タイヤチェーンの材質・形状別のメリット・デメリットや、何を選んだらよいのか、選び方のポイントなど、すべてまとめてお伝えします。
タイヤチェーンの材質は4種類
タイヤチェーンの材質は、金属・ゴム・樹脂・布の4種類あります。それぞれの特徴は次のとおりです。
金属チェーン
近代的な自動車が普及するようになってからのタイヤチェーンの歴史で最初に登場したのが、金属チェーンです。「タイヤチェーン」の語源は、その文字どおり、元々は重量物を吊り下げたり、柵にしたりするなどの用途の金属チェーンを、タイヤに巻き付けて滑り止めにしていたことに由来します。
タイヤチェーンに使用される金属チェーンは、一つひとつの金属の輪が滑らかにされ(一般用途の金属チェーンは、一つひとつの金属の輪に溶接の跡が残っており、凹凸がある)、タイヤを損傷させないように作られています。
メリット
金属チェーンの最大のメリットは、積雪路(特に新雪)、凍結路でのグリップ力が最強であることです。豪雪地帯では、スタッドレスタイヤ+タイヤチェーンが最強とも呼ばれています(運送会社のトラックなどが、雪の深い山道やアイスバーンを走るとき、スタッドレスタイヤにタイヤチェーンを巻くことがよくあるようです)。これは、金属チェーンの輪が大きく、走行時の雪や氷の噛み具合が、ほかの材質のものと比べて強力になるためです。
また、価格の安さもメリットです。年に1回積もるか積もらないかわからないような、冬場でもスタッドレスタイヤの装着が不要な地域で、緊急的にタイヤチェーンを常備しておきたい、という方なら、最もコストパフォーマンスが良いタイヤチェーンとなるでしょう。
デメリット
デメリットは、取り付けの煩雑さ、振動の大きさ、耐久性の弱さなど、無数にあります。
まず、取り付けは4種類あるタイヤチェーンの素材の中で最も手間がかかります。
金属ですから、重たいのが難点ですし、熱伝導率が最も高い素材となるため、装着時に軍手などしていても、その冷たさは堪えます。高価な金属チェーンの一部には取り付けに工夫を凝らしたものもありますが、一般的な金属チェーンは取り付け作業の難易度は高めです。
後述する樹脂製などの軽量なタイヤチェーンが普及する前の1980年代、友達と1台のクルマに乗り合ってスキーに行くとき、途中でタイヤチェーンの着脱は誰がするのかが重要なテーマ。ある種の罰ゲームにされたものでした。
さらに、耐久性も弱く、雪の少ない路面を長く走ると切れやすい、錆びやすい、という難点もあります。
デメリットが多く、メリットが少ない金属性タイヤチェーンですが、いまだに生産販売が続けられているのは、数多いデメリットを凌駕する積雪路・凍結路のグリップ力と価格の安さというメリットがあるからです。
タイヤチェーンの雑学「金属製タイヤチェーンの始まり」
クルマのタイヤの滑り止めに、縄や植物のつるをタイヤに巻き付けていた時代、アメリカのハリー・D・ウィードが、「耐久性の高いチェーンならイケる!」と思って、1904年に発明、「Grip-Tread for Pneumatic Tires」として特許権を取得(米国)したのが始まりでした。
ゴム(ラバー)
ラバーネット製のタイヤチェーンでは、実は1社独占です。スイスの「Yeti Snow net(「イエティスノーネット」通称、イエティ)」が、スイスをはじめ、日本、ドイツ、アメリカなど19カ国で特許を取得しています。
イエティは、金属チェーンのデメリットをすべて打ち消し、メリットだけを残した、夢のタイヤチェーンでした。今でも、静粛性、グリップ力はトップレベル。最も後発となる布製が持つ、取り付けのしやすさ、騒音の少なさ、タイヤ・ホイールへの干渉の少なさといったメリットには負けますが、滑りやすい路面での安定感と耐久性にはかないません。
今でも、タイヤチェーン界のヒエラルキーで最上級に位置しているといって過言ではないでしょう。しかし、価格も最上級です。
価格の高さを除けば、最もトータル性能が良いタイヤチェーンとなります。欧州では、フォルクスワーゲン、フィアット、プジョーなどが純正ないしは推奨品としてイエティを指定しています。
なお、通販サイトなどでは、非金属チェーンにゴム・樹脂の区別をつけず、樹脂製でありながら「ゴムチェーン」と表記しているところが散見されます。注意して下さい。
樹脂製
タイヤチェーンのメインストリームが樹脂製です。ネットショップやカー用品店では「非金属チェーン」に分類されて販売されていることがよくあります。
樹脂は形状の自由度が高く、特定の機能に集中した設計が可能です。例えば、着脱性の良さに特化したものがよく見受けられます。価格帯は、金属チェーンより高く、ラバーチェーンより安いものが多く、製品数が豊富です。
雪上・氷上走行性能は、製品により開きがあります。着脱のしやすさを優先したものは、雪上・氷上走行性能が低くなる傾向があります。また、着脱には専用の付属工具を使うなどコツが必要なものも多く、ぶっつけ本番では寒い中で取説を見ながらつらい目に合う可能性があります。必ず事前に着脱の練習することをおすすめします。
ネット通販サイトでは、かなり安価な樹脂製タイヤチェーンが散見されていますが、耐久性や雪上・氷上走行性能の信ぴょう性に欠けるものが多く見られます。大手カー用品店のネットショップでも取り扱っている製品であれば、一定の信頼性があると考えて良いでしょう。
布製
ここ数年で急激にシェアを伸ばしてきたのが、布製です。見た目上は、ぺらぺらの布をタイヤに被せているだけですので、耐久性や雪上・氷上走行性能に不安感を覚える方も多いでしょう。しかし、その心配は不要です。
ノルウェーの「オートソック」の布製タイヤチェーンは、日産が純正用品に採用しており、世界50カ国以上の認証機関で安全性が認められています。
最大のメリットは、装着の手軽さと保管のしやすさです。装着性の高さでは、ほかの材質のタイヤチェーンと大差をつけて布製が勝利するでしょう。軽量で、たたんでコンパクト保管できるところも、ほかの材質ではできないメリットです。
難点は、耐久性。大変丈夫な素材で、乾燥路の走行もある程度はできるようになっていますが、長時間の走行は不向きです。また、荒れた路面も苦手です。
緊急用として、トランクに常備しておくのに最適なのが、布製タイヤチェーンです。
金属性・樹脂製タイヤチェーンでは形状による特性もチェックを
タイヤチェーンの接地面の形状は、おもに次の2種類となります。
ラダー(はしご)型
チェーンを伸ばしたとき、はしごのような形状になっているものは、タイヤの前後方向のグリップ力が高くなります。ただ、横方向の力には弱く、横滑りしやすいというデメリットはありますが、ほかの形状と比較すると安価で、仮に切れても補修しやすい(補修キットが安価に販売されていることが多い)といったメリットがあります。
亀甲型・リング型
チェーンを伸ばしたときに亀甲型になっているものは、タイヤの縦方向・横方向の両方の力に対して強くなり、雪上・氷上の走行性が高くなります。デメリットは、ラダー型に比べると重くなること。金属チェーンでは製品によって、鎖を細くて軽くできる合金を使用したものがありますが、価格は高くなります。
【タイヤチェーンの選び方】メリット・デメリットを表にまとめ
材質別タイヤチェーンの特徴
金属 | ゴム | 樹脂 | 布 | |
価格(安さ) | ◎ | × | △ | ◯ |
装着性 | × | △ | ◯ | ◎ |
収納性 | × | △ | △ | ◎ |
氷上走行性能 | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ |
雪上走行性能 | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ |
振動・騒音 | × | ◯ | ◯ | ◎ |
耐久性 | △ | ◎ | ◯ | △ |
タイヤやホイールへの傷 | × | ◯ | △ | ◎ |
乾燥路走行の許容 | × | △ | △ | ◯ |
重量 | × | △ | ◯ | ◎ |
最高速度 | 30km/h | 50km/h | 30〜70km/h | 50km/h |
上の表は、製品によりばらつきがあるため、目安としてご覧ください。
雪の降らない地方に住んでいる人でも、スキーやスノーボード、秘境の温泉巡りなどで年に何回か雪道を走る機会があるのであれば、チェーンではなくスタッドレスタイヤをおすすめします。極端な例ですが関東と新潟を結ぶ関越高速は、関越トンネルがチェーン禁止のため、手前の群馬側でチェーン規制が実施された場合、タイヤチェーンの着脱作業を合計3回行うことになります。これこそ罰ゲーム以外の何物でもありません。また、スキー場へ向かう狭い道の路肩でチェーンの着脱を行うのは危険も伴います。
とはいえ、雪道を走る機会が数年に一度、と言うことでしたら、やはりタイヤチェーンのコスパの良さは魅力です。持っていないより持っている方がはるかに安心です。
タイヤチェーンを選ぶなら材質別のメリット・デメリットから、自分のカーライフと予算に合うものを選ぶと良いでしょう。
「カープレミアガレージ」とは
「カープレミアガレージ」では、国家資格を持った整備士が点検に対応するため、クルマに関する疑問点や不安点は何でもご相談いただけます。また、定期点検などのサービスも行っているため、長期的なクルマの管理も安心して任せることができます。
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「カープレミアパーツ」とは?
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中古・リビルト部品って何?
中古部品(リユース)は、使用済み自動車等から取外され、テスターによる点検、清掃などを行い商品化された部品です。リビルト部品は、中古車(コア)を分解洗浄、消耗品交換や故障個所の交換を行い、性能をほぼ新品同等に回復させた部品です。
リビルト部品をオススメする理由
1.新品部品を利用するよりもコストパフォーマンスが良い事
2.リサイクル、リユースといった資源の有効活用に繋がること。
3.品質基準をクリアした部品で安心して使用できること。
中古・リビルト部品のメリット
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