2007年12月登場の2代目ダイハツ タント、そして2008年1月登場のスズキ パレットがブームの礎を築いた軽スーパーハイトワゴン市場。それまでも背の高い軽自動車は存在しましたが、この2モデルがヒットしたのはスライドドアを採用したことによります。スペーシアはパレットの後継モデル。初代スペーシアがどのようなモデルか、じっくり解説します。
【サマリー】車名を変えて再出発
2011年12月に登場したホンダの軽スーパーハイトワゴン・N-BOXが社会現象と呼べるほどに大ヒット。ライバルメーカー、しかも軽スーパーハイトワゴンモデルの後発だったホンダがモンスターモデルを世に送り出したことで、スズキは自社の軽スーパーハイトワゴンにテコ入れする必要に迫られました。そして2013年に登場したのが、パレットから車名が変わり、広さを感じさせるネーミングが与えられたスペーシアです。
【外観スタイル】ファミリー志向の標準モデルと高級感を打ち出したカスタムを用意
初代スペーシアは室内の広さをイメージさせるよう、Aピラーを立ててルーフの前後長を長くしたスタイルを採用しています。表情は柔らかい雰囲気に仕上げ、小さな子供から年配の方まで、親しみを持てるデザインになっています。ボディカラーは2トーンルーフを含め11色用意されました。
一方、遅れて発売されたスペーシアカスタムは、スケルトン構造のフロントグリルやエアロパーツで高級感を高めたデザインになっています。
【インテリア】クラストップの室内長を確保
スペーシアカスタムは、2425mmというロングホイールベースを活かし、デビュー時クラストップとなる2215mmの室内長が与えられています。ライバルモデルを含めて室内の広さがウリの軽スーパーハイトワゴンですが、スペーシアはそこを前面に押し出し開放感のあるインテリアデザインを採用しました。
インパネは上下2段構造になっていて、上部を低くすることで広い視界を確保。インテリアカラーは標準車が明るいベージュ、スペーシアカスタムは黒を基調としています。
【走り・燃費】スズキ独自の環境技術でクラストップの低燃費を達成
デビュー時からスズキの次世代環境技術「スズキクリーンテクノロジー」を搭載。内容は以下のとおりです。
■ENE-CHARGE(エネチャージ)
助手席下に小型のリチウムイオンバッテリーを搭載。減速時に発電した電気を蓄え、発電のためにエンジンを動かす時間を減らし、燃費を良くしています。
■新アイドリングストップシステム
ブレーキを踏んで13km/h以下になると自動でエンジンをストップ。エンジンの再始動もスムーズに行える設計になっています。
■ECO-COOL(エコクール)
アイドリングストップ中は電力消費を減らすためにエアコンは動かず送風状態になりますが、蓄冷材を通して冷風にすることで、室内の温度上昇を抑えるシステムです。
これらの技術や軽量化により、デビュー時クラストップのJC08モード29.0km/Lを達成しました。標準車、スペーシアカスタムともに、エンジンはNAとターボが用意されました。
【安全装備】マイナーチェンジでステレオカメラを使ったシステムを採用
デビュー時は先進安全装備が非搭載でしたが、半年後の2013年8月にレーザーレーダーを使って前方のクルマを検知する「レーダーブレーキサポート」が全グレードオプション設定されました。
このシステムは自車速度約5km/h〜約30km/hで走行中に前を走るクルマと衝突の危険があると判断した場合に、緊急ブレーキをかけるシステムです。
2015年5月のマイナーチェンジではステレオカメラ方式の「デュアルカメラブレーキサポート」が車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能などとセットで全グレードオプション設定されました。このシステムは作動範囲が約5km/hから約100km/hまで広がり、歩行者も検知できるようになっています。
【グレード構成】標準車とカスタムそれぞれにNAエンジンとターボエンジンを用意
スペーシアは多くの軽自動車と同じように、標準モデルとカスタムモデルを用意。それぞれ、NAエンジンとターボエンジンをラインナップしました。
スペーシアカスタムを含むデビュー時のラインナップは以下のとおり。
■スペーシア
G(NA) ※電動スライドドア非装備
X(NA) ※助手席側電動スライドドアを装備
T(ターボ)
■スペーシアカスタム
GS(NA)※電動スライドドア非装備
XS(NA)※助手席側電動スライドドアを装備
TS(ターボ)
デビュー時の価格帯は122.85〜153.51万円でした。
【マイナーチェンジ&改良一覧】マイナーチェンジで中身が大きく変わった
クラストップの広い室内空間、次世代環境技術と驚異的な軽量化(先代のパレットから90kg軽量化し、機構が複雑で重量がかさむスライドドアを装備しながら車両重量を840kgに抑えるという離れ業を実現)によるクラストップの低燃費を実現した初代スペーシア。
スペーシアは広さと室内高の高さを活かし、頭上にティッシュボックスを収納できるコンソールを設置するなど子育て世代に便利な装備がたくさん備わっているのも特徴です。
2013年2月のデビュー時点では、まず標準モデルのみ登場しました。そして約4ヵ月後の2013年6月に、スペーシアカスタムが発売。さらに2013年8月には先進安全技術であるレーダーブレーキサポートをオプション設定しました。
レーダーブレーキサポート、さらにデビュー時から設定のあったスマートフォン連携ナビゲーションは工場出荷時に装着される「メーカーオプション」ですが、スズキはカタログなどで「レーダーブレーキサポート装着車」「スマートフォン連携ナビゲーション装着車」として価格表示していました。そのため、中古車サイトではたとえば「X レーダーブレーキサポート装着車」というようにひとつのグレードとして扱われているケースが多くなります。
2015年5月:先進安全装備の機能が飛躍的に進化
2015年5月、スズキはスペーシアの安全性や経済性をさらに高めるために、大幅改良を施しました。
大きな変更点は以下のとおりです。
■NAモデルにS-エネチャージを搭載
最長6秒だったモーターアシスト時間を30秒間まで拡大したS-エネチャージを搭載。S-エネチャージは現在のマイルドハイブリッドにつながる技術です。併せてこのタイミングでエンジンも改良。これによりクラストップとなるJC08モード32.0km/Lの低燃費を達成しました。ターボモデルは2015年8月からS-エネチャージが搭載されました。
■衝突被害軽減ブレーキをレーザーレーダー方式からステレオカメラ方式に変更
ステレオカメラで前方を監視して衝突の可能性を検知すると自動でブレーキを作動させるデュアルカメラブレーキサポートを搭載。人も検知できるようになったこと、作動範囲が約5km/hから約100km/hになったことなど、性能が大幅に向上しました。
■先進安全装備の機能が充実
誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能を採用。デュアルカメラブレーキサポートを含め、先進安全装備は全グレードメーカーオプション設定でした。
■全方位モニターを採用
自車を真上から俯瞰しているような映像で周囲を確認できる全方位モニターがメモリーナビゲーションとセットでメーカーオプション設定されました。
■快適性能の向上
標準車のXとカスタムのXSにナノイーエアコンとプレミアムUV&IRカットガラスを標準装備。
2016年12月:スペーシアカスタムZを追加設定
スペーシアカスタムからデザインを大きく変更したカスタムZを新設定。
ボンネットフードを高くするとともに大型のフロントグリルを装備して押し出し感を強調。ディスチャージヘッドライトやLEDイルミネーション、メッキドアハンドルなどで高級感のあるデザインに仕立てられました。アルミホイールはNAモデルが14インチ、ターボモデルが15インチになります。
【スペーシアのおすすめモデル#1】2015年5月以降のXデュアルカメラブレーキサポート装着車
初代スペーシアは後期型になって先進安全装備の性能が飛躍的に進化しました。また、次世代環境技術もエネチャージの進化版であるS-エネチャージを搭載。これから中古車を買うなら、よほどの理由がないかぎり後期型1択で考えていいでしょう。
その中でXにはナノイ―エアコンやプレミアムUV&IRカットガラスなどの快適装備が備わるので、毎日気持ちよく運転できるはずです。
【スペーシアのおすすめモデル#2】スペーシアカスタムZ
ファミリーカー的なイメージが強い標準車に対し、高級感を高めたモデルがスペーシアカスタム。カスタムZは押し出し感をさらに高めたモデルで、デザイン面では標準車の面影を感じさせないほど。
マイナーチェンジした1年4ヵ月後に登場したモデルなので、S-エネチャージを装備しています。デュアルカメラブレーキサポートはオプション設定だったので、これが付いている中古車を探してみましょう。
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【まとめ】ベーシックな軽スーパーハイトワゴンを探している人におすすめ
今や軽自動車選びのスタンダードになっている軽スーパーハイトワゴンは、ユーザーの嗜好に合わせてさまざまなモデルが登場しています。デザインもバラエティに富んでいる中で、初代スペーシアはベーシックなイメージの一台になります。
2代目スペーシアはスーツケースをイメージした、かわいらしい方向になりました。そのため「機能はいいけれどちょっと選びづらい」という人もいるはず。オーソドックスな軽スーパーハイトワゴンを探している人に初代スペーシアはおすすめできるモデルです。
この記事は2022年8月の情現在報に基づいています。