「嶋田智之の目」日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車はどのように決まるのか?

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毎年年末に1年間でもっとも優れたクルマを決める日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)。『2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー』は日産 ノートシリーズが受賞! その選考委員である嶋田智之さんに、映えある賞が決まるまでの過程を教えていただきました。

日本カー・オブ・ザ・イヤーはどうやって決まる? その秘密を解説

2021年12月10日、『2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー』の最終選考会が行われました。

ご存じの方もおられるかと思いますが、日本カー・オブ・ザ・イヤーは国内にいくつか存在するカー・オブ・ザ・イヤーの中で最も古くから行われている、日本を代表する自動車の賞典と言われています。毎年の結果は、海外のメディアでも報道されています。

さて、この“今年の1台”はどうやって決定されるのか。選考にあたる人はわりと胃が痛くなるような想いをしながら真剣にコトにあたっているのですが、実状は今ひとつ知られていないようなので、今回はそのお話を少々。

選考は、大のクルマ好きが本気で行っています

まず、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会という運営組織が存在します。これは雑誌、WEB、テレビ番組、ラジオ番組などいわゆるメディアに携わる法人の代表者で構成されていて、2022年1月現在、39の媒体が加盟しています。

実際に選考投票にあたるのは、それら媒体から推薦された候補者の中から実行委員(加盟媒体の代表)全員の投票によって上位60名に入り、なおかつ実行委員の過半数の人々を得た、60人を上限とする選考委員。

いわゆる自動車ジャーナリストを中心に、アナウンサー、レーシングドライバー、コメンテーター、演出家、音楽プロデューサー、ゲームプロデューサー、YouTuberなど肩書きはさまざまですが、いずれも自動車に関しての情報発信を生業にする人たちです。

一方、“今年の1台”の候補となるのは、前年の11月1日から当該年の10月31日までに日本国内で発表された乗用車。いくつか細かい規定はあるのですが、継続して生産され、誰もが特別な手段なしに購入できることが大前提であり、投票までに選考委員がテストをすることが可能であること、も条件のうち。つまり選考委員は、選考対象となったクルマの全てに試乗しないとなりません。

試乗会が開催されれば極力参加させていただき、参加できない場合には後にクルマをお借りして個人的にテスト走行をする、という感じです。ちなみに実行委員も選考委員も、無報酬です。選考委員はフリーランスかそれに近い立場であることがほとんどなのですが、試乗にまつわる経費はもちろん自腹です。

何を思ったか時々「でも、メーカーとかから御礼金みたいなのが入るのでしょ?」なんて訊ねられたりすることもあるのですが、いや、まったくありません。選考委員をやっていることで金銭的な利益が生まれることはなく、むしろ出費がかさみます。出費がかさむ代わりに“今年の1台”を選ぶことに加われる栄誉に預かることができるようなもの。皆、クルマが大好きなのです。

選考時は、冗談抜きでゴハンが喉を通らなくなるのです

選考に関しては、二段階に分けて行われます。第一次選考は、対象車がズラリと並ぶリストから、最終選考の対象として相応しいと考える10車を選んで投票します。そこで選ばれた10車は“10ベスト”と呼ばれ、日本カー・オブ・ザ・イヤーの候補車となります。そして第二次選考(=最終選考)は、選考委員ひとりずつが25点の持ち点を10ベストの中の5車に振り分けて投票、その合計得点を持って最終結果となります。

ここで選考委員にとって苦悩のタネとなるのは、まずは選考の対象となるクルマそれぞれのタイプ、性能、目指す方向、対象ユーザー、投入されている技術、販売される価格帯……などなど、ありとあらゆる要素がバラバラだということ。

例えばパリンパリンのスーパースポーツカーとファミリー向けの大衆ミニバンが同じ土俵の上に並んでいたりするわけです。そしてもうひとつは投票のレギュレーション上、25点の持ち点のうち10点を最も高く評価する1台に配分し、残りの15点を任意に4台へ振り分ける、という作業を乗り越えなければならないこと。それが本当に難しいのです。

特に“これは素晴らしい!”なんて感じるクルマが豊作な年などは、同点1位とかにしたくなります。でもそれは許されず、あちらを立てたらこちらが立たずで、深く深く悩み込みます。

忖度なんてしないけれど、1台のクルマが世に出てくるまでには数十億の予算が費やされ、末端まで含めればおそらく数万人が関わっているわけですから、軽いノリでホイホイ決めちゃうなんてことも、できるわけがありません。大袈裟でなく、ゴハンが喉を通らなくなって胃まで痛みはじめる年だってあるくらいなのです。

『2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー』は特に選考が難しかった

スバル BRZ

『2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー』は、実はそういう感じでした。バラバラの「これは素晴らしい!」が、同じ土俵の上に並んでいたのです。

実は僕も選考委員の端っこに置いていただいていて、僭越ながら“ドライバーにとって楽しいクルマ、走って気持ちいいクルマに点を投じます”みたいに公言しちゃっているからまだいいのですが、それでも今回は例年以上に悩み込みました。走らせて楽しさや気持ちよさが感じれるクルマが多かったからです。

結果として僕の点数配分は、トヨタ GR86スバル BRZに10点、シボレー コルベットに9点とかなり極端。残りの6点をメルセデス・ベンツ Cクラスに3点、日産 ノートノートオーラシリーズに2点、フォルクスワーゲン ゴルフゴルフヴァリアントに1点、とさせていただきました。日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式サイトに掲載されている集計後の得点表と較べてみると、ずいぶんな違いがありますね。でも、それぞれちゃんと理由があるのです。

私、嶋田はこのように考えて選考しました!

トヨタ GR86スバル BRZは、ただでさえ出来のよかった先代からさらに大きく進化を遂げ、スポーツカーとしての純度が驚くほど高まって、世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルに達しているから。

ここまで走らせる楽しさと操縦する歓びを強く感じさせてくれる本格的なスポーツカーが300万円で買える、というのは素晴らしいことだと思うのです。

商売になりにくいスポーツカーというものに真摯に向き合って、まったく手を抜くことなく作り上げたトヨタとスバルの心意気にも、その結晶として登場したクルマの出来映えにも、感謝したい気分です。そう、クルマの楽しさの象徴とも言えるスポーツカーの火を、決して絶やしてはならないのです。

シボレー コルベットは、フロントエンジン+後輪駆動という伝統を捨ててまでイタリアのライバルたちに立ち向かおうとし、半分以下どころか3分の1近い売価でありながら、1点の曇りもなく匹敵しているスーパースポーツカーをデビューさせたこと。

コルベット初のミドシップでありながら、最初から完成度の高いモノに仕上げてきたこと。そして今どき自然吸気の大排気量V8プッシュロッドという、放っておけば絶滅してしまうエンジンを開発し直してまで搭載していること。

楽しさや気持ちよさでは、GR86BRZを越えています。1,200万円からという値段は明らかにバーゲンプライスだと思うのですが、GR86BRZは頑張れば若者でも手が届きそうな値付けで、最後の最後にそこを重視して決めました。本当なら同点1位にしたかったぐらいなのです。

メルセデス・ベンツ Cクラスは、僕にとっては意外な選択でした。

メルセデス=よくできたクルマ、メルセデス=高級車、というようなイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、そこは概ねそのとおり。完成度は高いし、まるで小さなSクラスといった印象でした。

が、まさかセダンとしては下位の方に位置するCクラスが、AMGモデルでもないのに、こんなにスポーティで楽しいクルマに仕立て上げられているとは思っていませんでした。昔のファンが一番よかったと評する頃の独特の重厚な乗り味が戻ってきているようなところもあり、それに加えて思わずニヤリとしちゃうくらいのフットワークのよさがあるのです。

少しもワル目立ちのしない、いつでもどこにでも乗って出て当たり前のようなセダンで、このフットワーク。そのギャップにも惹かれました。

ノート/ノートオーラ/ノートオーラニスモ/ノートオーテッククロスオーバーは、エンジンで電気を作ってバッテリーに送り、その電気でモーターを駆動して走行するというe-POWERの仕組みの進化が、まずは大前提にありました。大幅にパワフルになって、制御もさらに巧みになって、モーター駆動のクルマとしての美点がさらに際立っているのです。

そのうえで通常のノート、上級モデルとしてのプレミアム性を持つノートオーラ、それをニスモブランドの名の元でスポーティにチューンしたノートオーラニスモ、オーテックが念入りにリフトアップ+セットアップを加えて走れる世界を広げたノートオーテッククロスオーバーといった4つの個性を作り上げたのも見事。

特にノートオーラニスモはパワーとトルクのピークはそのままに、モーターの制御を大胆に変えることでヤンチャとすら言えるほどのスポーティな性格を与えていて、今後の電動車両の可能性のひとつをカタチで示してくれました。クルマの楽しさと合わせて、かなり感銘を受けたのです。このシリーズが『2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー』を受賞したのにも、もちろん素直に納得がいきました。

フォルクスワーゲン ゴルフ/ゴルフヴァリアントは、この8代目で本格的な電動化が行われ、48Vマイルドハイブリッドが与えられました。

軽く驚かされたのは、それと1リッター3気筒エンジンとの組み合わせ。特に発進や立ち上がりの時に力不足でじれったい思いを感じることの多い小排気量なのに、そんな素振りをまったく見せず、気持ちよく滑らかな加速を見せるのです。1.5リッター4気筒のほうと乗り間違えたかと思ったほど。モーターのアシストが、見事に弱い部分を補っているのですね。

ゴルフはもともとスポーティに走るのも苦手としないクルマです。マイルドハイブリッドはその性格もさらにくっきりとさせていて、必ずしも速いわけじゃないけれど何だか常に楽しい、といった印象が強く残りました。

“世界のベンチマーク”と呼ばれるのは伊達じゃないな、とあらためて感じさせられたのでした。ゴルフは“2021-2022 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞しましたが、僕としてももちろん異論はありません。

【まとめ】2022年の選考も頭を悩ませそう……

と、勢いで説明などしてしまいましたが、配点できなかったクルマがダメだったなんてことは微塵もないのです。あくまでも“ドライバーにとって楽しいクルマ、走って気持ちいいクルマ”という自分の基準に沿って上から順に選んだ結果であり、残る5車もそれぞれに異なる魅力を持ったモデルばかり。それはキッチリとお伝えしておきたいと思います。

日本カー・オブ・ザ・イヤーは選考委員がいろんなことを考えたり悩んだりしながら時間と労力をかけてマジメに選んでいるのです、ということをお伝えしたかったのですが、僕以外の、さまざまな知見を持った59人の優れた自動車のプロたちも、同じかそれ以上に情熱を傾けて選考にあたっています。

どなたかどういう理由で何にどう配点したのか。それは日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式サイトから見ることができますので、アクセスして“選考結果 2021-2022”をご覧になり、そのページの中にある“得点・投票理由はこちら”のところをじっくり見てみてください。

https://www.jcoty.org

2022年も、どうやら魅力的なクルマがたくさんデビューすることになりそうです。また頭を悩ませることができるのが、ちょっとばかり楽しみです。……その前に、僕がまた選考委員に選んでいただけるかどうか、という問題もあるのですけどね。

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