スポーティなイメージのセダンから、クロスオーバーモデルや5ドアモデル、ステーションワゴンなど複数のボディタイプを持つ高級車へと生まれ変わった新型クラウン。駆動方式も長年FRだったものが、新型の第一弾となったクロスオーバーはFFベースで登場しました。この変化に驚いた人も多いでしょう。でもクラウンは保守的なイメージを打ち出しながらも、実は革新的な技術や変化をしてきたモデルなのです。そんなクラウンの歴史を振り返ってみましょう。
【現行型クラウンクロスオーバーの魅力】67年の歴史の中で初めてクロスオーバーを設定
4つのボディバリエーションが登場予定
2022年7月15日に行われた新型クラウンのワールドプレミアは、世界に衝撃を与えました。先代の220系クラウンから新型にモデルチェンジする際、セダンではなくクロスオーバーモデルになるという噂は以前からありました。発表会では予想通りクロスオーバーモデルになったクラウンがステージに登場しましたが、それ以外にもスポーツ、セダン、エステートという計4つのバリエーションのクラウンが公開されたのです。
さらに歴代クラウンが日本専用モデルだったのに対し、新型は約40の国と地域で発売されることもアナウンスされました。
大人のスポーティさを感じさせるクロスオーバー
まず投入されたクラウンクロスオーバーは、クーペシルエットのクロスオーバーモデル。大径タイヤとフェンダー部分のモール処理で力強い印象を与えます。ボディカラーは6色のモノトーンとルーフやボンネットがブラックになるバイトーンが6色用意されました。
インテリアは水平方向に配置されたディスプレイやスイッチ類が特徴。デザイン的には華美な雰囲気というよりも、シンプルにまとめることで大人っぽい高級感が演出された印象です。
パワートレインはシステム最高出力172kW(234ps)を発揮する2.5Lのハイブリッドと、トヨタ初のシステムとなる2.4Lターボ デュアルブートハイブリッドシステムの2種類。こちらはシステム最高出力が257kW(349ps)で、2023年1月以降に発売される予定となっています。
セダンではないクラウンに驚く人も多いと思いますが、実は歴代モデルにはセダン以外のボディバリエーションも用意されていました。ここで、初代から通算14代目となった先代まで、どんなモデルだったかを振り返ってみましょう。
【初代/1955年デビュー】純日本製にこだわった高級車の先駆け
戦後、日本の自動車メーカーは欧米に追いつくために欧米メーカーのノックダウン生産を行いながら技術を学んでいました。しかしトヨタは純国産で高級車を開発することを決意。デザインも各機構も自社での開発に成功。それが初代トヨペットクラウンです。
初代クラウンは当時の日本の富裕層、法人利用としての需要を満たすもので、後部座席のドアに通常とは逆向きに開く観音開き型を採用しました。搭載されたエンジンは1.5L直列4気筒OHVで、最高出力は48psでした。1959年には2速の半自動ATであるトヨグライド搭載車も設定されました。
クラウンといえば国内専用モデルだったことが知られていますが、初代トヨペットクラウンはアメリカでも販売されました。
【2代目/1962年デビュー】ボディを大型化して快適性がアップ
2代目トヨペットクラウンの特徴はフラットなボンネットとトランク面。ボディも初代に比べて300mm以上長くなりました。ちなみに2代目にはカスタム、デラックス、スタンダードという3タイプがあり、セダンのデラックスとスタンダードの全長は4,610mm、ステーションワゴンのカスタムは4,690mmでした。ほかにもバリエーションとして商用モデルのバンとピックアップトラック(シングルキャブとダブルキャブ)も用意されました。
搭載エンジンは90ps(スタンダードは81ps)を発揮する1.8L直列4気筒。1965年には直列6気筒エンジンも追加されています。トヨグライドは1963年に完全なオートマチックになりました。
【3代目/1967年デビュー】美しさにこだわり抜いた『白いクラウン』
3代目トヨペットクラウンのテーマは『日本の美』。トヨタは1966年に全天候型のデザイン検討場(それ以前は屋外でデザインの検討をしていたそうです)であるデザイン・ドームから生まれた1号車になります。
フロントやリアだけでなくサイドにも曲面ガラスを使用。ロー&ワイドなボディラインも相まって、日本車ならではの美しさが表現されました。当時のカタログにはリアスタイルにもこだわったことが記されています。当時、高級車といえば法人需要が一般的だったので黒が主流でしたが、3代目クラウンはパーソナルユースの「ハイオーナーカー」を目指して『白いクラウン』というキャンペーンを行いました。
搭載エンジンは4種類の2L直列6気筒と2L 直列4気筒の5種類が用意されました。ボディタイプは4ドアセダンのほか、ステーションワゴン、2ドアハードトップ、商用車のバンとピックアップがラインナップされました。
【4代目/1971年デビュー】実験的なデザインを採用した『クジラクラウン』
この世代から車名がトヨペットではなくトヨタ クラウンになります。アメリカンなスピンドルシェイプが象徴的で、丸みを帯びたボディラインから『クジラクラウン』というニックネームが付けられました。
ただ、このデザインは当時の保守的なオーナーからは不評で、1973年のマイナーチェンジで早くも大規模な手直しが行われています。
搭載エンジンは2L直列6気筒。デビューから3ヵ月後には2.6L直列6気筒を搭載する最高級グレードのスーパーサルーンも用意されました。
【5代目/1974年デビュー】セダンの王道的なスタイルに回帰
大胆なデザインを採用した4代目クラウンは、商業的には成功とはいえない結果に終わりました(現在は旧車ファンから大きな支持を得ていますが)。そのため、5代目クラウンは路線を変更し、コンサバティブなデザインを採用しました。
一方でパーソナル性を一層進化させるため、新たに4ドアハードトップを設定(ただし、ピラーが残ったピラードハードトップというスタイル)。もちろんピラーレスの2ドアハードトップも設定されました。他にも4ドアセダン、ステーションワゴン、ライトバンがラインナップされました。
搭載エンジンは2.6L直列6気筒、2種類の2L直列4気筒の3種類。この世代から最上級グレードとしてロイヤルサルーンが用意されました。
【6代目/1979年デビュー】上級エンジンが2.8Lに拡大
6代目クラウンは先代のキープコンセプトなデザインを採用。4ドアハードトップは先代同様にピラードハードトップのスタイルを継承していますが、ガラスを閉めたときにちょうどピラーが隠れるようにデザインされています。
ボディタイプは4ドアハードトップ、2ドアハードトップ、4ドアセダン、ステーションワゴン、ライトバンを用意。
搭載エンジンは2.6Lから2.8L直列6気筒になり、ほかに2種類の2L直列4気筒と2.2Lディーゼルが用意されました。1982年には2.4Lディーゼルターボが追加されています。
【7代目/1983年デビュー】多くの人が憧れたハイソカー
日本の広告史に残る『いつかはクラウン』という名キャッチコピーは、このモデルにつけられたものです。世界最高級のプレステージサルーンを目指して開発され、エクステリアには光沢のある樹脂でカバーした高級感のあるリアピラーが与えられました。
この代で2ドアハードトップがラインナップから消え、4ドアハードトップ、4ドアセダン、ステーションワゴン、バンの4種類に。空前の好景気により日本ではハイソカーがブームになった時期で、クラウンハードトップも多くの人が憧れるモデルとなりました。
搭載エンジンは2.8L直列6気筒、2L直列6気筒ターボ、2種類の2L直列6気筒 NA、2.4Lディーゼルターボ、2.4Lディーゼルの6種類を用意。1984年には2.8Lが3Lに変更されています。そして1985年には2Lに日本初のスーパーチャージャーが加わりました。
【8代目/1987年デビュー】ボディサイズが拡大され、より高級路線に
この世代から3Lエンジン搭載の4ドアハードトップの全幅が1745mmに拡大され、堂々とした風格になりました。そして上級グレードには電子制御式エアサスペンション、トラクションコントロールといった電子デバイスがおごられます。
ボディ形状は4ドアハードトップ、4ドアセダン、ステーションワゴン、バンの4種類。搭載エンジンは3L直列6気筒、2L直列6気筒スーパーチャージャー、2種類の2L直列6気筒 NA、2.4Lディーゼルターボ、2.4Lディーゼルの6種類を用意。
1989年にはセルシオに搭載される4L V8エンジン搭載車を追加。1990年には2.5L直列6気筒が追加されました。また、1989年8月には、4ドアハードトップのワイドボディでグレードに『アスリート』という名称が使われるようになりました。
【9代目/1991年デビュー】ハードトップの高級化が進む
この世代から4ドアハードトップがロイヤルシリーズ、スポーツグレードがロイヤルツーリングという名称になります。また、1991年のモデルチェンジではハードトップのみが変更され、4ドアセダン、ステーションワゴン、バンは8代目の改良型が継続販売されました。
1995年にはセダンがフルモデルチェンジ。ボディがモノコックタイプになり、サスペンションも前後ダブルウィッシュボーン式が採用されるなど、高級化が進められました。
搭載エンジンは3L直列6気筒、2.5L直列6気筒、2L直列6気筒、2.4Lディーゼルターボが用意されました。
【10代目/1995年デビュー】ハードトップもモノコック化
この世代からハードトップもフルモノコックボディ、前後ダブルウィッシュボーン式に変更されました。これにより先代に比べて100kg以上の軽量化を実現。運動性能が大きく高められています。
ボディタイプは4ドアハードトップと4ドアセダンの2展開に。プラットフォームは上級グレードのクラウンマジェスタと共用されました。
搭載エンジンは3L直列6気筒、2.5L直列6気筒、2L直列6気筒、2.4Lディーゼルターボとなっています。1995年12月にはクラウン初の4WDがラインナップに加わりました。
【11代目/1999年デビュー】スポーティ路線のアスリートを設定
キャッチコピーは『新世紀クラウン』。8代目で使用されたアスリートの名が復活し、走りの性能を高めたアスリートシリーズとコンフォートさを強調したロイヤルシリーズの2系統展開となります。
この代では新プラットフォームが採用され、ボディも剛性が大幅に向上。高級セダンの新たな方向性が提示されました。
搭載エンジンは3L直列6気筒直噴エンジンのBEAMS D-4、3L直列6気筒、2.5L直列6気筒ターボ、2.5L直列6気筒を用意。2000年4月に2L 直列6気筒が追加されました。また、1999年12月には高級感を高めたステーションワゴン(エステート)もラインナップに加わっています。
【12代目/2003年デビュー】クラウンの原点に立ち返ったゼロクラウン
初代の登場から約半世紀が経過し、もう一度クラウンの原点に立ち返ってすべてを発想し直すという大きな目標を掲げて開発されたのが12代目クラウン。そのため、このモデルは『ゼロクラウン』と呼ばれ、今でも多くの人の記憶に残るクラウンとなりました。
プラットフォーム、サスペンション、エンジンなどの主要コンポーネントが一新され、スタイリングもこれまでにない躍動感溢れるデザインになりました。当時最先端だった安全装備や快適装備も惜しみなく投入されています。
搭載エンジンは3.5L、3L、2.5Lで、いずれもV型6気筒になります。
【13代目/2008年デビュー】ラインナップにハイブリッドを追加
スポーティなアスリートシリーズ、コンフォートなロイヤルサルーンシリーズに加え、燃費性能と環境性能に優れたハイブリッドシリーズという3系統で展開された13代目。ハイブリッドはトヨタ初のFR専用システムが搭載されました。
ハイブリッドがラインナップされたことでデザインもクリーンで透明感のあるスタイルを採用。ここにはユーザーの若返りを狙うという戦略も見て取れます。
安全装備として、ドライバーの眼の開閉状態をモニタリングする一層の衝突被害低減を目指した「ドライバーモニター付プリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)」を世界初採用するなど、先進性もアピールされました。
【14代目/2012年デビュー】アスリートとロイヤルで異なる表情に
先代ではハイブリッドが独立した系統になっていましたが、14代目ではアスリートシリーズとロイヤルシリーズ、それぞれに吸収されました。そしてこの世代ではアスリートとロイヤルがグリルデザインを大きく変え、スポーティなアスリートと品のあるロイヤルというイメージを強調しています。
インテリアには包む、重なり、表と裏といった日本の手工芸のような質感を取り入れ、落ち着きと高級感を両立させています。2013年9月には特別仕様車でアスリートにピンククラウンも設定されました。
ボディはスポット溶接打点を増やして剛性を高め、サスペンションアームの剛性も高めることで路面からの入力を上手にいなすような設計を取り入れています。パワートレインは2.5Lのハイブリッドと2.5L V型6気筒、アスリートには3.5L V型6気筒も用意されました。
【15代目/2018年デビュー】アスリート、ロイヤル、マジェスタを統合
15代目ではアスリートとロイヤルという2系統のクラウン、さらに上級モデルであるクラウンマジェスタを一本化。そして欧州車を意識したファストバック&6ライトスタイルを採用するなど、アグレッシブなデザインにすることでユーザーの若返りが図られました。
クルマがドライバー、街、社会とつながることでこれまでにない価値を提供するコネクテッドサービスが本格的に導入されたのも15代目クラウンのトピックです。
新しいトヨタの指針であるTNGAに基づいたプラットフォームが採用されたことでスポーティさと上質な乗り味を両立。パワートレインは2.5Lハイブリッド、3.5L V型6気筒、2L直噴ターボが用意されました。
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【まとめ】保守的なイメージだが、実はいつの時代も革新的な技術とコンセプトを取り入れてきた
クラウンというと保守的なイメージを抱く人も多いと思いますが、これまで発売された15世代を振り返ってみると、実は時代ごとに革新的な取り組みがされていたのがわかると思います。
12代目以降はセダンのみのラインナップだったものの、それより前はさまざまなボディタイプが用意されていたのもクラウンの特徴です。そう考えると新型で4タイプのボディバリエーションが用意されるというのも、実は必然的なことなのかもしれません。
先陣を切ったクラウンクロスオーバーは目標を大きく上回る受注が入っているといいます。スポーツ、セダン、エステートは市場からどう評価されるか、そして日本以外の市場でも受け入れられるか、とても楽しみです。
※この記事は2022年10月現在の情報に基づいています。