モーターとエンジンを組み合わせ、大容量バッテリーに外部から充電することもできるプラグインハイブリッド(PHEV)。SUVタイプのPHEVとして人気を集める三菱 アウトランダーがフルモデルチェンジ! 果たしてどのように進化したのか、嶋田智之氏がレポートします。
モーターを徹底的に使い込む。それがアウトランダーPHEV
前にもお伝えしましたが、4月の末頃に8日間ほど、イタリアとフランスに行っていました。およそ2年半ぶりの渡航。ひさびさに訪ねる懐かしい街並みを散歩できたりもして、ニンマリしてた時間もちょっとだけありましたが、残念ながら観光ではありません。これから日本に上陸することになるニューモデルに試乗させていただくため、でした。
時代は確実に変わったんだな……と感じたのは、試乗できた7車種のうち1車種がマイルドハイブリッド、5車種がプラグインハイブリッド、1車種が電気自動車で、エンジンのみを原動力にするクルマが1台もなかったことでした。この2年半の間にクルマの電動化が急速に進んだことを、あらためて実感させられたかたちです。
アルファロメオ、プジョー、シトロエン、DSと、いろいろ乗らせていただいたクルマの出来栄えは、どれも素晴らしいものでした。中にはモーターの瞬発力と強大なトルクをはっきりとスポーツ性のために活用しているクルマもあったりして、電動化のメリットは単に環境性能や省燃費性のみにあるわけじゃない、という開発陣の声が聞こえてくるかのようでした。ターボチャージャーやスーパーチャージャーなどと同じく、高い走行パフォーマンスを得るためのひとつの技術として利用している、というわけですね。
けれど、このクルマほど徹底してモーターを「駆動する」ということに広く深く活かそうとしているモデルはまだまだそれほど多くないようだな、ということにもあらためて実感させられたのでした。三菱 アウトランダーPHEV、です。
昨年、9年ぶりにフルモデルチェンジを受けたアウトランダーは、全車がPHEV、つまりプラグインハイブリッドモデルとなりました。比較的安価だったガソリンエンジン搭載モデルがなくなり、価格は462万1100円から。
その金額だけを耳にして、高価なクルマだな、と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。けれどコストパフォーマンスという点から考えると、ずいぶんリーズナブルだよな、なんて思えてきてしまうのです。
基本構成は先代と変わらないが、中身は大きく進化
三菱の駆動技術に対するこだわりは、1953年のジープからスタートしているといっていいでしょう。電動化に関しては、1966年に初めての試作車を作って以来、あまり知られていませんが、地道に研究を継続してきていました。
そのふたつが結実したのが、2代目アウトランダーに2013年に追加されたプラグインハイブリッドモデルです。そして2018年のアウトランダーでの進化、2020年のエクリプスクロスへの投入、2021年の3代目アウトランダー、つまりこの現行モデルにおける大幅な進化。三菱の技術陣は、自分たちのプラグインハイブリッドの技術をじっくりコトコトていねいに煮込み続けてきたのです。
現行モデルのプラグインハイブリッドシステムの基本構成は、2.4リッターのガソリンエンジンに前後ひとつずつのモーターを組み合わせるもので、従来の仕組みと共通です。ただしエンジンは効率化を進めて94kW(128ps)から98kW(133ps)へとわずかではありますがパワーアップを果たし、モーターの出力もフロントが60kW(82ps)から85kW(116ps)へ、リアが70kW(95ps)から100kW(136ps)へと大幅に強化されています。
モーターの最大トルクは、リアこそ195Nmと先代同様ですが、フロントは137Nmから255Nmへと、これまた大幅に向上しています。搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量も、13.8kWhから20kWhへと40%以上も増量されています。
充電はAC200V/15Aの普通充電器だと約7.5時間で満充電、急速充電器を使って約38分で80%に到達、停車中にエンジンだけで充電すれば約94分で80%に到達、と発表されています。もちろん蓄電・給電機能もしっかりしていて、車載のコンセントで最大1500Wまでの電気機器が使えますし、エンジンでの発電を組み合わせれば一般家庭のおよそ12日分の電力量を供給することができるとアナウンスされています。
フル充電となった状態からEV走行できる距離も、WLTCモードで57kmから87kmへと大きく数値を延ばしています。パワートレインは大幅に強化されているのですね。
なので、走っている間、力不足を感じたことは一度もありませんでした。モーターだけでスルッと当たり前のように走り出し、充電量が満ち足りているうちは、基本的に「ほぼ電気自動車」です。可能な限りバッテリーの電力でモーターを回して走行する考え方を継承していて、なかなかエンジンは始動しません。アクセルを床までベタ踏みしたりするとグイッと強力な加速を味わわせてくれるのですが、さすがにそういう場面ではエンジンに火が入るものの、始動したときに音や振動が気になるようなこともありません。そういうところもかなり洗練されています。それに車重が2トンを超えているのに、どんなときでもじれったい思いをすることがありません。これは考えてみたら凄いことですよね。
前後に加え左右のトルク配分も制御
アウトランダーのプラグインハイブリッドシステムには、三菱独自のS-AWC(Super All Wheel Control)という車両運動統合制御システムが組み合わせられています。4つのタイヤの駆動力や制動力を最適に電子制御していくことで、操縦性や走行安定性を高めていく仕組みです。
従来のS-AWCでは、前後のモーターの駆動力配分と前輪左右のトルク配分を行っていたのですが、現行型ではそれに加えて後輪左右のトルク配分も行うようになるなど、こちらも進化を果たしています。4輪の前後左右の駆動を走行状況に合わせてそれぞれ適切に変化させられる、というわけですね。
これが、とても素晴らしいのです。フツーの道をフツーに走っているようなときには効果の具合を体感することがなかなかできないのですが、幸いなことに僕はサーキットのコースを、それも雨上がりのドライ路面とウェット路面が混在する状況で走るという経験をさせてもらったことがあるのでした。ひとつの極限状態といえる領域までクルマを持っていくことができる環境でテストすることができたわけですが、そのときの記憶は今もくっきりと心に刻まれています。
SUVなのにスポーツ走行も難なくこなす
このクルマにはノーマル、パワー、エコ、ターマック、グラベル、スノー、マッドという7つの走行モードが設定されていて、ワインディングロードなどを楽しく走るためには、いうまでもなくターマックを選ぶのが最適。サーキットも、もちろんターマックで走りました。
一般道ではとても試すことのできない、そしてSUVなのにここまでする必要はあるのかな?というような速度域で走ってみたのですが、路面が乾いているコーナーでは、まるでクルマが積極的に曲がりたがっているかのような、極めてシャープな曲がりっぷりを見せてくれました。
背が高いのに車体の傾き方には唐突なところがなく、しっかりと腰で留める感じがあるから不安になるようなこともなく、ステアリングを操作する量に対して素直に的確にクルマが向きを変えていきます。
見事といえる安定感を伴って、クルマの姿からすればまったく不似合いといえるほどの高いスピードで、イメージしたままのラインをきっちりとトレースしてコーナーを駆け抜け、後輪駆動のようなリアタイヤの蹴り出しを感じさせつつ、次のコーナーに向かっていくのです。何だかまるで名車の呼び声が今も高い、一連の三菱 ランサーエボリューションを連想させるようなスポーティな感覚。
その勢いのまま路面の濡れたコーナーに差し掛かると、当然ながらクルマはいわゆるスリップを起こしやすくなるわけですが、クルマがズルッと滑りはじめると、素早く制御が利いて姿勢を安定させる方向に持っていこうとしてくれます。コースから飛び出しちゃうようなことは、まずないでしょう。よっぽど物理の法則を無視したような運転をすれば話は違ってくるかもしれませんが、人間、そんなドライビングなんてそうそうできるもんでもありませんからね。
もちろんモードをグラベルに切り替えれば、リアタイヤがズルッと滑っていく量をグッと抑えてくれますし、スノーに切り替えれば、基本的にはリアタイヤが滑ることはほとんどなく、コーナーの外側にふくらんでいこうとする動きを綺麗に抑え、前にしっかりと進んでいこうとします。
モードを切り替えることによるクルマの動きの変化は予想していた以上。見事なキャラ変を見せてくれるのです。それをドライバーが巧みに使い分けて走れば、あらゆるステージで狙いどおりの動きをしてくれるから、生半可なスポーツカーよりも自由自在。「無敵に近い存在でいられるんじゃないか?」なんて思ってしまったものでした。
またシフトセレクターの横にあるイノベーティブペダルスイッチを押すと、アクセルペダルを戻したときの回生ブレーキによる減速力がグッと強くなって、いわゆるワンペダルドライブをすることも可能になります。これに慣れてさえしまえば、右足のアクセルペダルの踏み込み具合、戻し具合だけで、街中での走行はもちろん、ワインディングロードをスポーティにドライブすることすらも楽しめてしまえます。
世界トップクラスのモーターの制御技術
いうまでもないことですが、それもこれも電子制御と抜群に相性がよく、なおかつ瞬間的に持っている力をアウトプットできるモーターで動力を路面に伝えるクルマだから可能なこと。ここまで緻密で素早く正確な駆動を生み出すことは、エンジンのみのクルマには求められないものです。モーターというものが持っている特性を電子制御で極めて緻密にコントロールしていくことで、4つのタイヤそれぞれが常に適切な駆動力を生み出していくという技術が確立されているのです。
三菱は電動化によるメリットを最大限活かして、安全性と走る楽しさの両面をグッと高めたクルマ作りを行っているわけですね。その点においては世界でもトップクラスにあるのだと強く感じます。
とまぁちょっとオタクっぽい領域に踏み込んで分析めいたことをしてしまいましたが、通常は細かいことを考えずにモードをノーマルに据えておけば大丈夫。仮にクルマに詳しくない人が乗っても、ふとしたときに「何だか具合がいいぞ」「何か凄いぞ」なんて感じられるはずです。技術というものはすべての人にとってのメリットになっていることが重要なわけで、そうした包容力のようなものを、このクルマはしっかりと持っています。
それ以外の部分に関しても進化のほどがうかがえます。車室内は極めて静かだし、乗り心地はとても快適だし、インテリアもかなり上質になっています。キモのプラグインハイブリッドのシステム関連だけじゃなく、従来型と較べて全方位的によくなっているのです。さすがは三菱のフラッグシップモデル、といったところでしょう。
最先端を味わいたい人にアウトランダーPHEVはおすすめ
ちなみに新型アウトランダーPHEVには5人乗りだけじゃなくて7人乗りも用意されています。その3列目となるリトラクタブル式シートにも工夫があって、開閉はとても楽でした。室内が座席周り、荷室ともに使い勝手がいいことはいうまでもありません。
もしSUVの購入を考えていて、なおかつ市販車に導入されている中の最先端技術を味わってみたいという気持ちがおありなら、このアウトランダーPHEVは素晴らしい選択肢になると思いますよ。
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※この記事は2022年7月現在の情報に基づいています。