2022年9月に発売されたマツダの新世代ラージ商品群(詳しくは後述)の日本市場投入第1弾、CX-60(シーエックス シックスティ)の公道試乗会に参加しました。今回の試乗車は、直列6気筒3.3Lディーゼル・ハイブリッド車です。
新世代ラージ商品群とは?
マツダは、2021年10月に2022年以降のクロスオーバーSUV商品群の拡充計画を発表、米国新工場で生産する「CX-50」や、ラージ商品群の「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」を2022年から翌年にかけて新たに導入することを伝えました。
CXシリーズは、数字が大きくなっていくにつれてボディサイズも大きくなる命名規則になります。したがって、CX-60はラージ商品群では最も小さいサイズとなります。
その発表でCX-50は、マツダ3、CX-3、CX-30、MX-30と同じスモール商品群と伝えられていました。ただ、発表の中にCX-5、CX-8は含まれていませんでした。この2モデルは日本市場では重要なモデルで、新世代ラージ商品群とともに併売されるようです。
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EVシフトに逆行!新世代ラージ商品群は新開発直列6気筒エンジン縦置き・FRレイアウトを採用
グローバルでEVシフトが急速に進む中、マツダの新世代ラージ商品群は新しく直列6気筒エンジンを開発、FR(フロントエンジン・リアドライブ=後輪駆動)レイアウトでパッケージされます。
直列6気筒(略称:直6)エンジンというのも、いまどきのクルマ作りの流れとは逆行しています。直列6気筒は、エンジンが長いため縦置き(車両に対して前後方向にエンジンを置く方式)にすると、ボンネット部分を相当に長くしないといけません。現在のクルマは、高い衝突安全性が求められるため、クラッシャブルゾーン(衝突時の衝撃を吸収させる部分)などを確保しなければならず、直6では開発しづらくなってきています。このため、かつては直列6気筒のモデルの多くは、モデルチェンジでV6(V型6気筒)に置き換えられてきました。V6は、気筒を3つずつ並列となるため、直6の約半分の長さになり、レイアウト上の制約が大いに緩和されます。一方でここに来て環境性能への対応は直6の方が有利という見方もあり、マツダ以外にもメルセデス・ベンツが新しい直6を投入しています。
とはいえ大局的に見るとEVシフトの中、新世代ラージ商品群をEVにするよ、ではなく「内燃機関(エンジン)でいきます!」といい、さらに「大排気量直列6気筒縦置きFRでいきます!」という、尖った宣言をマツダはしたのでした。
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なぜマツダは直列6気筒エンジンに?
直列6気筒縦置きFRレイアウトは、往年の高級車セダンの中核的なものでした。その代表的なものは、「シルキーシックス」という敬意をこめた愛称を持つ、BMWの直6エンジンでした。
直6FRのクルマは、前輪とフロントドア前端のあいだが長くなる「プレミアムレングス」と呼ばれる部分が存在します。すなわち、直6はプレミアムを象徴するエンジンでもあるのです。
ただ、新世代エンジンが環境に配慮していないわけではなく、しっかりと考えられています。マツダの開発担当者は「内燃機関(エンジン)でも、バイオ燃料でゼロ・エミッションを達成できる」と話していました。また、大排気量化することで燃費も良くなるといいます。さらに、電気モーターを組み合わせたハイブリッドやPHEVもラインナップに加えています。
マツダが全車EV化の方向に進まず、内燃機関車でEVシフトの中を突き進む姿勢、筆者としては拍手喝采を送りました。
いざ試乗!めっちゃいいけど気になるところが…
マツダ車の内外装の質感の高さは、すでに定評を得ています。CX-60もすばらしい。ゴテゴテさせずにシンプルなデザインでまとめる「マイナスの美学」がマツダのポリシー。乗り出した瞬間のボディの剛性感、力強い加速で「めっちゃいい!」と感じました。しかし、40km/hを超えたあたりから、路面の凹凸に対しての足の固さが気になり始めます。それは、高速道路での走行において特に継ぎ目を超えるときは顕著に出ました。
ワインディングのハンドリングは快適そのもの。登り坂の高速コーナーは得意ですね。実に気持ちがいい。試乗中はあいにくの雨でしたが、ワインディングを走っていても頼もしい安心感がありました。
足の固さの原因は、サスペンションにピロボールが使われているからでしょう。サスペンションには可動部分が多く、金属と金属をつなぐ部分には、ゴムブッシュを使うのが通常です。しかし、ゴムブッシュは伸び縮みするので、路面からの入力に足してジオメトリー(タイヤの地面に対する角度など)が微妙に変化します。この変化は、日常走行にはあまり影響ありませんが、タイムを競うレース車両には悪影響を与えます。
ピロボールは、ゴムブッシュを使わずに可動させるため、ジオメトリーを変化させることがありません。しかし、金属と金属を直接触れ合わせる構造のため、伸び縮みがないダイレクトなハンドリングが実現できます。このため、レース車両の足回りにはピロボールがよく採用されています。
CX-60の開発担当者は、ピロボールが乗り心地に与える影響を認識した上でピロボールのネガな乗り心地は、「乗っているうちにすぐに慣れるレベル」で、全体的な乗り味はよりよいものに仕上げていると語っていました。
筆者としては、正直この足の固さは気になるレベルでした。マツダの新型車って、発売直後のモデルに足が固いことが何度もあり……あとから足回りの改良を入れたケースが多々あります。この点は、マツダさんに改良をお願いさせていただきました。
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燃費がいい!
カタログスペックでは、21km/L(WLTCモード)。試乗車に乗った瞬間の燃費は16km/L、試乗時に燃費計をリセットして走行したときは、18km/Lでした(7割高速道路、3割ワインディング)。3.3Lという大排気量で、約2トン(1,940kg)の巨体を走らせてこの燃費は立派です。
CX-60とCX-8のプレミアムレングスを比較
CX-60は、プレミアムレングスのところにダミーのエアダクトの装飾を入れています。マイナスの美学を提唱するマツダは、普通はただの飾りは排除するのですが、CX-60に関してはプレミアムレングスを強調するため、あえて装飾を入れたとのことです。
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CX-60の総合評価は◯◯点!
筆者が試乗したクルマを10項目×5段階で評価、★1つを2点として100点満点の総合評価として採点します。各項目、評価の理由をお伝えしますが、あくまで筆者のインプレッションによるものですので、ご参考としてご覧ください。
1 | 内外装デザイン | ★★★★★ | さすがマツダ。高級感ある内外装デザイン。特にインテリアは高級輸入車と肩を並べる仕上がりの良さ。 |
---|---|---|---|
2 | パワートレイン | ★★★★★ | 新開発したエンジンが直列6気筒だったことだけでも星5つをあげたいくらい。とてもパワフル。トランスミッションとの相性の悪さは感じなかった。 |
3 | 足回り | ★ | ごめんなさい、今後への期待を込めてあえて辛口の星1つの評価にさせていただいた。 |
4 | 燃費・電費 | ★★★★★ | 直列6気筒3.3Lとは思えない。マイルドハイブリッドだがストロングハイブリッド同等の低燃費。素晴らしい。 |
5 | 居住性 | ★★★★ | ボディサイズが大きいので、室内空間も広くとりやすい。静粛性もしっかりとあり快適。 |
6 | 装備・使い勝手 | ★★★ | 装備が何か不足しているという感じはしなかった。使い勝手も悪くない。長距離を走ったら何か気が付くのかも。短距離の試乗では不具合なし。 |
7 | 安全装備・運転支援 | ★★★★ | ひとしきりの先進安全装備は付いているが、先進的な技術はない。ハンドル操作支援は成長している。 |
8 | 価格 | ★★★★ | 適正な価格ではあるが、最安価グレードが300万円をキリ、最も高いグレードがPHEVで仕方ないとはいえ539万円という大きな開きがある。 |
9 | 乗りやすさ | ★★★ | 運転しやすいが、「乗りやすさ」の視点では突出したものがなかった。が、悪い意味ではない。 |
10 | クルマの愉しさ | ★★★★ | マツダらしさを感じるパワフルな走りはとてもいい。 |
総合評価は76点
クルマとしての総合力は非常に高い一台。足回りの固さ以外は平均点以上。今後のマツダに期待したいクルマでした。
マツダ CX-60 試乗車のスペック・価格
グレード:XD-HYBRID プレミアムモダン
車両価格:547万2,500円
全長:4,740mm
全幅:1,890mm
全高:1,685mm
ホイールベース:2,870mm
車両重量:1,940kg
エンジン:直列6気筒ディーゼルターボ
∟最高出力:187kW(254ps)/3,750rpm
∟最大トルク:550N・m/1,500〜2,400rpm
モーター最高出力:12kW(16.3ps)/900rpm
モーター最大トルク:153N・m/200rpm
WLTCモード燃費:21.0km/L
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(文・撮影:宇野 智)
※この記事は2022年9月現在の情報に基づいています。