スピード違反者実録「免停講習・免許返還編」オービスを光らせてから免停が終わるまで…Vol.6

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ある夏の日、都内在住の某A氏が高速道路でオービスを光らせてしまいました。ほめられた話ではありませんが、自分自身と皆様への戒めとして、光らせてから通知書が届き、免停期間する終了までのA氏の一部始終を記事化し共有させていただきます。掲載される書類等の画像はすべて実物です。

宇宙一詳しい、オービスを光らせてから免停が終わるまでのスピード違反者実録記事をめざしたシリーズ記事、ついに完結します!今回は、講習2日目の朝から始まります。

オービスを光らせてから免停講習1日目まで

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11.講習2日目のプログラム

講習室内に掲示されていた講習2日目のプログラムは次のようになっていたとのことです。

9:00〜10:20 運転シミュレーターによる診断
10:20〜11:20 運転適性検査(科警研編73-2)の診断結果に基づく指導
11:20〜12:10 交通法令と安全運転の知識及び方法
12:10〜13:10 昼休み
13:00〜13:50 運転シミュレーターの診断結果に基づく指導
13:30〜14:00 考査
14:00〜14:50 事故事例による研究に基づく安全運転の方法
14:50〜15:20 道路交通法令の知識(点数制度)
15:20〜15:30 閉講(安全運転の心構え)

※講習会場内は写真撮影禁止のため、A氏が掲示されていたプログラムを一字一句忠実に手書きで残したメモを元に記載。

それでは、A氏が語ってくれた各プログラムの内容をまとめて書きます。

9:00〜10:20 運転シミュレーターによる診断

朝一番目は、運転シミュレーターの体験走行でした。3D映像の運転シミュレーターで、様々な走行シーンにおいての危険予測を中心とした診断が行われました。体験するシーンは、『車両の死角の危険』『生活道路の危険予測(夜間・薄暮の歩行者横断)』『悪天候(雨)の歩行者横断』の3つでした。

A氏は、3D映像でメガネを使わないタイプでしたが、講師が「気分が悪くなりやすいので、そうなったら無理せず申し出て休んでください」と言っていたそうです。実際に、1人、気分が悪くなって中座したとのこと。

体験運転は、トラップが多く“全集中”しなければ、クリアできないようなものとなっていました。A氏は、数度事故を起こしたそうです。

A氏によると、映像の最初に三菱電機系の会社がクレジットとして表記され、映像の中に出てくるクルマは三菱車ばかりで、中には、ランサーエボリューションやパジェロといったクルマ好きにはたまらない車種も登場したそうです。また、講師の話では、3D運転シミュレーターを導入しているのは、全国でも東京だけだとか。1台100万円以上するとも語っていたそうです。シミュレーションルームには、40〜50台ほどが設置されていたので、ここだけでも4、5,000万円かかっていることになりますね。

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10:20〜11:20 運転適性検査(科警研編73-2)の診断結果に基づく指導

1日目に行われた、IQテストのような運転適性検査の結果が配布され、結果内容の説明が行われました。プログラム名に「指導」とありますが、個別指導ではなく全体的な指導で、運転に適性がない人も運転せざるをえないことが多く、自分自身の適性をよく知った上で安全運転に留意せよ、逆に適性がある人は過信はせず、自重した「かもしれない運転」を心掛けるようにと諭していたとのことです。

A氏の運転適性結果は、講師が言うにはベストの総合判定4だったそうです。5が最高評価ですが、滅多にないそうで、5がつくと自信過剰につながりやすく逆に危険性が出る可能性があるのだとか。ただ、総合判定4の人は、スピード違反で一発免停を食らっていることが多いそうです。

11:20〜12:10 交通法令と安全運転の知識及び方法

免停期間が45日の短縮となるかどうかが決まる考査(テスト)前の最終プログラムです。講師が伝えた考査に出るポイントを以下にまとめます。

  • ・交通事故が発生したら、まずは負傷者の救護、続発事故の防止の措置をとってから110番通報する。
  • ・高速道路で車が故障したら、ハザードランプを点灯し、できるだけ路肩に寄せて停止し、運転者と乗員はガードレールの外側など安全な場所に避難する。
  • ・放置違反制度とは、放置車両の運転者が警察に出頭しないときや、反則金を納付しないなど、運転者の責任を追及できないときに、その車の使用者に「放置違反金」の納付を命じる制度。
  • ・運転免許証は、運転時は常に携帯していなければならない。
  • ・車の日常点検をしっかり行う。
  • ・車両進入禁止の標識の図柄の確認。

12:10〜13:10 昼休み

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13:00〜13:50 運転シミュレーターの診断結果に基づく指導

運転シミュレーターの結果が配布され、運転適性検査の結果・指導のときと同じように、全体的な指導が行われました。講師は、事故を起こして運転結果が悪くなったほうがためになる、実際の道路上では事故を起こしてはいけないが、シミュレーターで事故を体験するのは貴重である、と伝えていたそうです。

A氏の運転シミュレーター結果

13:30〜14:00 考査

問題数は全40問、そのうち2問が画像(一つは、大きな交差点を右折するときの対向車両の死角、もう一つが進入禁止の標識)でした。解答方式は、運転免許の試験と同じ◯×式。講師が言っていたとおりのポイントがそのまま出題されており、運転免許試験ではありがちな、ひねった問題はなかったとのことです。

14:00〜14:50 事故事例による研究に基づく安全運転の方法

考査を終えてからの座学は、たいくつしそうですが、このプログラムはビデオ鑑賞だったそうです。免許更新のときに見るものと同じようなもので、交通事故で家族をなくした悲しいお話がメインテーマの映像を見たそうです。

A氏は居眠りすることなく、最後まできちんと見たそうです。また、トークが下手で一生懸命な講師が「このビデオ、1本いくらするか知ってる?」と問いかけた直後にあわてて「100万円ぐらいするんですね、だってね、こんなビデオ買うところがないですからね、制作費が回収できないんでしょうね」と語っていたのが印象的だったそうです。

14:50〜15:20 道路交通法令の知識(点数制度)

最後の講習プログラムは、違反点数と免停についての説明でした。重点的に話されたのは、免停が明けてから、点数がリセットされるまでの期間でした。

違反点数がリセットされ、前歴が消えるのは、免停が終了した翌日から1年間、無事故無違反だったとき。長期講習を受ける人は前歴が1回以上となります。前歴が1回の人は、4点以上の違反で60日以上の免停になります。つまり軽微な違反なら2回、そうでない場合は一発免停級の違反1回で60日免停となってしまいます。なお、前歴は免停期間に関係なく1回となります。30日免停も90日免停もいずれも前歴回数1としてカウントされます。

A氏によると講師が「一度免停を食らってしまい、1年以内に捕まってしまうと前歴の沼から抜け出せなくなり、やがて免許取り消しになってしまう。特に、この後の1年間は十分に注意して運転してほしい」と力説していたそうです。

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点数制度一覧表

点数/前歴 0回 1回 2回 3回 4回以上
1
2 免停90日 免停120日 免停150日
3 免停120日 免停150日 免停180日
4 免停60日 免停150日 取消1年(3年) 取消1年(3年)
5 免停60日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消1年(3年)
6 免停30日 免停90日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消1年(3年)
7 免停30日 免停90日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消1年(3年)
8 免停30日 免停120日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消1年(3年)
9 免停60日 免停120日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消1年(3年)
10〜11 免停60日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消2年(4年) 取消2年(4年)
12〜14 免停90日 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消2年(4年) 取消2年(4年)
15〜19 取消1年(3年) 取消1年(3年) 取消2年(4年) 取消2年(4年) 取消2年(4年)
20〜24 取消1年(3年) 取消2年(4年) 取消2年(4年) 取消3年(5年) 取消3年(5年)
25〜29 取消2年(4年) 取消2年(4年) 取消3年(5年) 取消4年(5年) 取消4年(5年)
30〜34 取消2年(4年) 取消3年(5年) 取消4年(5年) 取消5年 取消5年

※ 34点までの行政処分
※ ( )内の年数は、免許取消歴等保有者が一定期間内に再び免許の拒否ないしは取消し、または6ヵ月を超える運転禁止処分を受けた場合の年。

15:20〜15:30 閉講(安全運転の心構え)

プログラムでは「安全運転の心構え」とありますが、実際にはたいした話はなく講師は「みんな早く帰りたいだろうから、早く終わります」と言って、予定より20分ほど早く終わったそうです。

最後に、講習指定書と運転免許停止処分書が返却され、処分書には考査の結果と短縮された免停日数、免許返還予定日が記載されていました。

運転免許停止処分書

免許証返還後のスキャンのため、「返還済」の印が押されている。

12.免許返還

Vol.4「免停講習予約編」で、A氏が受講の予約を入れたとき、予約がいっぱいで最短で免許返還が受けられないことが判明。そのときの担当警察官が、本来なら免停講習終了の翌日が免許返還日となるが、講習予約の都合上、最大の退縮期間とはならず返還日が延びてしまうことになるので、絶対に運転しないという誓約書を書けば、免許返還予定日の前日に免許証を返してくれると教えていました。

A氏は、免許証返還窓口に行き、処分書を渡してその旨を伝えると係員が短冊状の横書きの誓約書を渡し、そこに署名捺印して提出すると、5分も経たないうちに免許証が返還されたそうです(混んでいなかったためか?)。

晴れて、A氏は次の日からクルマを運転することになりました。お勤めご苦労さまでした。

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オービスを光らせてから免停が終わるまで

A氏がオービスを光らせてから、免停が終わるまでに何があったのか、振り返ってみましょう。

1.オービスを光らせて通知書が届く
2.オービス設置場所所轄警察へ出頭・赤キップを切られる
3.検察庁からの出頭命令・事情聴取を受ける
4.略式裁判結果(罰金確定)
5.罰金納付
6.行政処分の決定と開始(免停)
7.意見の聴取(警視庁本部へ出頭)
8.免停講習予約
9.免停講習費用の支払い
10.長期講習1日目
11.講習2日目
12.免許証返還

A氏が事情聴取や手続き、講習などで施設に足を運んだ回数の合計は、6回に及びました。また、オービスを光らせてから免停が始まるまで、3ヵ月と3週の経過日数があり、すべてが終わるまでに丸5ヵ月を要しています。

A氏が受けた90日免停は、免停講習の中で最も長い長期講習が必要となっているため、すべてが終わるまでにこれだけの日数を要していますが、短期講習(30日免停)、中期講習(60日免停)でも手続きの流れ、足を運ぶ回数は免停講習の日数の違いだけで、ほかは同じとなります。30日免停でも、オービスを光らせてから免停講習を受ける初日までの流れは同じ手間がかかります。

「免停を食らったら、何かと面倒なことが多い」という不純な理由だけでも、安全運転を心掛けたいという気持ちになりますね。動機は不純でも交通社会全体から見れば、事故が減ることにつながります。

A氏のめんどくさい手続きなどを見ていると、デジタル化してもっと簡略化できるはず、と筆者は思いましたが、めんどくさい手続きがあったほうが抑止力が強まるのだろうと、腑に落ちました。

筆者も気を引き締めて、交通安全に心掛けるとしましょう。

A氏からおみやげでくれた「贖いの日々」。鮫洲試験場で無料配布されている小冊子で、内容は市原刑務所に収監された死亡事故を起こした囚人が、事故を回想しながら懺悔をつづった作文が10点掲載されている。書かれる文章は、プロライターが書くそれとは異なり、稚拙な表現が散見されたがそれが逆に生々しくリアルだった。運転することが多い筆者、時折読み返して気を引き締めようと思う。

最後に、A氏の取材協力に心から感謝します。A氏は、書類をすべて時系列に沿って適宜スキャンしたり、メモを残すなどかなりの作業を行ってくれました。おかげさまで宇宙一詳しい、オービスを光らせてから免停が終わるまでの記事を書くことができました。

(了)

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※この記事は、2022年11月時点での情報を元に執筆しています。

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