【軽自動車のOEM相関図】生産はスズキ・ダイハツ・ホンダだけ?なぜトヨタは軽自動車を作らない?

クルマを賢く買う クルマの購入ノウハウ

国内新車販売市場において勢いを増す軽自動車。そのためメーカー各社から軽自動車が販売されていますが、その多くはOEMでスズキやダイハツから供給されています。そもそもOEMとはなにか、またOEMで供給される軽自動車を紹介するとともに、なぜトヨタが軽自動車を自社開発しないかを考察します。

OEMとは?

自動車専門メディアなどでよく聞くワードのひとつがOEM。OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略語で、日本語に訳すと他社ブランドの製品を製造することを意味します。

自動車業界では委託を受けたメーカーが外観やエンブレムなどを変えて製造し他社ブランドで販売されることを指しますが、エンジンや足回りなどはほぼ同じ。ただし、スバルがトヨタに生産を委託されているGR86などサスペンションセッティングを変更し、それぞれのブランドで差別化を図るケースもあります。

現在、軽自動車を生産しているメーカー

2022年現在、軽自動車を自社で開発・生産しているメーカーはスズキ、ダイハツ、ホンダ。さらに日産と三菱が共同で合弁会社「NMKV」を立ち上げ軽自動車の企画・開発を行い、生産は三菱の水島工場が担当しています。

ただし過去には軽自動車を生産していた国産メーカーもあり、スバルは1958年に登場したスバル360を皮切りに2012年まで自社開発の軽自動車を販売していました。

またマツダも1960年に販売を開始したR360クーペから1993年に登場し話題を集めたAZ-1など自社開発で様々な軽自動車を販売。AZ-1は現在とは逆にスズキへOEM供給していました。

スズキのOEM車

スズキ アルト

アルトは世の中に大きなインパクトを与えた初代から進化を重ね、現在は2021年にフルモデルチェンジで登場した9代目が販売されています。

スズキの軽自動車のベーシックセグメント受け持つ現行モデルの大きな特徴は、歴代モデルとしては初となるマイルドハイブリッドを搭載したこと。WLTCモードで27.7km/Lと軽自動車ナンバー1の燃費を実現しています。

いまや希少となった軽セダンですが室内空間は広く取られているのも特徴的。後席に乗り込む際、歴代モデル同様に後席ドアが90度と大きく開くことで乗降性も悪くありません。

また、現行モデルはスズキの先進安全支援システム「スズキ セーフティ サポート」の主要機能が用意されるなど安全性能も備わっています。

【OEM車】マツダ キャロル

アルトはマツダからキャロルという名称で販売されています。初代は自社生産、2代目と3代目はプラットフォームやエンジンをスズキから提供を受け、内外装のデザインを自社で行いました。そして4代目からアルトのOEMモデルとなっています。

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スズキ ハスラー

軽自動車界にSUVブームを巻き起こした初代ハスラー。現行モデルは2019年にデビューした2代目で、初代のイメージを受け継ぎつつも、さらにアウトドアテイストが強調されました。

パワーユニットはスズキ自慢のマイルドハイブリッドを採用。ダイハツ車にはないハイブリッドユニットを用意していることは大きな利点となっています。

ハスラーは日常使いだけでなくレジャーユースでの使用勝手にも力が入れられ、ラゲッジルームなどに細かい工夫が施されました。

【OEM車】マツダ フレアクロスオーバー

初代ハスラーがデビューした後、マツダにフレアクロスオーバーとして2代目ハスラーもOEM供給されています。かつてはスズキ KEI(マツダ ラピュタ)やスズキ ジムニー(マツダ AZ-オフロード)もOEM供給されていました。その意味ではフレアクロスオーバーはマツダの軽SUV第3弾モデルと言えます。

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スズキ ワゴンR

ハイトワゴンのパイオニアとして1993年にデビューした初代ワゴンR。現行モデルは2017年にデビューした6代目で、初代から続くワゴンRらしいフォルムと優れたパッケージングを備えています。

現行モデルには縦長ヘッドランプを備えた標準モデルとスタイリッシュな横長ヘッドランプを備えたスティングレーを用意。また2022年8月にはワゴンRカスタムZを追加設定しました。

【OEM車】マツダ フレア

マツダは初代ワゴンRからOEM供給を受け、AZ-ワゴンという名称で販売していました。2012年の5代目ワゴンRからフレアという名称で販売しています。

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スズキ スペーシア/スペーシアカスタム

スペーシアの現行モデルは2017年に登場した2代目。初代はスーパーハイトワゴンで万年4位でしたが2代目はN-BOXに続く2位の座を確保するヒットモデルです。2022年5月の軽自動車販売ランキングで8,670台を記録し、ホンダ N-BOXが生産調整中だったとは言え初めて1位を獲得しています。

スーツケースをモチーフにボディに窪みを配置するなど遊び心が満載のエクステリアデザインや広大な室内空間を備えているなど、ユーザーに支持される理由も満載。

パワーユニットは全グレードがマイルドハイブリッドを搭載していることで燃費性能も優れておりWLTCモード燃費は22.2km/Lを誇ります。

また先進安全装備「スズキ セーフティ サポート」を搭載。ACCや車線逸脱抑制機能など安全運転支援システムも数多く備わっています。

【OEM車】マツダ フレアワゴン

スペーシアの前身モデルであるパレットからフレアワゴンとしてOEMが始まり、現行型は3代目。スペーシアのほか、スペーシアカスタム(フレアワゴン カスタムスタイル)、スペーシアギア(フレアワゴン タフスタイル)も供給されています。

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スズキ エブリイ/エブリイワゴン

商用バンのエブリイをベースにワンボックスワゴンに仕立てたエブリイワゴン。スーパーハイトワゴンやハイトワゴンと居住性は同等であるものの、ラゲッジルームの積載性はエブリイワゴンが大きく勝っています。

スーパーハイトワゴンほどの需要はないセグメントに属しますが、ライバルとなるアトレーが2021年に登場した6代目からワゴンではなく商用バンとして登場。5ナンバーの軽ワンボックスとしていまや孤高の存在となりました。

【OEM車】日産 NV100クリッパー/ NV100クリッパーリオ、三菱 ミニキャブバン/タウンボックス、マツダ スクラムバン/スクラムワゴン

日産 NV100 クリッパーリオ

エブリイ/エブリイワゴンは、日産 NV100クリッパーをはじめ、三菱、マツダと多くのメーカーにOEM供給されています。

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スズキ キャリイ

ダイハツ ハイゼットトラックとともに数少なくなった軽トラックとして販売されているキャリイ。現行型は2013年に登場し、現在まで改良を重ねながら販売されています。

2021年の一部改良でATが4速へ変更。アイドリングストップ機構や一部グレードにはLEDヘッドランプが装着されました。

またスズキ セーフティ サポートが設定されているのもユーザーにとってうれしいポイントです。

【OEM車】日産・NT100クリッパー、三菱・ミニキャブトラック、マツダ・スクラムトラック

三菱 ミニキャブトラック

エブリイ/エブリイワゴン同様に、日産NT100クリッパーをはじめ、三菱 ミニキャブトラック、マツダ スクラムトラックとしてOEM供給されています。

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ダイハツのOEM車

ダイハツ ミライース

ミライースはベーシックグレード「B」が86万200円と、スズキ アルトと並んでいまや数少なくなった100万円以下で購入できる軽自動車です。

スーパーハイトワゴンほどではないですが長めのホイールベースを採用するなど室内空間は見た目以上の広さを確保しました。

パワーユニットはKF型660cc直3NAエンジンの1タイプのみを設定。

エントリーモデルながら衝突回避支援ブレーキ機能などが備わったダイハツの先進支援安全装備「スマートアシストIII」も搭載されています。

【OEM車】トヨタ ピクシスエポック、スバル プレオプラス

トヨタ ピクシスエポック

ピクシスはトヨタの軽自動車シリーズの名称。ピクシスエポックは初代ミライースからOEM供給が始まり、現行型は2代目になります。

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ダイハツ ムーヴ/ムーヴカスタム

スズキ ワゴンRとともに軽トールワゴンの老舗として大きな人気を集めているムーヴ。6代目となる現行モデルは2014年に登場しました。ムーヴカスタムは標準仕様をベースにエアロバンパーやサイドストーンガードなどを装備しプレミアム化したモデルです。

パワーユニットはKF型直3エンジンのNAとターボをラインナップ。

室内空間はハイトワゴンだけに大人がゆったりと寛げる広さを備えています。リヤシートは左右それぞれにスライドやリクライニングが可能。長い荷物の収納に便利な「フロントサイドフラットモード」や後席片側を倒し荷室が拡大できる「ハーフラゲージモード」など多彩なシートアレンジを備えています。

【OEM車】スバル ステラ/ステラカスタム

スバルは2006年に自社開発した軽自動車、ステラを発売。2011年まで生産されましたが、2代目からはダイハツからOEM供給を受け、ムーヴをステラの名称で販売。現行型は3代目となります。

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ダイハツ キャスト スタイル

デビュー時は標準仕様のスタイル、SUVテイストを備えたアクティバ、スポーティ仕様のスポーツと3つのボディバリエーションが存在していたキャスト

本格的なSUVモデル、タフトの登場によって2020年のマイナーチェンジからボディバリエーションはスタイルの1バリエーションになり車名もキャスト スタイルになっています。

パワーユニットはKF型直3エンジンを搭載。見晴らしが良い着座位置を備えた運転席は左右ともにゆとりあるサイドサポートがあるシートを装備するなど、運転しやすい工夫がなされています。

【OEM車】トヨタ ピクシスジョイ

デビュー時はアクティバのOEMモデルであるピクシスジョイCと、スタイルのOEMモデルあるピクシスジョイFをラインナップ。キャストがスタイルのみになったことで、現在はピクシスジョイFのみのラインナップになっています。

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ダイハツ タント/タントカスタム

現在では軽自動車の売れ筋となっているスーパーハイトワゴンの元祖がこのタント。2003年にデビューした初代は、全高1,700mmとハイトワゴンにくらべ高くとったことで広大な室内空間を実現し大きな話題となりました。

4代目となる現行型が登場したのは2019年。歴代モデル同様に現行型は広大な室内空間とBピラーレスのミラクルオープンドアを備え、とくに家族層に支持されています。

ただ先代とは異なるのがプラットフォーム。アンダーボディやサスペンションの高剛性化を図り車体の安定性や乗り心地を向上させた「DNGA」と呼ばれる新世代プラットフォームを採用しました。

【OEM車】スバル シフォン/シフォンカスタム

スバルは2015年までタントエグゼのOEM供給を受けていた関係で、タントのOEM供給は3代目の発売から3年後の2016年に始まりました。シフォンの現行型は2代目になります。

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ダイハツ ハイゼットカーゴ/トラック

ダイハツ ハイゼットカーゴ

2021年11代目となるハイゼットカーゴがフルモデルチェンジ。プラットフォームにはダイハツが展開する「DNGA」を採用し、予防安全機能「スマアシ」を搭載するなど新世代の軽商用バンに生まれ変わりました。

ただし同シリーズのハイゼットトラックは2014年にフルモデルチェンジされたまま2021年にマイナーチェンジ。しかしトランスミッションにはCVT、4WDは電子制御式を採用するなど現在に通用する軽トラックへと大きく進化を果たしました。

【OEM車】トヨタ ピクシスバン/ピクシストラック、スバル サンバーバン/サンバートラック

スバル サンバートラック

2011年からOEM供給がスタート。ピクシスバンは2021年、ピクシストラックは2014年にフルモデルチェンジされ2代目になりました。

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なぜトヨタは軽自動車を作らないのか?

現在、子会社のダイハツから軽自動車の供給を受けているトヨタ。幅広いラインナップを誇るトヨタだけに自社開発してもよさそうなのですが、そうしない理由はいくつか考えられます。

ひとつは軽自動車を作るノウハウを備えていないこと。コンパクトカーの開発に長けているトヨタとはいえ、軽自動車規定による限られたボディサイズ、開発コストをかけずに生産することへのノウハウがないこと。また新たに生産設備を立ち上げる必要があるためダイハツに開発・生産を委託しているのです。

また、軽自動車を開発することによりブランドイメージを損なうことを懸念している可能性があります。コンパクトカーからセンチュリーまで幅広いラインナップを誇るトヨタとはいえ軽自動車は別物。実際、軽自動車の試乗車を用意している店舗が限られるなど、販売店はピクシスシリーズの販売には力を入れていない模様です。

さらに日本では主役の軽自動車ですが、国内独自規格のため海外での販売が見込めないこともトヨタが乗り出さない理由でしょう。

現在、ピクシスシリーズをラインナップしているのは軽自動車の需要が高い地域のユーザーに向けたもの。そんなトヨタが自社開発する可能性はないでしょう。

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【まとめ】軽自動車のOEMはまだまだ続く

今回、軽自動車のOEM車を紹介してきましたが予想より多いなと感じる方は多かったのでは。先に述べたように軽自動車の販売比率が高いなか、自社開発できないメーカーは今後もOEM供給を受けるしかないのが現状です。

トヨタがなぜ軽自動車を独自開発しないのかという話でも書きましたが、日本だけの規格である軽自動車は海外での販売台数が見込めず開発コストを掛けられないので、各社はスズキとダイハツのOEM車を活用しています。同じことは実はトヨタ シエンタ、ホンダ フリードのようなコンパクトミニバンにも当てはまります。

ただスズキやダイハツが販売しているすべての車種がOEMで供給されているわけではありません。供給元のニーズを満たす車種をスズキやダイハツが生産し、今後も軽OEM車として国産メーカーから販売されていくことは続いていきます。

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※この記事は、2022年11月時点での情報で執筆しています。

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