の地では長らくポピュラーな存在でした。

特にフランスでは1951年に登場したシトロエン 2CVをベースにしたフルゴネット、1961年からのルノー 4をベースにしたフルゴネットなどは、それぞれ軽く25年以上も生産されたこともあって、パリの街中を撮ったスナップなどにも写り込んでいたことが多く、日本でもよく知られる存在でした。

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新型ルノー カングーがいよいよ日本に上陸!

そのフルゴネットをうまい具合に発展させてきたのはルノーだった、といっていいかもしれません。1950年には第2次世界大戦前から作られていたジュヴァキャトルというモデルの商用バンをベースにしたステーションワゴンを発売。1997年に発表したカングーには完全な乗用モデルを設定と、先鞭をつけてきたようなところがあるのです。

特にカングーは欧州でも乗用モデルの比率が高く、日本でも初代と2代目を合わせて3万台以上の販売をマークする人気車種となり、今やこのカテゴリーのベンチマーク的存在になっているといっても過言ではありません。

そのカングーは2020年にフルモデルチェンジが行われていて、昨年の秋、いよいよ3代目となるモデルが日本でもお披露目されました。そして年明け早々、カングーのフォロワーとして2019年から日本市場に導入され、カングーとそれぞれ異なる個性が支持されているプジョー リフターとシトロエン ベルランゴに、従来の5人乗りに加え、3列目シートを備える7人乗りが追加されました。リフター・ロングとベルランゴ・ロングです。おかげでここ数ヵ月の間にフレンチMPVがメディアの話題になることもグッと増え、一気に盛り上がりを見せている、というわけなのです。

それぞれのモデルを、少々駆け足気味になるかもしれませんが、見ていくことにしましょう。

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居住性が一層向上したカングー

3代目となった新型ルノー カングーは、実は上陸より前から話題になることが多かったのでした。理由は明白。初代、2代目と継承してきたどこかニヤニヤしたような愛らしくまろやかな雰囲気の顔つきが、キュッと引き締まったような大人びたモノに変わってしまったこと。そして初代から2代目のときに拡大されたボディサイズが、この3代目でまたしても大きくなってしまったこと。ファンのあいだでは「カングーらしさが薄まっちゃったんじゃないか?」と心配する声が少なくなかったのです。

実際に試乗をすませているのですが、結論から申し上げると心配御無用、これまでのカングーのテイストを巧みに残しながら、飛躍的といっていいくらいの進化を遂げています。

たしかに顔つきはキリッとした感じになりました。が、写真で見て感じたほどの精悍さのようなものはあまりなく、これまでの流れを受け継いだ穏やかで優しげな表情。眺めているうちに「どこからどうみてもカングーでしょ」という気持ちになってきます。

たしかにサイズは大きくなりました。全長4,490mm、全幅1,880mm、全高1,810mm。これは2代目より210mm長く、30mmワイドという数値です。ホイールベースは2,715mmで、これは15mm長い計算。

ところが走らせてみると、結構タイトな道にまですべり込んでみたりしたのですが、大きくなったのを意識させられることがまったくといっていいくらいありませんでした。もちろん長さは気にする必要があるのでしょうが、片側15mmの横幅拡大は、普通に走っている限り運転感覚的にはそう大きな違いに感じられることはないものです。またカングー特有の四隅の見切りのよさを受け継いでいることも大きいかもしれません。

サイズの拡大は、当然ながらカングーのユーティリティを底上げすることにつながっていました。タイヤハウスのでっぱりがないラゲッジスペースは元々使いやすさに定評があったわけですが、新型では荷室が縦方向に110mm長くなり、容量は通常時で775リッター、リアシートをフラットにすれば2,800リッターと、それぞれ115リッター、132リッターも広くなっています。3座独立式のリアシートに座っても、とりわけ膝まわりのスペースの余裕が大きくなっていて、居住性がよくなっていることもわかります。

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パワーユニットはガソリンとディーゼルの2本立て

肝心の走りはどうなのか。カングーは初代も2代目も、背の高いユーモラスなスタイリングからは想像できない、元気のいい走りと絶妙な曲がりっぷりが楽しいクルマでした。そのベクトルに変わりはありません。というか、むしろここはかなり大きく進化したところです。

パワーユニットはガソリンとディーゼルの2本立てなのですが、これ、どちらを選ぶべきか悩んでしまうほどでした。それぞれがそれぞれにいいのです。ガソリンエンジンはルーテシアなどに積まれているものと同じ1.3リッター直噴ターボ。131ps/5,000rpm、240Nm/1,600rpmです。低回転域からしっかりしたトルクを発生する扱いやすさを持ちながら、俊敏かつ軽快に回転を上げていく、伸びのいい爽快さが印象的でした。

ディーゼルのほうは2代目カングーの最後の限定車に搭載されていた、1.5リッターのターボディーゼル。116ps/3,750rpm、270Nm/1,750rpmです。こちらはゼロスタートの段階からドッシリしたトルクの力強さを感じさせてくれるフィーリングで、ぶん回さなくても望んだスピードを得ることができるのですが、意外や軽やかに吹け上がるので、回していく楽しみも味わえます。ブンブン回せる軽快なガソリンエンジンに対して、力強さで速度を手に入れていくディーゼルエンジン、という感じでしょうか。

そのエンジンの違いは、そのままクルマの全体の味の違いに結びついています。3代目カングーは車体の骨格がこれまで以上にしっかり作られていて、サスペンションがさらに仕事をしやすい余地を手に入れたためか、先代までよりも足腰は少し引き締められたような気がしないでもないのに、しっかりと伸びたり縮んだりする印象。だから曲がるときの車体の傾き具合は少ないのに、乗り心地そのものはとても快適なのです。深く車体を傾かせながら腰を粘らせて曲がっていくような、先代までの曲がり方とはちょっと違います。

またステアリングギア比が速められていることもあって、姿に似合わないほど気持ちよく素早くコーナーを駆け抜けてくれます。基本、どちらもよく曲がってくれて、走らせるのが楽しいクルマなのです。が、ガソリンとディーゼルではエンジンの重さが90kgほど違っていて、軽いガソリンモデルは全体的に動きが軽やか、重いディーゼルは全体的にドッシリ安定、というテイストにまとまっている印象でした。しかも、どちらも同じくらい素晴らしい。どちらを選ぶべきか悩むというのは、だからなのです。どちらを選んでもハズレはないのですけれどね。

そんなわけでコンパクトMPVとしての魅力をはっきりと高めてきている新型カングーなのですが、価格のほうもガソリン車が384万円から、ディーゼル車が419万円からと、昨今の原材料高騰のあおりもあるのか、少々お高くなっています。車格がちょっとだけ上がった、と見ていいでしょう。

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3列シート車も加わったリフターとベルランゴは、姉妹でも性格が異なる

プジョー リフター ロング

一方のプジョー リフターとシトロエン ベルランゴはブランド違いの姉妹モデルですが、同じメカニズムで構成されているというのに、プジョーはスポーティで活発、シトロエンは個性的でコンフォータブル、というブランドの基本的な方向性にそれぞれが沿っていて、乗り味が異なるのがおもしろいところ。

リフターは『アドヴァンスドグリップコントロール』という、トラクションコントロールの仕組みを使って雪や悪路などでの前輪の駆動を確保する仕組みが備わっていて、また最低地上高もベルランゴより20mm高い1,880mmとされており、アウトドアを意識したモデルとなっているのが特徴です。

シトロエン ベルランゴ ロング

ベルランゴのほうはパッと見からもわかるとおり実にシトロエンらしい個性的な姿をしていて、これまたシトロエンらしいことに、小型MPVではおそらく世界一快適といえる抜群の乗り心地を誇っています。ふんわりふかふかしていて、それはもう「乗り心地がいい」ではなく「乗り心地が気持ちいい」レベル。これになじんでしまうと、ちょっとほかのブランドのクルマにはいけないほどなのです。

姉妹といえるモデルゆえパワートレインは共通で、エンジンは1.5リッター直列4気筒の直噴ターボディーゼル。130ps/3,750rpmと300Nm/1,750rpmというスペックはカングーのターボディーゼルよりパワーもトルクも上回っていて、実際に走らせてみても力強さ、速さともに、わずかですが勝っているように感じられます。このエンジンはそれぞれのブランドのハッチバックやSUVなどにも搭載されているのですが、どのモデルに乗っても「いいエンジンだな」と感じられる名機なのです。

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プジョー リフター ロング

シトロエン ベルランゴ ロング

車体の寸法は、リフターが全長4,450mm、全幅1,840mm、全高1,880mm。ベルランゴが同じく4,405mmと1,850mmと1,850mm。カングーが大きくなったので、ほぼ同じくらいのサイズ、ということですね。荷室容量はリフターが通常で597リッター、後席を倒して2,126リッターで、ベルランゴもほぼ同じくらいですから、ここはカングーに軍配が上がります。

が、日本仕様のカングーには設定のないロングボディの3列目シート付き7人乗りがリフターとベルランゴには追加されていて、全長を355mm、ホイールベースを190mm延ばしたことで、リフターで見ると最大2,693リッターと、居住性メインの拡大でありながら荷室容量もだいぶ大きくなっています。

2列目の3座独立シートの後ろに備わった3列目の2座独立シートは、補助席のような3列目シートが多い中、大人が座ってもまったく窮屈な感じがしない快適なものです。むしろ2人分が少し左右に離れているので、3人分がギュッと横並びの2列目よりもスペース的にはゆったりしているくらいです。ミニバン並みとまではいかないまでも、しっかり日常的に使える3列目シートは前後に130mmスライドさせることができますし、折りたたむことも取り外すこともできますので、多彩なシートアレンジを駆使した乗車と積載が可能です。これは大きな強みでしょうね。

価格はリフターの標準ボディが389.1万円から、ロングボディが455万円から、ベルランゴの標準ボディが384.5万円から、ロングボディが443.3万円から。全体的にカングーよりわずかに高価、という感じです。これまではカングーが少しばかり小柄で価格も若干安かったわけですが、もはや同じ土俵で戦っているようなものですね。

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オンリーワンなモデルだからこそ、乗り比べて選んでみよう!

といった具合にそれぞれ魅力的なフレンチMPVなのですが、何より困るのは、3車ともにナンバー1よりもオンリー1であることに重きを置くようなところがあるフランスという国で生まれたクルマであること。同じパワートレインを使う姉妹を含め、見た目も雰囲気も乗り味も、見事なまでの3車3様なのです。いずれも日本車にはないお洒落といわれることの多いルックスで、滋味深い乗り味を持っているという点では共通しているのですが……。

日本のMPVに物足りなさを感じている人にはぜひともフレンチMPVをおすすめしたいと思っているのですが、決め打ちでコレ! と定まっている人ならともかく、そうでない人にはそれぞれのショールームを訪ねて試してみてください、とお伝えするしかありません。まぁ、そのほうが味の違いがしっかり体感できて、楽しいとは想うのですけれどね。

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※この記事は、2023年3月時点での情報を元に執筆しています。

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