中古車価格を左右する大きな要素のひとつが「走行距離」。当然走行距離が延びているもののほうが安く買える傾向がありますが、一方で距離がかさんだ中古車は手を出しにくいものです。もともとの価格が安い軽自動車だとなおさら。軽自動車購入時、多走行車をどのように考えて選べばいいかを考察します。
中古車の価格を決める大きな要素が走行距離
中古車選びをする際に気になるのが走行距離。これは普通車だろうと軽自動車だろうと中古車を探す時には誰もがチェックするポイントだと思います。
これは少しでもコンディションのいいクルマが欲しい→それなら走行距離が少ない方がいい、という価値観が広く浸透しているから。
中古車を選んでいる方に一般論として「こういうクルマを探した方がいいよ」とアドバイスするなら、わかりやすい目安として「走行距離が少ないクルマの方が安心だよ」となるわけです。
そんな一般論があるわけですから、走行距離は中古車屋さんが値付けする際のポイントのひとつとなります。
同年式、同グレードで同じようなコンディションの2台の中古車があったとしましょう。一方の走行距離が5万km、もう一方が10万km。この場合なら当然ながら走行距離が少ないので5万kmの方を買いたいと思う人の方が多いはず。となれば10万kmの方を安くしないと売れませんから、中古車屋さんも安いプライス設定とせざるを得ないワケです。
5万kmと10万kmという極端な例になりましたが、5万kmと6万kmでも、5万kmの方が魅力的に映るということは、みなさんも経験されたことがあるのではないでしょうか?
平均的な年間走行距離は8000km
昨今では、8000kmぐらいが平均的なドライバーの年間走行距離のようです。
中古車の購入ガイドなどでは、必ず平均的な年間走行距離の話が出てきます。なぜかと言えば、年式に対してその中古車の走行距離が多いのか少ないのかを判断するため、基準となる年間走行距離を知っておいた方がよいからです。同じ5万kmの中古車でも年式が3年前のモデルだと、「これまでのそのクルマの持ち主は、平均的な数値よりもかなり多く走る人であった」となり、逆に10年前のモデルだと、「あまりクルマに乗らない人だったか、もしくは乗られない期間が長かった」などの推測ができるわけです。
ちなみに年間走行距離が平均値に近い方がいいということは、特にはないと思います。かつてはオドメーターの巻き戻し(走行距離の改ざん)などを行う悪質な中古車店があったので、年間走行距離からかけ離れて少ない中古車は要注意なんてこともありました。しかし現在では車検時に走行距離が記録されるなど、改ざんされにくいシステムが出来上がっています。
10万kmはひとつの大きな節目
10万kmを超えた中古車は買うべきか、買わざるべきか? 昭和の時代まで遡ると、10万km超えの中古車は、故障などのトラブルに悩まされることが多かったようです。その頃のイメージが現在でも一般論となっていて、走行距離10万kmを超えたクルマは買う側にしてみると選択肢から外れてきますよね?
実際に故障などが多くなるのでしょうか? 現在中古車として多数流通している2000年以降の普通車であれば、10万kmを超えていてもトラブルが頻発するということは稀なように思います。
しかし先ほど書かせていただいたように、走行距離は中古車のプライスに大きな影響を及ぼすので、10万kmを超えた中古車は商品価値が低くなる傾向があります。そんなこともあり、クルマにとって10万kmというのは、機能面よりも価値的な側面で、現在でも大きな節目といえるでしょう。
では10万km超の軽自動車はどうか? 筆者は3年半前に走行14万km超の中古車を実際に購入し現在も乗っていたりします。中古車は個体ごとにコンディションが異なるので、あくまでも一例となりますが、10万km超の軽中古車の実例をレポートさせていただきましょう。ちなみに現在のオドメーターは、21万kmを超えています。
10万km超の軽自動車で実際に発生したトラブル例
筆者が乗っている軽自動車は2005年式(平成17年式)のホンダ ライフ。14万km超で購入し、これまでに3年半で7万kmほど乗っています。ノントラブルだったかというと残念ながらそのようなことはなく、これまでにいくつかの故障が発生しています。故障箇所としては、以下のようなものがあります。
■20万kmまで
・ATセレクターレバー内の部品が破損し、セレクターレバーが動かせなくなる
・スパークプラグの消耗、もしくは点火コイルの劣化による点火不良
・PCVバルブ(ブローバイ還元装置)不良に伴う接続チューブ破れ
■20万km超から現在まで
・エンジンマウント破損により異音と振動が発生
・エアコン不良
上記修理の他、エンジンマウント交換のついでにできるタイミングベルトなどのベルト類、ウォーターポンプの交換や、摩耗により交換時期を迎えたブレーキパッドやタイヤの交換を行っています。地方での取材や撮影が多いため、年間走行距離は先ほど記した8000kmを大きく超える約2万km。かなり過酷な使用条件だと思われます。
10万km超と20万km超ではトラブルが変わる
この原稿を書くにあたり、あらためてトラブルと発生時の走行距離を見直してみると、20万kmまでは、故障が発生しても修理費用が小額のもので済んでいました。しかし20万kmを超えてからは、エアコンなど修理費用がかさむ部分が壊れているのがわかります。
走行距離が10万kmを超える軽自動車の中古車を購入される方は、趣味性の強い車種でなければ、「長期にわたって乗り続けるつもりはない」という方が大多数でしょう。「免許を取得したからとりあえず」とか「急遽足グルマが必要になったからとりあえず」など「とりあえず」的な用途が大部分となるはずです。
そういった用途の場合、「次の車検まで」なら2年間、長くても「もう一回車検を通して……」となれば4年間、無事に走ってくれればOKですよね? 距離的には、先ほど書いた平均走行距離である8000kmから割り出せば、2年なら1万6000km、4年なら3万2000km。
ということは10万km台前半の中古車であれば、4年乗っても20万kmに届きません。だとすると乗り換えが必要となるようなトラブルに遭遇してしまうことはなさそうな気がします。あくまでも筆者の平成17年式ライフに乗っての一例からの判断となりますが……。
10万km超え軽自動車購入時の心構え
走行距離10万kmを超えた軽自動車の中古車価格といえば、年式も10年前後が経過したクルマであることから、商品としての最大の魅力は安さとなってしまいます。だから総支払額が30万円前後、つまり流通する軽自動車の中では最も安い価格帯に属するものがほとんどとなるでしょう。
現在流通している2000年以降の車種であれば、メンテナンスも含め普通に乗ってきた10万km超程度であれば、まだまだメカニズム的に大問題はないと思います。
しかし相手は機械なので、消耗部品の交換などはいつか必要になってきます。消耗部品は、ブレーキパッドやタイヤ、バッテリーだけではなく、オイルシールやホース類などエンジンや駆動系、足回りやブレーキなどのゴム製品も含みます。
また2000年以降は、樹脂製パーツが多用されるようになったため、経年劣化により思わぬところが壊れるようになってきました。10万kmを超えると、これらの消耗部品や樹脂パーツの交換が必要になったり、部品の故障が始まったりするのです。
樹脂部品に関しては、車種ごとに異なるので一概には特定しづらいのですが、筆者のホンダライフの場合だと、ATのセレクターレバーを構成する樹脂パーツのひとつが、経年劣化により破損しセレクターレバーがPから動かせなくなりました。
このように10万kmを超えると軽自動車に限らず、ある程度の小さな故障は発生してもおかしくはないといえます。10万km超の中古車を選ぶのであれば、そんなトラブルが起きて当然と思っておく方がいいでしょう。
とはいえ昭和の時代からすれば圧倒的に10万km超の中古車に発生するトラブルは減っていると思います。10万km超の軽自動車でも「乗っている間、ノントラブルだった」というオーナーは決して少なくはないはずです。
結局のところ10万km超の軽中古車は買いか?
誰しも故障することを望んではいないはずです。10万km超の軽中古車を選ぶ人もそれは同じ。いやむしろ車両購入費用や車検費用を除けば、クルマに余計なお金を掛けたくない人が多いと思われるので、10万km超の軽中古車を買う人の方が、メカニカルトラブルに遭遇したくないと考えているかもしれません(筆者自身もそうです)。
一般論ではありますが、故障の可能性を低くしたいのであれば、新車を購入するか、中古車なら走行距離の少ない高年式を選ぶべきというのが、現実的なアドバイスとなります。しかしそれではそれなりの予算を用意する必要があります。
低年式で10万km超の中古車は故障のリスクが高いか低いかで言えば高い側に属します。しかし前述したとおり、2000年以降の軽自動車なら、メカニズム的には10万kmを超えたからといって爆発的にトラブルが発生しやすくなるということはないと考えていいでしょう。そして10万kmオーバーの中古車を選ぶのであれば、定期点検記録簿がしっかり残っていて、メンテナンスの履歴がわかる車を選びたいところです。
10万km超えの軽中古車はそれなりのリスクはある。多少のトラブルは仕方ないと思えるか
走行距離がかなりかさんだ中古の軽自動車は、走行距離が少ないものに比べればそれなりのリスクはあります。しかし細かなトラブルが発生しても、「仕方がない」と思える気持ちの余裕が必要不可欠だと思います。そのように思える人であれば、10万km超の軽中古車を「とりあえず」の愛車として買うのは「あり」でしょう。