【ルノー ルーテシア E-TECH 新型試乗】これはアリ!輸入車唯一の“変態”フルハイブリッドを搭載したコンパクトカー

クルマを選ぶ 試乗記

2022年6月30日に発表、発売されたルノー『ルーテシア E-TECH』の公道試乗会のレポートをお届けします。独創的なハイブリッドシステムで話題を呼ぶルーテシア E-TECH。まずは、どこが変態なのかから解説しましょう(“変態”は誉め言葉です)。

“変態”フルハイブリッド『E-TECH』とは?

ルノーが開発した『E-TECH(イーテック)』とは、ガソリンエンジンとメインモーター、サブモーターの2モーターに、4速トランスミッションとドッグクラッチとモーターに2速ギアを組み合わせたフルハイブリッドシステムのことをいいます。2022年2月24日、E-TECHを搭載したファーストモデルでクーペSUV『アルカナ』が先に国内デビューを果たしています。

「ガソリンエンジンとメインモーター、サブモーターの2モーター」までは、トヨタの『THSII』やホンダの『e:HEV』でも同じような構成で耳慣れたものですが、『4速トランスミッションとドッグクラッチを組み合わせた…』となると、「なんのこっちゃ?!」ですね。

E-TECHの構造

E-TECHの構造は、まずガソリンエンジンとトランスミッションが直結されており、トランスミッションと駆動輪側の間にメインモーターが配置されています。マニュアル・トランスミッションにあるクラッチや、ステップ式ATにあるトルクコンバーターは存在しません。そのかわりに4速トランスミッションに「ドッグクラッチ」と呼ばれるものが存在します。一般的なマニュアル・トランスミッションは、「シンクロメッシュ」と呼ばれる、異なるギアとギアの回転を合わせる機構が備えていますが、E-TECHにはシンクロメッシュのかわりに「ドッグクラッチ」を用いた常時噛み合い式のトランスミッション方式を採用しています。

ドッグクラッチの回転合わせはサブモーターが担い、ギアチェンジを自動で行います。さらに、モーター側の2速ギアと組み合わせ、システムが走行状況に応じて最適なギアを選びます。

さらにすごいのは、トランスミッションの4速と、メインモーターの2速の掛け合わせた計8速だけでなく、エンジン駆動100%時の4速とモーター駆動100%の2速を足した計14速から同じギア比となる2速を引いた、都合12段変速となるところです!

ドッグクラッチは、市販車に採用された例を聞いたことがありません。モーターレースの世界では、ドッグクラッチ(ドグミッションとも呼ばれる)の採用は当たり前です。ドッグクラッチは、ギアを変えるとき、しっかりとエンジン回転数をギア比に合わせなければならず、これには高度なテクニックを要します。しかし、変速速度は一般的なマニュアル・トランスミッションに比べると格段に速く、コンマ01秒を争う世界ではとても有効です。

ルノーは、かつてよりモータースポーツの最高峰、F1で技術を磨いていました。今やF1もハイブリッドシステムを搭載する時代。2014年からF1にハイブリッドパワーユニットが採用されました。ルノーはそこで得たノウハウを市販車にフィードバックしたわけです。

『E-TECH』の走りはいかに?

こんな“変態”的ハイブリッドシステムですが、その走りは秀逸です。ただ、F1の技術をフィードバックしたといえども、スポーツモデルではないので、速さを求めたものではありません。

エンジンは、直列4気筒1.6Lガソリンエンジンで最高出力は91ps、メインモーターは36kW/49psで、控えめなスペックです。しかし、E-TECHの12段から適切なギア比を選ぶため、走りは至ってスムーズ。高速巡航時でも、モーター駆動100%でコーシングしてくれて、静粛性の高さもばっちりです。

高速道路走行時の中間加速を全開にしたときには、そこまで速くはないという印象がありますが、流して乗るには最適な印象でした。

アルカナに比べると車高が低く、車重も軽いため(160kg差)、軽快感はルーテシアのほうが1枚2枚上手です。

【総合評価】プレミアム・コンパクトをお探しの方、候補に加えてみては?

筆者が試乗したクルマを、10項目×5段階で評価、★1個を2点として100点満点の総合評価として採点します。各項目、評価の理由をお伝えしますが、あくまで筆者のインプレッションによるものですので、ご参考としてご覧ください。

No. 項目 評価ポイント
1 内外装デザイン デザインの良さ、ボディカラーやインテリアカラーのバリエーションなどを評価
2 エンジン・トランスミッション パワートレインの良し悪しを評価
3 足回り 乗り心地の良さ、操縦安定性などを評価
4 燃費・電費 燃費、電費を評価
5 居住性 室内空間の広さ、静粛性などの快適性を評価
6 装備・使い勝手 装備の充実度、使い勝手の良さを評価
7 安全装備・運転支援 予防安全技術、運転支援システムなどの先進技術装備を評価
8 価格 コストパフォーマンスの良さ、お買い得感を評価
9 乗りやすさ 小回りが効くなどの取り回し性の良さ、普段使いでの運転のしやすさなどを評価。
10 クルマの愉しさ スペックを考慮しないで、純粋にクルマを所有するよろこびや、ドライビング・プレジャー(走る愉しさ)を筆者の独断と偏見で評価

輸入車でフルハイブリッドが選べるようになっただけでもプラスポイント。プレミアム・コンパクトカーを探している方、ぜひルーテシア E-TECHも選択肢の1つに入れていただきたい。

【総合評価】76点!

1 内外装デザイン ★★★★ 美にうるさいフランスのクルマならでは。秀逸なデザイン。欧州では大衆車で販売シェアも大きく普通のクルマになるが、日本では個性が光る。ボディカラーのラインナップが5色なので、もう少し選択肢があってほしいところ。
2 パワートレイン ★★★★★ 輸入車で唯一のフルハイブリッドという時点でかなりのプラス評価。走りも気持ちいい。ただ、スポーツモデルではないので速さは求めないこと。しかし、ワインディングではモーターのパワーが光って愉しいはず。
3 足回り ★★★★ ルノーらしい気持ち固めの足回り。ルノーは路面状況・走行状況をドライバーにしっかりと伝えるという考え方。好みがわかれるところなので★4つとした。
4 燃費・電費 ★★★★ 輸入車トップの燃費。ただ、トヨタのハイブリッドのような燃費重視ではない。走りの良さと燃費を両立させたフルハイブリッド。ハイオク仕様なので★4つ。
5 居住性 ★★★ Bセグ・ハッチバックとしては優秀。ロードノイズが気になったが、ルノー・ジャポン担当者の話によれば「路面状況を伝えるため」とのこと。居住性を求めるなら、兄弟モデルとなるSUV『キャプチャー』のほうがいいかも。
6 装備・使い勝手 ★★★ 装備に不足はない。コンパクトカーとしての使い勝手も合格。
7 安全装備・運転支援 ★★★ ひと通りの安全装備、運転支援がそろう。運転支援は日産の初期型プロパイロット。
8 価格 ★★★ 輸入車コンパクトカーで唯一、エコカー減税が受けられる。プレミアムコンパクトとしてはがんばった価格設定。
9 乗りやすさ ★★★★ 日本の道路事情でも十分乗りやすい。全幅は1,725mmの3ナンバー。
10 クルマの愉しさ ★★★★ スムーズで気持ちいい走りを見せる。国産車にはない味、愉しさがある。所有欲も満たされるクルマ。

おすすめグレード

ルーテシア E-TECHのグレード構成は、『E-TECH HYBRID』『E-TECH HYBRID レザーパック』の2つで、実質モノグレード。文字通りレザーシートを装備したかしないかだけの違いです。なお、レザーシートにはシートヒーターが付きます。価格差は15万円。エコカー減税で恩恵を受けた分をレザーシートに充てるのもアリ。

車両価格

E-TECH HYBRID:3,290,000円
E-TECH HYBRID レザーパック:3,440,000円

スペック一覧

ボディサイズ

単位:mm・kg

全長 4,075
全幅 1,725
全高 1,470
ホイールベース 2,585
車両重量 1,310

パワートレイン・足回り

エンジン

タイプ 直列4気筒 DOHC 自然吸気
形式 H4M
排気量 1.6L
最高出力 67 kW (91 ps) / 5,600 rpm
最大トルク 144 N・m / 3,200
燃料 無鉛プレミアムガソリン

メインモーター

最高出力 36 kW (49 ps) / 1,677 – 6,000 rpm
最大トルク 205 N・m / 200 – 1,677 rpm

サブモーター

最高出力 15 kW (20 ps) / 2,865 – 10,000 rpm
最大トルク 50 N・m / 200 – 2,865 rpm

トランスミッション

タイプ 電子制御ドッグクラッチ マルチモードAT

サスペンション

フロント ストラット式コイルスプリング
リア トーションビーム式コイルスプリング

タイヤサイズ

フロント 205 / 45R17
リア 205 / 45R17

最小回転半径

最小回転半径 (m) 5.2

燃費

WLTCモード 25.2 km/L
 市街地 21.9 km/L
 郊外 26.2 km/L
 高速 25.5 km/L

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(撮影・文:宇野 智)
※この記事は2022年8月現在の情報に基づいています。

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