走行できない 原因を解決する方法

記事監修:柴 健太郎

プレミアモビリティサービス株式会社 執行役員/一般財団法人日本技能研修機構(JATTO)理事

POINT

  • CVT、ステップ式(トルコン式)AT、クラッチの消耗(MT車の場合)の故障が走行できなくなる主な原因
  • CVTやステップ式ATの故障はASSY交換が必要。不具合を未然に防ぐにはCVT/ATフルードの定期交換が必要
  • MT車のクラッチは消耗品。走行距離が伸びれば徐々にクラッチが摩耗する。滑りが出たり走行ができなくなったら新品に交換する

【原因】トランスミッションが原因でクルマが走行できなくなるのはCVT、AT,クラッチの不具合

クルマが走行できなくなるのは、CVT(無断変速機)、ステップ式AT(トルコン:トルクコンバーター含む)、クラッチの不具合が主な原因となります。

CVTとは、MTやステップ式AT(トルクコンバーターと自動変速機で構成されたAT)とは異なり、ギア(歯車)の代わりに金属ベルトで連結させたふたつのプーリーのベルトの嵌る溝の位置を変化させることで駆動力の減速比を変えるATのことです。

CVTの不具合で多いのが、走行中にアクセルペダルを踏んで加速しようとしてもエンジンの回転は上がるのに十分な加速が得られず、失速するというもので、この症状を「CVTの滑り」と表現することがあります。

この症状がさらに悪化すると、アクセルペダルを踏んでもエンジンが空回りする状態になり、上り坂ではまともにクルマが進まなくなります。

ステップ式ATとは、もっとも普及したATでエンジンからの出力をトルクコンバーターで受け止めて、プラネタリーギア(遊星歯車)の選択を組み合わせることで、段階的にギア比を替えて行く自動有段変速機のことを指します。

クラッチとは、MT車に備わる動力伝達装置のことで、クラッチディスク、クラッチカバー、レリーズベアリングの3点で構成され、クルマの発進・停止・変速時に、クラッチペダルの操作でエンジンからの動力をトランスミッションへと伝達・遮断します。

【解決方法】CVTやATの故障はASSY交換が必要。定期的なAT/CVTフルードの交換が予防措置になる

CVT車が走行できなくなる原因として最初に疑われるのはCVTフルードの劣化です。

長期間CVTフルードを交換しないと、潤滑性能や粘度・温度特性を失うだけでなく、CVT内部にスラッジが溜まって本来の性能を発揮できなくなるばかりか、誤作動を起こしやすくなります。

CVTはデリケートなメカニズムのため、走行距離が10万kmを超えると、CVTの滑り、異音や振動、DレンジやRレンジに入れた際にショックが出るようになります。

不具合が発生した場合は、CVTのASSY(アッセンブリー:複数のパーツが組み上がった状態で交換するパーツ)交換が必要になる場合もあります。

ステップ式ATの故障で多いのが、ATバルブボディ(ATバルブボディと制御基盤を一体化したメカトロニックユニットを含む)の不具合です。

ATバルブボディの内部には、ATフルードの流入経路が迷路のように張り巡らされ、油圧を制御する多数のバルブが組み合わされています。この流入通路をATフルードが流れることで自動で変速操作を行います。

クルマの走行距離が増えると、内部の流入通路に徐々にスラッジが溜まり、シフトショックの増大や誤作動を引き起こす原因となります。

不具合を未然に防ぐにはATフルードの定期交換が望ましいのですが、不具合を起こした場合には、ATバルブボディはオーバーホールもしくは新品交換が必要になります。

トルクコンバーターは滅多に壊れるパーツではありませんが、メーカー指定のATフルードの交換サイクルや指定粘度を守らなかったり、フルードの交換時にゴミなどの異物が混入すると、変速ショックが出たり、誤作動を起こしたりします。

トルクコンバーターが故障した場合は、整備工場にて新品のトルクコンバーターをASSY交換することになります。

MT車に使用されるクラッチは消耗品であり、走行距離が延びるとクラッチ板は徐々に磨耗して行きます。

摩耗限界を迎えたクラッチは、クラッチ板、クラッチカバー、レリーズベアリングとセットで新品に交換します。

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