エンジンがかからない 原因を解決する方法
POINT
- エンジンがかからなくなった原因はエンジン本体か補機類の不具合
- 不具合で多いのがバッテリーの経年劣化。2〜5年が経過したバッテリーは交換時期
- エンジン本体の故障が原因となることは少ないが、その場合は修理費用が高額に
【原因】エンジン本体か補機類の不具合か?
エンジンがかからないときは、エンジン本体、ないしはオルタネーター、フュエールインジェクション、エンジンECU、イグニッションコイル、フュエールポンプアッセンブリー、バッテリー、スターターモーター(セルモーター)などといった補機類の不具合が原因です。
エンジンは、動力を発生させる重要なパーツで、乗用車に広く普及している4サイクルエンジンの本体は、吸排気バルブの駆動や混合気・排気ガスが流れるポートなどを備えたシリンダーヘッド、複数のピストンが収まるシリンダーブロック、クランクシャフトが収められたクランクケースで構成されています。
エンジン本体は比較的頑丈で、オイルなどの油脂類の定期的なメンテナンスを怠らなければ、10万km程度で故障することはあまりありません。
一方で、エンジンには補機類と呼ばれる様々な装置が付いています。こちらは本体よりも寿命が短く、5〜6万kmを超えたあたりから故障が発生することもあります。エンジンがかからない原因となることの多い補機を以下に列挙します。
オルタネーターは、クルマの発電機で交流電気を生み出すことでバッテリーを充電するための電装部品です。
フューエルインジェクターは、燃焼室に燃料を噴射する噴射弁のことです。
エンジンECUは、エンジンの制御を行うコンピューターユニットのことです。
イグニッションコイルは、燃焼室内の圧縮した空気とガソリンの混合気を着火させるスパークプラグに高い電圧をかけるためのパーツです。
フュエールポンプは、エンジンに燃料を供給するパーツで、燃料タンクの燃料をポンプによってエンジンに送ります。
バッテリーは、エンジン始動をはじめ、ヘッドライトやブレーキランプ、パワーウインドウ、カーオーディオなどの電装品に必要な電力を供給するパーツです。
スターターモーター(セルモーター)はエンジンを始動させるためのモーターでバッテリーによって駆動します。
【解決方法】エンジンの始動性が悪くなったら早めに点検・修理を
エンジンがかからなくなるケースで多いのがバッテリーの経年劣化で、長期に渡って使い続けると、充放電を繰り返すことで次第に靴用な電圧が得られなくなり、本来の機能を発揮できなくなります。
バッテリーの寿命は使用環境によっても異なりますが、おおむね2〜5年で、エンジンの始動性が悪くなったと感じたら、交換のタイミングです。
車種によっても異なりますが、バッテリーの部品代はおおむね1〜4万円で、工賃はおおよそ数千円です。ルームランプが点灯しない、スターターモーター(セルモーター)が回らない場合などは、まずはバッテリーを調べてみましょう。
新車から5〜6年が経過すると補機類の故障が発生するようになります。オルタネーター、スターターモーター(セルモーター)、フュエールインジェクション、エンジンECU、イグニッションコイル、フュエールポンプアッセンブリーの不具合は、新品もしくは程度の良い中古品を使って本体交換(=ASSY・アッセンブリー交換:複数のパーツが一式組み上がった状態のパーツ)で対応します。
これらのパーツの不具合は、専用テスターで調べることで原因を特定します。補機類の修理・交換には部品代+工賃で数万〜十数万円の修理代がかかります。
オイルや冷却水などのメンテナンスを実施すれば、エンジン本体は10万km程度で故障することはあまりありません。エンジンが掛からない場合は、まずはバッテリー、次に上記のような補機類を調べてみるようにしましょう。
不具合を起こしたエンジンは徐々に始動性が悪くなって、最終的にエンジンがかからなくなります。不調を感じたらなるべく早く点検・修理をするように心がけましょう。
(山崎 龍)
エンジンがかからない の原因一覧
エンジンがかからない の故障・不具合の症状一覧を表示しています。該当の症状を選択して、修理方法を確認しましょう。
※原因は症状から過去の事例を参考にしたもので、不具合の原因を断定するものではありません。
※修理内容は修理工場での作業事例を説明するもので自己修理を推奨するものではありません。
-
オルタネーターに不具合が生じると、バッテリー上がり、エンジンが掛からない、ファンベルトの損傷や破断、異音が発生する、警告灯が点灯するなどの症状が生じます。オルタネーターは、セルモーターを回したり、ヘッドライトやウインカーなどのランプ類を作動させたりする電気を発電するパーツです。だからモーター駆動でないエンジン車であっても、オルタネーターが正常に機能しないと、さまざまな部分の機能が正常に作動しなくなってしまいます。
-
エンジン本体(一式)(エンジン本体)に不具合がある場合、エンスト、オイル消費の増大、オイルや冷却水の漏れや滲み、オーバーヒート、始動困難、異音の発生、加速不良、慢性的な不調や振動の増大、警告灯の点灯などの症状が出ます。オイルや冷却水の漏れや滲みであれば、ガスケットやシールの交換で修理完了となることもありますが、オイル消費の増大や始動困難、異音の発生などの症状の場合、エンジン内部の修理が必要となることが多く、修理には多くの時間と費用を要することになります。
-
イグニッションコイルは、ガソリンエンジンのスパークプラグに高圧の電気を送るためにあります。外観は電線でつながれた樹脂パーツで、内部はコア(鉄心)に一次コイルと二次コイルが巻かれ、高電圧を発生させる構造となっています。イグニッションコイルに不具合があると、エンジンがかかりにくくなったり、かからなかったりします。また、エンジンがかかっても、警告灯の点灯や振動、加速しないなどの不調が発生し、エンストすることもあります。イグニションコイルの寿命は、おおむね10万kmとされますが、車の使用状況や環境により大きく異なります。
-
エンジンECU(エンジンコントロールユニット)に不具合があると、エンジンに不調や振動が生じるようになったり、始動不良、加速不良、アイドリングストップ不調、警告灯の点灯などの症状が現れます。ECUはその名のとおり、エンジンを電子制御するコントロールユニットとなります。現在のクルマは、様々な部分を細かく電子制御することで、ドライバーに快適なドライブフィールを提供する他、低燃費や低公害を実現しているので、その中枢を担うECUに不具合が生じると様々な部分に影響が生じてしまいます。
-
ターボチャージャー本体(一式)不具合が発生すると、オイルのにじみや漏れ、消費量が多くなったりします。また、異音の発生や、エンジンの始動ができなくなる場合もあります。さらに、警告灯が点灯したり、加速時に白煙が出たりすることもあります。ターボチャージャー(一般的には略称の「ターボ」で呼ばれています)は、カタツムリ状の外観をしたパーツで、エンジンのすぐ近くに取り付けられています。ターボチャージャーは日本語で「過給器」と呼ばれるもので、その仕組みは、排気側と吸気側それぞれに直結したタービンがあり、排気の圧力を利用して吸気側の圧力を高め、シリンダーに送る酸素の量を増加させて、高い出力を得るというものです。
-
フューエルポンプに不具合が生じると、エンジンが掛からない(掛かりにくい)、異音が発生する、加速しない、エンジンに不調や振動が発生する。警告灯が点灯する、燃料計表示不良といった症状が現れます。フューエルポンプはタンク内の燃料をエンジンに送るための電動ポンプで、タンク内に設置されていることがほとんどです。フューエルポンプは、何の前触れもなく突然機能しなくなることも多く、路上での立ち往生を余儀なくされるトラブルのひとつとなります。
-
フューエルインジェクターは、燃料をエンジンのシリンダーに噴射する装置で、吸気ポートやシリンダーに取り付けられている電子制御パーツです。フューエルインジェクターには、吸気ポートに噴射する「ポート噴射式」とエンジンの気筒内に直接噴射する「気筒内直接噴射式(直噴)」があります。フューエルインジェクターに不具合があると、エンストしたり、エンジンがかからなかったり、かかりにくかったりします。また、加速がもたついたり、警告灯が点灯したり、異臭や振動が発生するなどの不調が起こることもあります。フューエルインジェクターの寿命は、車種や利用環境等によって変わりますが、おおむね15万km~20万kmと言われています。
-
シリンダーブロックは、燃焼圧力を受けるピストンや、ピストンの上下運動を回転運動に変換するクランクシャフトなどが組み込まれる、エンジンの重要部品のひとつとなります。シリンダーブロックに不具合があると、オイル消費が増大する、エンジンが掛からない、異音や振動が発生する、エンジンが不調、といった症状が発生します。20世紀に誕生したエンジンの多くは、材質的に強度の高い鋳鉄製がほとんどでしたが、21世紀に入ってからは軽量なアルミ製に置き換わっています。これは形状的に強度を高める設計がなされるようになったためで、一般的な使用下ではアルミ製シリンダーブロックだからと言って不具合が出ることはありません。
-
-
タイミングチェーン・ベルトに不具合があると、不調や振動が生じ、ガラガラした異音が発生し、その後にエンストを起こし、エンジンがかからなくなります。その際にエンジン警告灯が点灯することがあります。
タイミングチェーン・ベルトとは、エンジンを構成する部品のひとつで、ピストンの運動を回転運動に変換するクランクシャフトとカムシャフトを連動させることで、4サイクルエンジンの吸気と排気のタイミングでバルブを開閉する金属製のチェーン、あるいはゴム製のベルトのことです。
タイミングチェーン・ベルトは、エンジン内部のクランクシャフトとカムシャフトを連結する場所に備わります。FR車に多い縦置きエンジンの場合は向かって正面、FF車に多い横置きエンジンの場合は左側に位置しますが、カバーに隠れていてボンネットを開けても目視できないことが多いようです。
寿命は車種や使用環境によっても異なりますが、タイミングベルトがおおよそ10年・10万km(国産車の場合。古い輸入車の場合は2〜5万kmで寿命を迎える車種もあります)、タイミングチェーンの場合はおおよそ30万km無交換で使用できるようです。
-
アドブルー(AdBlue®)はディーゼルエンジンの排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を化学反応により無害化する高品位尿素水で、エキゾーストパイプの途中で噴射されます。アドブルーを噴射するインジェクターや尿素水をためておくタンクは、アドブルーポンプと連携しています。アドブルーポンプに不具合があると、アドブルーの減りが早くなり、エンジン警告灯やアドブルー警告灯が点灯します。時にはエンジンがかからなくなることもあります。アドブルーユニットにトラブルが起きると、白煙が上がったり、マフラーが白くなったりします。
-
高圧燃料ポンプに不具合があると、警告灯の点灯や、加速力の低下、エンジンのかかりが悪いなどといった不調が発生します。また、走行中の突然のエンストや燃料漏れ、ガソリン臭の発生も起こることがあります。高圧燃料ポンプはハイプレッシャーポンプとも呼ばれ、タンクから吸い上げられた燃料を高圧で噴射するパーツです。シリンダーヘッドの横に装着される高圧燃料ポンプの外観は円筒状で、燃料を供給するコネクターやパイプで構成されています。内部は、低圧の燃料を吸入する通路を開閉する電磁弁、燃料を加圧するポンププランジャー、高圧燃料を送り出すパイプやバルブで構成されています。寿命となる時期は特に定められていませんが、一般的に10万km〜15万kmといわれています。
-
フューエルプレッシャーレギュレーターはエンジンに供給される燃料の圧力を制御するパーツで、タンクからエンジンに燃料を圧送する燃料ポンプとインジェクター(エンジンに備わる燃料噴射装置)の間に設置されています。フューエルプレッシャーレギュレーターに不具合があると、エンジンが掛からない、エンジンが掛かりにくい、エンジンに力がない、エンジンの回転が重い、マフラーから黒煙が出る、燃費が悪いといった症状が出ます。燃料に掛かった圧力を燃圧(フューエルプレッシャー)と言いますが、エンジンに最適な量の燃料を供給するには、フューエルプレッシャーレギュレーターによる燃圧の管理が非常に重要な要素となります。
-