新車と違い“定価”が存在せず、同じモデルでも一台ずつ価格が異なる中古車。ではその価格は何を基に決められているでしょう。答えは流通している中古車(供給)と欲しい人(需要)のバランス。言い換えるなら“人気”になります。そして人気を左右するのが年式や走行距離などの諸条件。ここでは走行距離や年式をどのようにとらえながら中古車を選ぶべきかを紐解きます。
中古車の価格は一台ずつ違う。価格を決める代表的な要素
中古車販売店にクルマを見に行くと、同じ車種であってもフロントウィンドウに掲げられた価格は様々ですよね? 「同じクルマなのになんで◯万円も違うの?」なんて思った人も多いのではないでしょうか?
これは同じ車種であっても中古車として販売されているクルマは1台1台の状態が違うからなんです。
例えばボディカラー。メーカー出荷時(新車の時)は同じ色だったものでも、これまで乗っていた人の保管方法や洗車方法の違いで、見た目の色合いが変わって見えるようになってきます。
こんな細かな変化なども含め、車両の様々な状態を中古車店では価格に反映させているので、同じ車種でも違うプライスになるのです。そんな価格を左右する代表的な要素は以下のようなものとなります。
■年式
■走行距離
■修復歴
■補修歴
■グレードや装備品
■内外装のコンディション
……などなど。
その中でも大きなものが走行距離と年式
価格を左右する要素の中でも、特にその影響が大きいのが“走行距離”と“年式”です。中古車を買う人の大部分が「少しでも安く、少しでもいいものを買いたい」と望んでいますよね?
「少しでもいいもの」を選ぶには、専門的なクルマの知識がないとなかなか判断できない部分が多いのです。例えば先ほど書いたボディカラーの色合いの変化。中古車販売店では、仕入れたクルマを商品化するためにクリーニングするので、色の変化は大まかにリセットされています。同じ色のクルマが並んでいれば、その変化に気付けますが、その1台だけだと我々素人の目では色の変化に気付くのは至難の業。
補修部やメカニカルな部分の状態の違いなんて話になると、さらに専門的な知識が必要となるので、状態の良し悪しを判断するのは現実的には難しいと思います。
対して走行距離と年式については、的確に数値で示されているので、クルマのことをまったく知らない人でもわかりやすい指標となります。
買う側にしてみれば、走行距離なら「少ないほうがいい」、年式なら「新しいほうがいい」わけで、中古車店は、走行距離が長いもの、年式が旧いものであればプライスを安くせざるをえないのです。
走行距離には相場が大きく動く節目がある
このように中古車価格を左右する走行距離ですが、数値から抱くイメージによって値段が大きく変わる節目があります。それが5万kmと10万km。
新車から乗り始めて5万kmまでというのは、普通に乗る分にはトラブルに見舞われることは滅多にないもの。車検でも要整備とはならず、法定費用のほかはオイル交換などの油脂類交換の費用が上乗せされるだけで済むことが多いです。
しかし、例えばタイヤが減ったとか、バッテリーが上がってしまったとか、いわゆる消耗部品に関しては、5万km前後から交換が必要になってくることが多くなります。消耗部品の交換は、クルマに詳しい人に言わせればメンテナンスですが、クルマは移動の道具ととらえる人にしてみれば、故障の修理もメンテナンスもたいして違わないですよね?
そんなことから5万kmを超えた中古車は、「故障するんじゃないか?」とか「購入後に修理(メンテナンス)代がかかるんじゃないか?」などのイメージを抱いている人が多く、中古車は5万kmを境に販売価格が安くなる傾向にあるのです。
5万km超でもそんなイメージですから、10万km超ならなおさら故障のイメージが高まっていくこととなります。
節目の走行距離を少し超えたくらいなら状態はあまり変わらない
そんな節目を超える前か後かで、プライスはあからさまに変わっていたりします。しかし4万kmと6万kmで故障のリスクがどれほど変わるかといえば、実際のところは微々たるもの。
4万kmと6万kmでは、数値的に1.5倍も違いますが、現代のクルマならメカニズム的にまだまだ活きがいい時期で、人間でいえば30〜40歳代といったところでしょうか。
交換が必要になってくる消耗部品に関しては、4万kmと6万kmであれば、ご自身が乗っている期間にいずれにせよ交換が必要になってきます。つまりその時期が早く訪れるのか遅く訪れるのかという違いでしかありません。
しかも今は、中古車サイトを使って中古車を探す人が圧倒的に多いもの。中古車サイトでは“5万km以下”など走行距離に範囲を設定して検索することができます。すると5万kmをわずかでも超えたものは検索結果として表示されません。そのため、販売店は多くの人が設定条件にする走行距離を超えたものは価格を下げて、別の検索条件でヒットしやすいようにする傾向があります。
5万km超が理由でプライスが安い中古車があったら、これは狙い目の中古車と言えるかもしれません。
10万kmの節目は、その傾向がいっそう強まります。9万kmと11万kmであれば、走行距離よりもこれまでの使われ方やメンテナンスの状況でコンディションはまちまちに。しかし実際は、9万kmのクルマよりも11万kmのクルマの方が調子がいいなんてことも普通にありえます。つまり走行10万km近辺の中古車の場合は、走行距離よりも実際のクルマの状態で判断するのがいいでしょう。
年式は旧型になると安くなる
年式に関しては、旧くなるほど安くなる傾向にあります。例えば平成28年式と27年式はそれほど価格差がありませんが、平成26年式になると急に価格が安くなるという具合に。この場合、平成27年と26年の間にそのモデルが、フルモデルチェンジ(FMC)、もしくはマイナーチェンジ(MC)を行っている可能性が高くなります。
昨今のクルマはクルマの根本的な機能の発展がめざましく、動力にしてもガソリン車にハイブリッド車、電気自動車と多様になっています。そのほかにも年々、運転支援システムなどが進化しており、FMCやMCの前と後では大きな性能差があるケースが多くなります。
日常的な快適機能にしても、現在ではスマートフォンとクルマをブルートゥースなどで接続することが基本となっていますが、年式によりそれらの機能に対応していないものになると、その機能が欲しい人は対応するオーディオ機器を後から追加しなければなりません。
そういった面があり、型落ちとなるモデルは人気が低くなるため、その分販売価格も安く設定されているのです。
旧型は機能面で劣るケースがあるが、気にならなければ問題なし
機能面の違いは、後々のカーライフでそのクルマを選んだ満足度を大きく左右することになるので、購入時は慎重に選ぶ必要があります。
特に後付けができない機能や装備に関しては、購入後「やっぱり欲しかった」と思ってもクルマを乗り換えるしかその要望を叶えるすべがありません。
例えば2〜3km先のスーパーマーケットまでの買い物とか、学校や習い事までの子供の送り迎えがほとんどとなる方であれば、機能面であったらいいなと感じるのはバックモニターやオートスライドドアやパワーバックドアなどでしょうか。
これらの装備は、なくても走行に支障はありませんが、一度使ってしまうとその便利さから、ないと不満に感じる方が多いようです。日々の生活で、それらの装備が高頻度で活躍するようであれば、予算を上げてでも欲しい装備が付いている新しい型を選ぶほうが満足度は高まります。
しかし便利になるといっても実際に使うことがなければ無駄な装備でしかありません。
上記のような使い方しかしない方にしてみれば、例えば高速道路の渋滞で重宝する全車速追従型クルーズコントロール(ACC)ドライブ支援機能の恩恵にあずかることはそうそうないと思います。
「便利になります」「より安全です」などのセールストークを聞かされると、「せっかくだから」となりそうですが、使いそうもない機能が付いた新型と付いていない旧型に大きな価格差があるのであれば、旧型を選ぶのが賢明でしょう。
旧型の後期モデルは熟成されたものが多くてオススメ
現行モデルではなく型落ちの旧型を選ぶなら、MC後の後期型がオススメです。ちなみにFMCすると型(代)が変わります。昔は4年ぐらいでFMCするのが一般的でしたが、昨今では6〜8年と長い期間同じ型が販売される車種も珍しくなくなってきています。
その期間中、ずっと同じままでは、ライバル車の登場などで商品としての魅力が目減りしてしまうことがあるので、MCで商品価値を高めているのです。
モデルチェンジサイクルが4年のものであれば、MCを挟んで前期と後期、より長いモデルチェンジサイクルであれば、前期、中期、後期などと区別されています。
同じ型であれば、当然前期型の方が年式も旧く、その分走行距離も多くなる傾向にありますから、価格的には安くなります。
もし予算に余裕があるようであれば、後期型をオススメします。というのも前述したとおり、メーカーが商品価値を維持するために改良を加えているので、クルマの魅力が高まっていることが多いからです。
また、メカニカルな部分で細かなトラブルが発生した部分などに対策が施されていることも多く、より安心して乗ることができるというメリットもあります。
新しいけれど走行距離が延びているもの、旧いけれど走行距離が少ないものは?
中古車市場に流通する数は少ないですが、3年落ちなのに10万kmとか、逆に10年落ちなのに走行2万kmなんていう、年式と走行距離が見合わないクルマがあります。
みなさんは1年間にどれくらいの距離を愛車で走っているでしょうか? ちなみに年間走行距離の平均的な数値は、昨今では8000kmといわれているようです。
そんな平均値から、3年なら2万4000km前後、10年なら8万km前後が一般的な走行距離といえます。そこから大きく逸脱した走行距離の中古車を購入候補に入れるべきなのでしょうか?
まずは3年落ちで10万kmのほうはというと、新しいとはいえ、相手は機械なので走ってきた距離分の消耗は間違いなくあります。しかし昨今のクルマであればしっかりとメンテナンスさえしていれば、10万kmという走行距離でもまだまだ問題なく乗ることができる距離といえます。
しかも年間走行距離が極端に多いものは、高速道路を使って頻繁にロングドライブをしていた可能性が高くなります。
高速道路はブレーキを踏む機会が一般道に比べて少なく、アクセルも一定の開度で走っている時間が長いため、距離が延びていてもクルマへのダメージが少ないケースが多いもの。
定期点検整備記録簿などに、これまでの整備記録がしっかり残っていて、しかもその整備内容が充実していれば、まだまだ安心して乗れる可能性が高いです。走行距離から販売価格はかなり安いと思われますので、新しいクルマを安く乗るなら狙い目かもしれません。
対して10年落ちで2万kmはどうか? 走行による消耗は少ないでしょうし、特に内装のヤレなどは同年式と比べたら圧倒的に少ないはずです。
しかしこういった中古車は、街なかをちょろちょろと走っていた可能性が高くなります。頻繁にストップ&ゴーを繰り返しているので、走行距離の割に消耗品の摩耗などが進行しているケースも。
また、年単位で長期間放置されたというケースもあります。長期放置はクルマに様々な悪影響を及ぼします。例えば燃料タンク。残ったガソリンが腐食しタール化したり、タンク自体がさびてしまったりするのです。これらは燃料供給システムに悪影響を及ぼし、大きな故障の原因となったりします。
趣味的なクルマであれば、大掛かりなメンテナンスが前提となることが多いので、走行距離が極端に少ない車両でも価値があったりします。しかし日常使用を考えているクルマとして考えると、年式の割に極端に走行距離が少ない中古車は避けたほうがいいかもしれません。
購入後、トラブルフリーを望むなら……?
中古車を選ぶ際、まずは予算や使い方から車種を選ぶのが一般的でしょう。しかしある程度車種がしぼられてくると、年式や走行距離が気になってくるものです。これは「購入後に故障するクルマを避けたい」という誰もが考える理由なのは言うまでもありません。
年式に関しては、FMCやMCを挟んでいなければそれほど気にする必要はありません。挟んでいる場合は、年々進化している機能や装備が自分にとって必要かどうかをよく考える必要があります。
走行距離に関しては、5万km前後であれば、それほど気にすることはないと思います。もちろん年間2〜3万kmも乗られるような人が中古車を探しているのであれば、少ない方を選んだほうがメリットが大きくなります。しかし平均的な年間走行距離ぐらい、もしくはそれよりも少ないという使い方なら、走行距離に1万kmの差のある中古車2台があり、どちらを買うか迷ったなら、距離が多いほうに価格面でのメリットなどあれば、そちらを選ぶのは十分に「あり」な選択となるでしょう。
走行距離が10万kmならどうか? 平成後半に登場したクルマであれば、10万kmでもまだまだ元気に走ってくれます。しかし5万kmのクルマと比べれば、メンテナンスが必要となる部分は間違いなく増えてきます。「低予算で中古車を探している」、「どうしても乗りたい車種」などの理由がなければ、5万km前後の中古車を選んだ方が結果的に高い満足が得られることになるはずです。