日本でも注目を集める電気自動車。中でもコンパクトなスモールモビリティは、CO2削減はもちろん、地域社会を活性化させる新たな交通手段としても大きな期待が寄せられています。フランスの自動車メーカーであるシトロエンが2020年に発表した小型EV・AMI(アミ)に試乗した嶋田さんが、今後のスモールモビリティのあり方について考えました。
久しぶりにフランスとイタリアで多くのクルマに試乗してきました
実は4月の最後の8日間、フランスとイタリアへ行っていました。2年半ぶりくらいの渡航ですが、やっていることは以前と同じ。滞在しているあいだは毎日ギチギチのスケジュールで新型車の試乗をしたり取材に走ったり、です。今回も4つのブランドの日本導入前のモデルに試乗してくることができて、今、そのアウトプット作業に目を回しているところです。
そんな中で1台、コレは日本に導入されるかどうかは微妙なところですが、とてもおもしろいクルマに乗ることもできました。ぶっちゃけ、駐車場の中でのチョイ乗りです。にもかかわらず、現場にいた僕も含めて6人の大のオトナが満面の笑みで大はしゃぎしながら、かわりばんこでステアリングを握っていたのでした。
アミ、それはシトロエンが真面目に作ったスモールモビリティ
そのクルマの名前は、シトロエン アミ。全長2.4m、全幅1.4m、全高1.5mほどの、小さな小さな2人乗りの電気自動車です。
シトロエンといえば、刺さる人には強烈に刺さり、刺さらない人にはかすりもしない、独創的なクルマ作りで知られるブランドです。けれどその実は、とてもマジメに様々なことを考えている自動車メーカー。
例えば乗り心地に関して言うなら、乗員の快適さをいかなる場合でも確保するため、とんでもなく複雑でめんどくさいサスペンションシステムを考え出して延々と発展させてきたような歴史を持っていたりもします。
そういうメーカーが真剣に考えた都市型モビリティの最適解がこれ。乗員は2名で荷室はなく、代わりに助手席の足元に小さなスーツケースくらいなら置けそうなスペースを。あるいは助手席に代わり、荷室を設けた仕様を。それは車体をミニマムにするための措置であり、おかげでスマートよりも遥かにコンパクトなクルマに。外装は強化プラスティック、車内もほとんどがプラスティック。左右のウインドウは下半分を上に跳ね上げて固定する方式。それらは車体を軽く仕上げるためで、車重はバッテリー込みで485kgという軽さ。運転席側は前開き、助手席側は後開きという奇天烈に思えるドアの開き方は、左右のドアのパーツを共通化してコストを抑えるため。おかげで税込み6,000ユーロからの販売。
パッと見ではどっちが前なのか判断に困る奇妙なスタイリングをしているけど、実は僕たち常人がクルマを見ただけではすべてを推し量れないくらいマジメに理詰めに考えられている、ということがおわかりでしょう。
一充電走行距離は70km。3時間で満充電可能
肝心のバッテリーEVとしての要素については、フロアの下に5.5kWのリチウムイオンバッテリーをマウントし、モーターの出力はたった8.2馬力。最高速度は45km/hとされていますが、これはフランスの交通安全証明書を所持していれば14歳から乗ることができる4輪版の原付みたいなカテゴリーに分類されるクルマであることに関連しています。高速道路に進入することは認められず、一般道ならその程度の速度で十分ということなのでしょう。ちなみに満充電なら最大70kmの距離を走ることができるとされていて、バッテリーのフル充電には通常の220Vのソケットを使いおよそ3時間で完了するそうです。
1台の自動車として考えたら性能的には見るべきものはないわけですが、いや、これが本当に楽しかった!オモチャみたいなカタチの中に潜り込んで静止状態からアクセルを全開にしてみると、いかにも電気自動車らしく強力なトルクが瞬時に立ち上がり、力強く加速し……たりはしません。ところてんを押し出すようなゆるっとした加速。最高速度の45km/hにも達しません。助手席に座る同行者と「……遅っ!」「何だコレ!」なんていいながらゲラゲラ笑っちゃうような走りっぷり。
ステアリングを切り込んでみると、いかにも低重心の電気自動車らしく、自分を中心に鋭くクルリとコーナリングをしはじめ……たりもしません。前後左右が小さい割に車高が高いせいで転がっちゃうことを防ぐためなのでしょう、ステアリングはビックリするくらいスローで、しっかり減速して大きく切り込んでいってあげないとちゃんと曲がってくれないのです。でも、そんなところがまた楽しかったりもするのです。不思議でしょ?
おそらくそれは、人間ふたりを移動させるための乗り物として無駄がまったくないパッケージングのシンプルでミニマルな道具を、見ているだけで楽しくなったり心が浮き立ったりするようなデザインで包み込んでいるから。
つきつめて考えれば、目的意識がはっきりしたシンプルな道具を目的のためにきっちり使い切ったり使いこなしたりすることには誰もが気持ちよさを感じるものだし、“これいいな”と感じた服に身を包まれていると気分が自然と浮き立ってくるものです。きっとそういうことなんでしょう。しかも、まるで自動車みたいに走るんですから。……いや、間違いなく自動車の一種ではあるんですけど。
シトロエンの独創性に彩られた、この小さなシティコミューター。マジメに考えてみると、これはいろいろな意味で正解に、もしくはそれに近いところにあるんじゃないか?と思えてきます。都市型モビリティとしてはいうまでもなく有効です。と同時に、現時点における電気自動車というもののひとつのあるべき姿としても。
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シティとシティターボを合わせたような魅力があるホンダ Honda e
例えばHonda eが2020年に発表されたとき、多くの人はWLTCモードで最大259~283kmという航続距離に目をつけ、批判めいた言葉をクチにしました。でも、考えてみてください。日常的に、1日200kmも走りますか?
Honda eはかつてのN360のようなホンダの歴史的名車を連想させるレトロ感のある温かみを自由な発想でモダンデザインに落とし込んだようなスタイリングをしています。世界的にも権威のあるデザインアワードである“レッド・ドット・デザイン賞”でプロダクトデザインの最高賞を獲得しているくらい、評価が高いのです。
このクルマに初めて乗ったときも、僕は笑い出しちゃったくらい楽しかったのでした。電気自動車としての走りのパフォーマンスがなかなか優れていて、見た目から想像するより遥かに気持ちよく走れたのです。
古い人ならご存じでしょうけれど、爽やかでナチュラルな初代シティとインパクトがあって速いシティターボという、似て非なるクルマそれぞれの楽しさを1台で味わえるようなクルマだったのです。フロントウインドウの下側がすべてモニターになっているようなインテリアの光景も、新鮮でおもしろいものでした。そして何よりも、このカタチの中にいる自分が何だかうれしかったのです。
こういう楽しい気持ちにさせてくれるクルマに乗っていたら、毎日きっとゴキゲンで過ごせるよな。ちょろっとどこかに用を足しにいくような移動でも、間違いなく愉快な気持ちになれるよな。そんなふうに思えて、かなり真剣に“欲しいかも”と感じたものでした。
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日本にも導入されたフィアット 500e
つい最近では、フィアット500eもそうでした。いや、1970年式のフィアット500を日常の足にしている身ですから、その気持ちはもっと大きいかもしれません。
500eの場合には、1957年に発売され、イタリアの人たちに自由に移動することの歓びやクルマを運転する楽しさといった様々なモノやコトを贈った国民車的存在、2代目フィアット500=チンクエチェントというお手本がありました。自動車を取り巻く環境が新しいフェーズへ入ろうとしているこのタイミングで、フィアットは人々に新しいカタチのモビリティを提供しようと考え、2代目チンクエチェントを模範としたのでしょう。
1950年代にすでに同じような役割を全うしていた御先祖様の存在。その世界観を、これから少し先の未来へ向けて解釈しなおし、新たなフィアット500を作り上げたのです。だから日本では区別するために“500e”と呼称されていますが、イタリア本国では“ヌォーヴァ500(=新しい500)”として販売されています。
かつての名車の再解釈版ですから、かつての名車の乗り味のおもしろいところはしっかり継承されていました。例えばステアリングをスッと切ると、前輪ばかりか後輪までもが即座に反応して、小気味よく快く曲がっていけるところとか、速いクルマでもないのに操縦する楽しさがしっかりあるところとか。それもこれも、愛らしい2代目チンクエチェントがそのまま近未来的な姿になったような、魅力的なデザインに包まれているからこそ活きるものだと思うのです。
500eの航続距離は、WLTCモードで335km。Honda eよりは長いですが、この数値にも不満を感じる人は少なくないでしょう。でも、考えてみてください。日常的に、1日250kmも走りますか?
デザインの力というのは本当に凄い。そう思っています。シトロエン アミやホンダ Honda eやフィアット 500eのような、見るからに楽しげなクルマが街中でたくさん見かけられるようになったら、きっと歩いている人も気持ちが自然と上がるはず。
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小さくて魅力的な電気自動車がたくさんある世の中になりますように
今の時点においては、例えば“東京都内は電気自動車以外進入禁止”みたいな話に、現実味はちっともありません。でも、いずれどうなっていくかなんて、誰にもわかりません。またそれとは別に、スモールモビリティがさらに重要性を帯びてくる可能性も否定できませんし、日々の走行距離の少ない人が小さな電気自動車に乗り換えるメリットに気づいて乗り換えを考えるケースも増えてくるかもしれません。
そうなったときに、クイッと気持ちをつかんでくれる小さな電気自動車がかなり少ないことがちょっと残念。お手本はいくつかあるわけですから、それらに負けない魅力を持ったクルマがたくさん登場してくれることを願ってやまない今日このごろなのです。
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※この記事は2022年5月現在の情報に基づいています。