EV普及の壁…車両価格が高くなる背景と今後【カープレミア編集長のEV談義vol.4】

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EV10車種以上・総走行距離1万km以上を試乗したカープレミアマガジン編集長が、今あるEVの問題点と解決策、そして未来を自らの経験と知見から、独断と偏見で語る「EV」。今回は第4弾、EV普及の前に立ちはだかる壁とその理由と背景、その壁の壊し方を語ります。

前回の「EV談議」は?

EV普及への高い壁と無数の低い壁…その解決策はある?

日本、北米、欧州を中心とした先進国では、急激なEVシフトが進んでいます。どこの国も、EVの普及の前にいくつもの壁が立ちはだかっています。日本においては、以下の4点がEV普及の壁となるでしょう。

  1. EVの車両価格が高いという高い壁
  2. 充電時間が長いという高い壁
  3. 脆弱な充電インフラと電力不足という高い壁
  4. 消費者側のリテラシー、モラルをはじめとした無数の低い壁

それでは、1番目から順に具体的に何が高い壁になっているのか、どうしてその壁があるのか、その壁を壊す解決策はあるのかについてお話していきます。

EVの車両価格が高いという高い壁

「EVはガソリン車より高い」ということはすでにみなさまご存じのことでしょう。一概にはいえませんが、概ねガソリン車の1.5倍ほどがEVの車両価格となっています。

ただ、EV購入時の政府や自治体からの補助金がありますので、実質の車両価格では、日産 リーフ やテスラ モデル3などの低価格グレードでは、ガソリン車に近い価格で購入できるようにはなりました。

しかし、補助金といえども財源は税金です。

EVが普及するまで毎年400億円以上の補助金予算が必要に?

電動車購入補助金などと呼ばれる、日本政府の補助金は直近2年度では以下のようになっています。

  • 令和3年度補正予算「クリーンエネルギー自動車インフラ導入促進補助金」375億円
  • 令和4年度当初予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」155億円

令和4年度は年度始まり時点の当初予算ですので、補正予算が組まれて増額する可能性大です。令和3年度で当初予算の2倍以上となっていることと、令和3年度より4年度のほうがEV・PHEVの販売台数が多くなることが予想(特に、軽EVの日産 サクラ、三菱 eKクロスが令和4年度中に発売され、EV販売台数は前年度より大きく伸びると予想)されています。

令和4年度政府補助金では、前年度よりベースとなる補助金が増額され、軽EVで55万円、登録車(普通車)EVで65〜85万円となっています。

政府補助金のほか、都道府県・市町村区各単位でのEV購入補助金を制定しています。例えば、東京都では、個人がEVを購入した場合は45万円、都が定める再生可能エネルギーの電力メニューを契約すると65万円に増額されます。さらに、足立区などでは10万円の補助金が加算されます(本記事執筆時点ですでに自治体により予算枠を消化しているところが出ているようです。詳しくはお住まいの自治体窓口にお問合せください)。

自治体の補助金総額は不明ですが、今後毎年、全体で400億円以上の税金がEV普及のために使われることになります。

政府補助金を担当する経済産業省のホームページでは、補助金の財源がどこなのかが知らされていませんが、自動車税・自動車重量税、ガソリンや軽油にかかる税金が財源となっていることが考えられます。いずれにせよ、EV普及のために国民が負担していることには変わりありません。

日本政府は、2035年代までに新車販売の100%を電動車とする(電動車=BEV/バッテリーEVとは解釈しづらいが)という方針を打ち出しています。EVの車両価格が安くならない限り、毎年毎年400億円以上の補助金を政府は用意し、各自治体も用意しないといけなくなることは容易に推測できます。

EVの車両価格は安くならないのか?

現在販売されているEVの車両価格の約4割が、バッテリーの価格とされています。バッテリー価格の高さが、EVの車両価格の高さに直結しています。

なぜEVのバッテリーが高いのか?

EVのバッテリー価格を高くさせているのは、高価なレアメタルが材料として必要であることと、安全性を確保すること、そして高い性能が求められるといった、高い材料と高度な技術が必要という理由があります。

EVは、高い電力が必要であることから、リチウムイオンバッテリーが使用されています。このバッテリーに必要なレアメタル(希少金属)は、コバルトです。コバルトなしでもバッテリーを作ることができますが、安全性や性能が劣ってしまいEVにおいてはなくてはならない材料となっています。

また、コバルトはそもそも埋蔵量が少ない上に、急激なEVシフトで需要が高まり、価格は右肩上がりとなっています。

安全性については、EVのバッテリーは事故などの衝撃により火災・爆発が起きないような堅牢な構造にしなければなりません(スマートフォンもリチウムイオンバッテリーを採用しています。バッテリーが膨張したり、発火する事件がありました)。なお、EVは車重が重くなると、電費・航続距離に悪影響を及ぼすため、十分な堅牢性を確保しながら、軽量化も実現しなければなりません。

リチウムイオンバッテリーの中身は液体で、乾電池のような小さなセルをたくさん寄せ集めている構造となっているため、価格が高くなる要因にもなっています。

バッテリーの筐体、構造の部分においては、大量生産することでコストを下げることができますが、価格が高騰するレアメタルでトレードオフとなり、バッテリー価格が安くならなくなる可能性大です。

現在、安全性と性能が高い「半固体バッテリー」を各社が開発しており、これが実現できれば、バッテリーの性能向上と価格減少の両立が期待できます。

既存自動車メーカーの車両価格低下を待つより新興EVメーカーが安いEVを出す流れか?

2021年6月に、中国の自動車メーカー、五菱(ウーリン)が、日本円にして約48万円のEV『宏光 MINI EV』を日本初披露し話題を呼びました。

筆者も実車を見てきましたが、日本の保安基準に適合していない部分が散見され、およそ50万円を切る価格では販売が難しそう(筆者推定で、ナンバーが取得できるようにするための改造等を考慮し、実売価格は100万円台後半になりそう)でしたが、少なくとも今のガソリン車と大差ない価格のEVが、やがて日本に襲来しそうな予感がしました。

五菱は、ゼネラルモーターズ 、上海汽車 、五菱集団の3社の合弁ベンチャーであることが注目ポイントです。既存の大自動車メーカーが中国の新興メーカーに出資しています。

また、商用車になりますが、2021年4月に佐川急便が、中国の自動車メーカー、広西汽車集団が生産する小型EV7,200台を導入、軽自動車と入れ替えるという報道がありました。この中国製小型EVは、ガソリン車を下回る廉価だそうです。

さらに、中国の「BYD」は、小型〜大型のバスや自治体・法人向けの乗用車を日本国内で販売を開始しています。

EVの開発は内燃機関車より楽にできる

内燃機関(ガソリン・ディーゼルエンジン)の開発は非常に難しく、時間もかかりますが、EVは至極簡単にいえば、モーターとバッテリーだけでクルマを作ることができますので、内燃機関車を開発するような技術やノウハウを必要としません。

米国のテスラが世界的な商業的成功を収めていることは、EVの開発が内燃機関車より楽にできることを象徴しています。

こうなってくると、既存の自動車メーカーは大変です。足元では、内燃機関車を生産し続けなければならないことに加えて、内燃機関車が販売禁止になるとされる2035年まではまだ年数があるため、既存車の改良もしていかねばなりません。

また、EVの部品点数は内燃機関車より圧倒的に少ない部品で生産できるという点が、既存の自動車メーカーに大きな影響を与えています。EV化により、部品点数が最も多いエンジン(7,000〜10,000の部品点数があるとされる)、トランスミッション、燃料タンク、給排気系やラジエターなどが不要になります。

EVの部品点数は、2万点ほどとされています。一方ガソリン車では部品点数の数え方により変動しますが、エンジンの細かい部品を数えた場合で約10万点、機械部品点数では約3万点とされています。

この部品点数の差は、自動車メーカーと一緒になってクルマを生産するサプライヤーの売上、雇用を直撃してしまいます。

「EVの開発は内燃機関車より楽にできる」ということが、既存車自動車メーカーが、急激にEVシフトに舵を切れない理由にも影響を与えていたのでした。

ただ、中国EVメーカー勢が、安いEVを日本市場にどんどん導入すれば、EVが高いという問題を解決されることになりますが、これは日本の基幹産業である自動車が国産メーカーの弱小化を招くことになり、非常に複雑な気分となります。

「充電時間が長いという高い壁」については次号で

「EVの車両価格が高い」という背景とその解決策についてできるだけ丁寧にお話しようとしていましたら、この点だけで1本の記事文量になってしまいました。「充電時間が長いという高い壁」については次号でお話させていただきます。

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※この記事は、2022年6月時点での情報を元に執筆しています。

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