ガソリンエンジンよりトルクフルな走りと燃費の良さ、燃料単価の安さがメリットのディーゼル車。ガソリン車より車両価格が高くても、燃費の良さで元が取れると思っていませんか?ディーゼル車に乗りたい方は必見の維持費のカラクリ、ガソリンエンジンとの違いについて徹底解説します。
① ディーゼル車とガソリン車では寿命が違う!その理由とは?
まずは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの基本的な違いについて復習しておきましょう。この違いは、ガソリン車とディーゼル車の寿命の違いと大きな関連があり、ディーゼル車のメンテナンスポイントにも関連があるからです。
ガソリンエンジンは燃料を点火プラグで燃焼させる
燃料のガソリンは、インジェクターで気化され空気と混じり合わされ(「混合気」といいます)、シリンダー内に送られたあと、圧縮されます(このときの圧力の度合いを「圧縮比」といいます)。圧縮された混合気を、点火プラグで火花を散らして燃焼させ、その燃焼時の爆発力を利用してピストンを押し下げて動力を得る、というのがガソリンの基本的な仕組みです。
ディーゼルエンジンは燃料を自然発火で燃焼させる
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの基本的な構造は同じですが、その仕組みは大きく異なり、燃料も違えば燃焼方法も異なります。ディーゼルエンジンの燃料は軽油で、点火プラグはありません。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと違って、最初に混合気ではない空気だけがシリンダーに送られ、圧縮されます(ディーゼルエンジンでは、この空気の圧縮の度合いを「圧縮比」といいます)。空気は高度に圧縮されると熱を持ち、およそ300℃に達します。高温になった圧縮空気が送り込まれたシリンダーに、燃料を直接噴霧して燃焼させ、ピストンを押し下げて動力を得ます。
このため、ディーゼルエンジンには点火プラグがありません。
ディーゼルエンジンのほうが圧縮比が高くエンジンにかかる負荷が大きい
ガソリンエンジンの燃焼は点火プラグによるため、圧縮比はそこまで高くする必要はありませんが、ディーゼルエンジンは圧縮空気に燃料を噴霧して自然発火させるため、圧縮比が高くなります。一般的なガソリンエンジンの圧縮比は11〜12程度、ディーゼルエンジンの圧縮比は18程度となっています。
圧縮比が高くなると、シリンダー内の燃焼(爆発力)も高くなるため、シリンダーやピストンなどエンジン自体を丈夫にする必要があります。このため、ディーゼルエンジンがガソリンエンジンより重量があり、高価になっています。
また、圧縮比が高いとエンジンにかかる負荷も大きくなります。
熱効率が高いのはディーゼルエンジンだが一長一短
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンより熱効率が高いという特長があります。このため、長距離を走るトラックやバスには適したエンジンとなります。エンジンの寿命も20万キロを余裕で超えることも多いといわれるのはこのためです。
しかし、圧縮比の高さゆえに、発進・加速・停止を繰り返す走行シーンが多いと、ディーゼルエンジンの寿命が短くなります。
すなわち、ディーゼルエンジンは、クルマの使い方によっては一長一短となります。
ディーゼルエンジンは乗り方によっては長寿命にも短命にもなる
ここまでの解説をお読みになって、すでにおわかりになられたかと思いますが、ディーゼルエンジンの寿命はクルマの乗り方によっては、ガソリンエンジンより長寿命にもなれば、短命にもなるということです。
高速道路で長距離を走ることが多い方は、ガソリン車よりディーゼル車を選んだほうが幸せになるでしょう。しかし、街乗りばかりの使い方でも、ディーゼル車のトルクフルな走りと低燃費といった恩恵は享受できます。寿命にこだわらずに、ディーゼル車の魅力だけで買うのも、十分アリな選択です。
② ディーゼル車のオイル交換の目安と費用
ディーゼル車のオイル交換時期は、クルマによって変わりますが、ノンターボ車で10,000キロ走行もしくは1年、ターボ車で5,000キロもしくは半年のどちらか先に到達するタイミング等での交換が一般的です。なお、悪路走行(凍結路、雪道やオフロード走行)や山岳路などクルマに負荷がかかる走行が多い場合(「シビアコンディション」といいます)は、その半分ほどの走行距離や時期が目安となります。
メーカーは車種ごとにオイル交換時期について、取扱説明書に明示しています。だいたいが前述の交換時期となっています。
オイル交換費用の目安は、交換で使用するオイルの量やグレードによって違いがあり、概ね3,000〜13,000円ほどが相場となっていますが、ディーゼル専用オイルはガソリンエンジン用よりも高い傾向があります。
また、クリーンディーゼルでDPF搭載車の場合、DPF再生によるオイル希釈が起こるためオイル量が増えることがあります。
なお、新車で買う場合は、オプションのメンテナンスパッケージにオイル交換が含まれ、お得で楽なカーライフが送れるようになっていますので、確認することをおすすめします。
③ ディーゼル車の消耗品と基本的なメンテナンス、その費用
新車でメンテナンスパッケージもつけて買うよ、という方は、ディーラー任せで基本は大丈夫ですが、そうでない場合や走行距離が多くなる場合は、ディーゼル車に必要な消耗品やメンテナンスについてしっかりと確認をしておきましょう。
AdBlue(アドブルー)補充頻度と価格
最近、海外での品不足がニュースにもなったAdBlueとは、ディーゼルエンジンの排気ガスにアンモニアを吹き付けて有害ガスを浄化する「尿素SCRシステム」搭載車に必要な消耗品です。主な成分は尿素ですが、アンモニアは有害で危険なため、取り扱いのしやすい尿素水として販売、簡単に補充ができるようになっています。
なお、すべてのディーゼル車に「尿素SCRシステム」が搭載されているわけではありません(マツダの国内向けクリーンディーゼルには搭載されていません)。
補充の目安は、排気量は走行状況によって大きく変わってきますが、目安は1,000kmで1Lを消費します。
価格は、5Lで3,000円程度が相場となっています。
燃料フィルターの水抜き
ディーゼル車には、燃料フィルターに水分が溜まると排出を促す警告灯が備えられていることがあります(燃料フィルターに限定しない全体的な警告ランプでまとめられている場合も多い)。
この警告灯が点灯したら、ディーラーか自動車整備工場で燃料フィルターの水抜き作業を行いましょう。車種によっては、取扱説明書などに水抜き方法が記載されていることがあります。
作業をディーラーなどに依頼した場合の費用には差がありますが、数千円から10,000円程度となっています。
堆積したカーボンの除去・DPF洗浄
ディーゼル車は、エンジン内部などにカーボンが堆積すると馬力や燃費が落ちてしまいます。走行状況にもよりますが、5〜10万キロの走行でカーボン除去が必要になることがあります。
DPFとは、排気ガスの中の黒鉛に含まれるスス(PM微粒子など)を大気中に放出しないようにフィルターに集め、一定量が溜まったときに燃焼させて再生する装置のことをいいます。
DPF搭載車は、DPF警告灯が点灯するなどしたときに、エンジンに多めの燃料を吹いてDPF内のススを燃焼(これを「DPF再生」といいます)させます。高速走行時に作動する場合は、運転にあまり影響がありませんが、街乗りばかりの乗り方ではDPF再生スパンが短くなり、再生中は運転のフィーリングが悪くなります。
このDPFもカーボンが溜まりやすいパーツとなり、走行距離が長くなると洗浄が必要となる場合があります。
ディーゼルエンジン内およびDPFのカーボン除去、DPF洗浄にかかる費用
エンジン内部、排気系など、どの範囲をカーボン除去するかによって費用は大きく変わり、少なくとも5万円以上〜、10〜30万円かかるケースもあります。ディーラーに頼んだら40万円以上の見積りがきた、という話もあります。
DPF洗浄も価格差が大きく5万〜20万円が目安となっています。
添加剤
ディーゼル車向けに、燃料と一緒に燃料タンクに注入するタイプの添加剤が多く販売されています。
メーカーは添加剤の使用を推奨していないのが基本ですが、ワコーズなどの有名ブランドが、インジェクターの洗浄効果などをうたった添加剤は、一定の効果があるようです。またマツダは純正部品でインジェクタークリーナーを設定しています。
添加剤の価格は数千〜1万円台と幅があり、決して安いとはいえませんが、ディーゼルエンジンの寿命を延ばしたい方には、使ってみる価値があるでしょう。
4.ガソリン車よりディーゼル車のほうが維持費が高い?
前述したように、ディーゼルエンジンは長く乗っているとカーボン除去など、ガソリン車では不要なメンテナンス費用が発生したり、使うエンジンオイルの種類によってはガソリン車より高いオイル交換代となるケースがあります。
また、2023年度以降は、ディーゼル車が税制優遇措置の対象外で、ガソリン車同等になるという「ディーゼル車エコカー減税外し」が起こります。
ガソリンより単価が安い軽油で走り、燃費もガソリン車よりもいいと、目先の維持費だけに目をつけてディーゼル車を購入すると、結果として維持費が高くなるケースがあります。
経済性のみを重視するなら、年間走行距離と維持費を天秤にかけましょう。
なお、ディーゼルエンジンのトルクフルな走りや、ワンタンクでの航続距離の長さに魅力を感じる方は、迷わずディーゼル車を選んで吉となるでしょう。