スポーツ性能を追求したトヨタのGRシリーズに、新たなモデルが加わることが発表されました。その名はGRカローラ。巨大メーカーでありながら攻めの姿勢を崩さないトヨタを走り好きの自動車ライター・嶋田智之さんも拍手喝采!
4つ目のGR、GRカローラを発表!
4月1日という日が悪かったのか、それとも事前の告知を知らなかったのが悪かったのか、インターネットで下調べをしていて行き当たったページをパッと見して、僕は「こりゃまたずいぶん手間暇かけたエイプリルフールだなぁ……」なんて思っちゃったのでした。
“新型車GRカローラを世界初披露”。
その見出しがあったのはトヨタ自動車のグローバルニュースルーム。だいぶ流行らなくなったとはいえ、企業がいかにもそれらしいフェイクニュースをこしらえてユーザーたちを驚かせたり楽しませたりするなんていうのは、これまで何度も目にしてきました。というか引っかかってきました。
さすがに年月かけて学んできたんで、もう騙されないからな。そんなふうに思ってページを閉じ、また別のところに飛んで下調べを再開したのです。
が、翌日になってみたら、様々な自動車関連のニュースサイトが、GRカローラのことをガンガンと報じているじゃないですか。……えっ?まさかホントだったわけ?と改めてトヨタのグローバルニュースルームにアクセスして、そこで初めて僕は喜びの声を上げたのです。
いや、GRカローラの発表、素晴らしい!クルマを操縦することが何より好きな僕は、スポーツカーやスポーツセダン、モータースポーツをバックボーンにしたクルマといった、走らせて楽しそうなクルマが登場するのは大歓迎です。
ご存じの方がほとんどだと思いますが、“GR”というのはTOYOTA GAZOO Racingがモータースポーツのフィールドで培った技術や知見を投入して車両開発/パーツ開発にあたる、トヨタの社内カンパニー的なスポーツブランド。車名の頭に“GR”が冠されるのは、ブランド専用のグローバル展開される市販モデルです。
これまで2019年のGRスープラ、2020年のGRヤリス、2021年のGR86と3車種が発売されていて、4車種目がこのGRカローラになるわけですね。
本来カローラは、スポーツドライビングが楽しめるモデルだった
若いクルマ好きの方は意外に思われるかもしれませんし、そもそも“カローラなんて知らん”な人もおられるのかも知れませんが、その昔、カローラはファミリーカーの世界的な代名詞のようなクルマであると同時に、きっちりとスポーツドライビングが楽しめるモデルが用意され、モータースポーツの世界にもきっちりと爪痕を残してきたモデルでもありました。
とりわけ1970年にデビューした2代目の時代、1983年からの5代目の時代にラインナップされていたスポーツグレードは、歴史的名車と呼ばれています。トヨタが世界ラリー選手権で初めて優勝をしたときのマシンは2代目カローラですし、2代目と4代目も国内外のラリーでいくつもの高リザルトを残しています。1999年には8代目(の欧州仕様)が世界ラリー選手権のマニュファクチャラー部門を制しています。
またツーリングカーレースでは、2代目、5代目、6代目あたりがやはり国内外で大活躍を収めてきています。
が、2000年に登場した9代目からはスポーツ系カローラはラインナップされなくなり、カローラそのものも精彩を欠き、“地味なおっさんの乗るクルマ”的な揶揄をされたりするようになっていきます。
2018年デビューの12代目、つまり現行モデルになってようやく“カローラスポーツ”という名のスポーティなモデルが復活しましたが、確かに楽しいシャシーを持ってはいるものの、もう少しスポーツモデルとしての説得力があるほうが嬉しいかも、というところでした。
カローラスポーツをベースにした、完全な高性能スポーツカー
GRカローラは、そのカローラスポーツをベースに開発されてきたモデルです。基本骨格はもちろんカローラスポーツのもの。ただしリアホイールハウス間や床下トンネル、タンク前の床下にブレースを追加することで、車体の剛性を引き上げています。
さらには旋回性能を高めるべく、トレッドがフロントで60mm、リアが85mm拡大されていて、それをカバーするためにフロントとリアの両方に大きなブリスター型オーバーフェンダーが備えられています。
フロントには大型のエアダム、リアには大きなルーフスポイラーやバンパー下のディフューザーも備わりますし、ボンネットの上やフロントフェンダーの後ろ側などにはエアアウトレットが設けられていたりしますが、それらはデザインのためのデザインじゃなく、空気の力を利用するための“必要”から生まれたものです。
パワートレーンはGRヤリスに搭載されている1.6リッター直列3気筒ターボ。ですが、そのままポンと移植したのではなく、パワーを32ps引き上げるチューンナップが施されています。最高出力は304ps/6,500rpm、最大トルクは370Nm/3,000-5,550rpm。カローラの歴史で最強といえる数値です。しかも嬉しいことに、6速のマニュアルトランスミッションとの組み合わせです。
そしてパワーとトルクを路面に伝えるのは、これもGRヤリスと基本的に共通する、多板クラッチを電子制御することで前後の駆動力を可変させるスポーツ4WDシステム、GR-FOUR。これも駆動配分を制御する4WDモードとレスポンスやステアリングなどを制御するドライブモードを別々に切り替えできるよう改良されています。スプリングやダンパー、ブッシュなどが通常のカローラスポーツとはまったく違ったものへと変わっていることは、いうまでもありませんね。
つまりはカローラスポーツをさらにスポーティなモデルに仕上げたというレベルではなく、カローラスポーツをベースに完全な高性能スポーツカーを作った、と解釈するのが正しいでしょう。
トヨタはいつの間にか、日本で最も楽しいクルマを作るメーカーへと変化した
GRヤリスのときにも同じことを感じたものですが、こんなことしちゃう自動車メーカーって他にある?ってな具合。
もちろんそれは呆れ果てた末の言葉なんかじゃなく、歓びと期待に打ち震えながらのリスペクトを込めた言葉です。300psを超えるパワーをマニュアルトランスミッションでコンダクトしながら、クルマを気持ちよく旋回させるための4WDシステムで路面に伝えていく。それって最高に楽しいだろうなぁ……。
思えば、トヨタはいつの間にか、日本で最も楽しいクルマを作れる自動車メーカーへと変化していました。時代ごとに快い刺激を与えてくれるモデルがひとつぐらいはありましたが、それ以外のモデルは道具としての出来映えは良好だったものの、操る歓びのようなものとは縁が薄く、ぶっちゃけ、おもしろ味に欠けていました。そんな時代がだいぶ長く続いたのです。今だから正直に白状しますが、僕なんぞは“昔の名車ならともかく、今のトヨタ車には絶対に乗りたくないな”なんて思っていた頃があったくらいです。
その変化を肌で感じ始めたのは、2012年に“86”が発売されたタイミングだったでしょうか。86を初めて走らせたとき、“えっ?これは違うぞ”と思わされたのです。
現在の豊田章男社長がトヨタのトップになったのは2009年のことですが、社長就任以前から唱えていたことが現実のかたちになった最初のモデルといっていいでしょう。若い頃からクルマが好きで、ドライビングの腕前を鍛えてニュルブルクリンク24時間レースをはじめとする数々のレースやラリーなども走ってきた章男社長は、クルマを走らせる楽しさ、クルマがもたらしてくれる気持ちよさといったものを間違いなくご存じなはず。
WECことFIA世界耐久選手権を現在3連覇中で、世界ラリー選手権を2018年と2021年に制したTOYOTA GAZOO Racingの前身となるアマチュアチームを組織したのも、章男社長でした。
章男社長の功績と言うべきものはほかにもたくさんありますが、トップが変わり、社内の組織体系が変わり、意思の伝達の流れが変わり……という変化と並行して、クルマ作りまで変わってきているのは確かです。
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【まとめ】ひとりのクルマ好きとして、今後のトヨタの展開に期待
例えば特別なスポーツモデルではなく、ヤリスのスタンダードモデルのようないわゆる“普通のクルマ”“クルマ好き以外の人も乗るクルマ”も、走らせてみるとしっかり楽しいところがあるのです。クルマ好きのツボを抑えているモデルが多いというか何というか……。
僕自身もいつの間にか“絶対に乗りたくない”なんていう気持ちは雲散霧消していて、日本車に乗るならカテゴリーを問わずトヨタが楽しいかも、なんて感じていたりします。
日本国内では2022年の後半に発売が予定されているGRカローラはめちゃめちゃ楽しみですが、実はそれと同じくらい、僕はこれからのトヨタの行く末が楽しみだし、期待もしているのです。自動車ライターとしてというよりも、ひとりのクルマ好きとして。